=目 次= 「生活保護−1−」
1 くらしと深く結びついている生活保護
(1)生活保護は「健康で文化的な最低生活」に必要な基準
(2)生活保護基準の引き上げは、各種制度の対象者を広げて国民生活の水準の引き上げにつながる
2 生活が苦しいときはだれでも請求できる
(1)生活保護法で明記されている国民の権利のあらまし
(2)働いていても収入が生活保護基準以下であれば受けられます
(3)生活に必要な電話や電気製品、自動車などはもっていても生活保護は受けられます
(4)生命保険や貯金があるとき
(5)田畑や山林、土地や家、住宅ローンがあるとき
(6)交通事故などの補償金や保険金が支給されたとき
(7)首切り撤回などの労働争議をしていて収入がないとき
3 支給される扶助の種類
(1)基本となる七つの扶助
(2)老齢、母子、障害など家族の状況に応じて支給される加算
(3)毎月と一時的に支給されるもの
(4)生活上、臨時に必要なものは一時扶助を請求しましょう
(5)一般の基準額で必要な額に足りないときは特別基準を
1 くらしと深く結びついている生活保護
生活保護は、働いているかどうかにかかわりなく、生活に困ったとき、国民のだれもが
憲法第二十五条や生活保護法などにもとづいて権利として請求できる制度です。
(1)生活保護は「健康で文化的な最低生活」に必要な基準
現在の生活保護法は、第二次世界大戦のあと、世界的な生存権(人間らしく生きる権利)保障制度の確立運動の流れと、国民の民主主義と暮らしを守る要求と運動のなかで一九五〇年にできました。
生活苦や貧困、病気は、個人の責任ではなく、政府の低賃金政策や貧しい健康・医僚・福祉政策、労働政策など社会的要因によるものです。生活保護法は、こうした社会的原因による生活苦から、国の責任で国民の生活を守ることを目的としてつくられました。
このことから、不十分な面をもちながらも、生活保護基準は、少なくとも国が決めた国民の「健康で文化的な最低生活」に必要な生活費の基準となっています。
あなたの収入と保護基準を比べてください。「健康で文化的な最低生活」の基準を満たしていますか。
(2)生活保護基準の引き上げは、各種制度の対象者を広げて国民生活の水準の引き上げにつながる
生活保護基準は、日本における伝統的な低賃金がもとになっています。同時に、低い生活保護基準が逆に賃金や農漁業収入を低く抑える役割を果たしています。
保護基準は税金の課税最低限を決める大事なものさしにも使われています。
生活保護基準は、暮らしに役立つ制度が利用できるかどうかの基準(通用基準)のもととしても使われています。例えば、就学後助の通用基準や公営住宅家賃が安くなる減免基準を生活保護基準の何倍の収入や所得というようにしている自治体が少な〈ありません。
また、就学援助の学用品費などの支給金額は、生活保護の教育扶助額と連動しています。
このことから生活保護基準を引き上げることは各種制度を利用できる対象者の枠を広げ支給額を引き上げることによって、国民生活全体の水準を引き上げることにもつながっています。
生活保護を受けている人も受けていない人も、一度、自分の世帯の生活保護基準を計算し、生活を見恵してみましょう。
暮らし全体をよくしていくために生活保護基準の引き上げと制度改善の運動を強めましょう。
2 生活が苦しいときはだれでも請求できる
生活保護法は生活に因っている人は、だれでも生活保護を申請でき、条件に合っていれば、平等に受けることができることを明記しています。
政府は生活保護法の精神に反して、受ける人を減らすための政策(八一年の厚生省「一二三号通知」以後の生活保護しめつけ「適正化」方針)を強めていますが、次の生活保護法の精神にもとづいて、必要なすべての人に支給させることが大切です。
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新しい年度からの変更を追加します、参考にして下さい。
*2000年度生活保護の実施上変わった点
(1)生活保護を受けはじめるときの手持ち金の額
(2)生命保険のあつかい
(3)通勤用自動車保有の要件の緩和
(4)借家・借間の更新料について
(5)薬物依存・中毒患者が社会復帰のために民間施設に通うときの移送費支給
(6)原動機付自転車購入費のあつかい
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(1)生活保護法で明記されている国民の権利のあらまし
生活保護法では次のような国民の権利を明らかにしています。
@健康で文化的な生活は国民の権利であり、 国にはその権利を保障する義務がある
(生活保護法第一条)
憲法第二十五集は「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定め、国はこの権利を保障する義務があるとしています。
生活保護は憲法二十五条を暮らしのなかで実際に活用できる制度として具体化したものです。
A国民の最低生活保障の基準(生活保護法第三条)
生活保護基準は、国民が「健康で文化的な生活水準を維持する」最低基準です。
B差別なく平等に(生活保護法第二条)働いているとか、扶養義務者がいるということで生活保護を受ける権利は差別されず、国民はこの法律の要件を満たせば無差別平等に受給する権利があります。
C請求する権利(生活保護法第七条)国民には生活保護を請求する権利があります。
同時に国民が急迫した状態にありながらも申請できないときは、福祉事務所は申請がなくても職権で生活保護を通用(職権保護といいます)し、国民の最低生活を守らなければなりません。
D実情にあった保護(生活保護法第九条)家族や一人ひとりの実情にあった保護をしなければならないという「必要即応の原則」を定め、このことを具体化したものとして一般基準のほかに特別基準や加算、一時扶助を設けています。また、この原則は基準などにないものでも人間らしい生活に必要な費用は請求できる根拠ともなります。
E生活保護世帯の人権は守られる(生活保護法第二十七条)福祉事務所は生活保護世帯の意思に反して「指導や指示」を強要するなどの人権侵害をしてはなりません。
F国民は不当な行政と争い、権利を守ることができる(生活保叢法第六十四条以下)福祉事務所や国などの決定や指導・指示が納得できないときは「不服申し立て」をして争うことができます。
G生活保譲の基本原則に反する保護行政での法律解釈や運用はまちがいである(生活保譲法第五条)しかし、実際の生活保護行政は、厚生省の保護行政の考え方を示した生活保護実施要領や通達にもとづいておこなわれ、法律にも反する人権侵害としめつけが起きています。
生活保護行政の基本は憲法や生活保護法です。したがって、これらに反する行政はやめさせることが必要です。
(2)働いていても収入が生活保護基準以下であれば受けられます
「働いていると生活保護は受けられない」と思っている人がいますが、そんなことはありません。
生活保護は、厚生大臣が決めた基準額を住んでいる地域や家族構成に応じて計算しますので各世帯によって額は違います。
計算した基準額以下の世帯であれば、その差額が保護費として支給されます。
収入があっても、厚生大臣が決めた保護基準以下の収入であればだれでも受けることができます。
例えば、働いている三十五歳の夫と三十歳の妻、九歳と四歳の子どもの四人家族で毎月の保護基準がどうなるかを九七年の生活保護基準で計算すると、おおむね次のようになります(住宅扶助は一般基準で計算)。
一級地の1は二十四万五千七百円、一級地の2は二十三万六千六百十円、二級地の1は二十二万七千六百円、二級地の2は二十一万八千五百五十円、三級地の1は二十万二千二百六十円、三級地の2は十九万三千二百十円です。
なお、この基準は月々の保護基準の目安であり、実際に受けられるかどうかを判断(要否判定)する場合の基準は少し違ってきます。
収入が基準をこえている場合でも、家族のだれかが病気になり、医療費を支払えば生活保護基準以下になる場合も受けられます。
(3)生活に必要な電話や電気製品、自動車などをもっていても生活保護は受けられます
「もっている資産はすべて売るなど処分しなければ生活保護を受けられない」と思っている人もいますが、そんなことはありません。
電気冷蔵庫や電話、オートバイなどは、生活を維持していくのに必要であれば処分しなくていいことになっています。
自動車は、山間やへき地などの地理的条件や気象条件が悪い地域で、自動車がないと通勤ができないか困難な人、自動車がないと通
勤、通院、通学などが困難な障害者・児にたいしては、一定の条件を満たしていれば保有が認められています。
また、今年度(九七年度)から、精神薄弱や精神障害で自動車以外での通院などが困難な場合は、自動車の保育が認められています。
さらに自動車の運転者の範囲が常時介護者まで広げられています。
なお、各福祉事務所が保有を認める場合、あらかじめ都道府県知事の承認が必要です。
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生活保護手帳からの抜粋を追加します、参考にして下さい。
*〔身体障害者の自動車保有〕
生活保護手帳(平成4年度版)より
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昨年(九六年)から中核都市制度(人口が三十万人以上など一定の基準にあてはまる都市を「中核市」とし、その市長は都道府県知事や政令指定都市の市長と同じ権限をもつようにする)が導入されました。このことにともなって指定都市や中核市では知事でなく市長の事前承認となりました。中核市は秋田市、郡山市、宇都宮市、新潟市、富山市、金沢市、岐阜市、静岡市、浜松市、堺市、姫路市、和歌山市、岡山市、大分市、長崎市、熊本市、鹿児島市の十七市です。
通勤用・事業用自動車の保有が認められている場合は次の経費は必要経費として勤労収入から差し引きます(控除)。
燃料費や修理費、自動車損害賠償責任補償法にもとづ〈自賠責保険料や任意保険料、軽自動車税等です。任意保険については、対人賠償に係る保険料、対物賠償に係る保険料も必要経費の対象になります。対物賠償に係る保険料については対人賠償と同じく保険料額の制限を設けていませんが、当該地域の一般世帯との均衡を保つことという留意点がついています。
<ルームエアコンは普及率七〇%以上で保有、七〇%以下でも寝たきり老人や身体障害者などは条件によって保有>
ルームエアコンはいままでも実施要領では「当該地域の一般世帯の普及率が七〇%以上で、その地域との均衡を失しないとき」は保有を認めるようになっていました。しかし、実際には普及率が七〇%以上の地域でも認めていないところが少なくありませんでした。
九四年の猛暑のなか、埼玉県桶川市で高齢者がクーラーをはずされ脱水症状で入院するなど各地で人権侵害事件が表面化しました。
全生連・生活と健康を守る会はいままでの運動をさらに強め、すぐに行動を起こし、厚生省に「七〇%以上のところは保有を認めるように指示した。七〇%以下でも状況によっては保有を認める」と言明させました。
そして、九五年からの実施要領ではルームエアコンについては普及率が七〇%に満たない場合であっても、その世帯の状況と必要性に応じて保有が認められることを明示させました。たとえば、寝たきり老人や身体障害者等のいる世帯が使っているルームエアコンについては、身体的状況や病状のため必要で使っている場合、その保有が社会的に適当であると認められるときは、その地域の普及率が七〇%に満たなくても、「社会通念上処分を適当としないもの」として実施機関の判断で保有を認めるとしています。
(4)生命保険や貯金があるとき
生活保護の申請に行くと、役所から「生命保険は解約して、貯金はおろして生活費にあてなさい。そのお金がな〈なったら、もう一度来なさい」と言われたという話を開きますが、役所のやり方は正しくありません。
貯金や生命保険は、地域の人の貯金額や生命保険の加入状況などからみて、つりあいがとれて、貯金を使ったり、保険を解約しないほうが生活を維持するのに効果的な場合は処分をする必要はありません。
ここで大切なのは、処分するかどうかの基準が「地域とのつりあい」「生活の維持に効果的」「自立助長に役立つ」というように抽象的だということです。生命保険などは、保険料が一定の額以上は解約させるという基準を設けている自治体がありますが、どうすることが「生活の維持に効果的」で「自立助長に役立つ」かは、一人ひとり、それぞれの世帯によって違います。したがって、生活保護法第九条の「必要即応の原則」にもとづいて「生活上、こうすることが私には必要」と主張することが大切です。こうした主張は、他の資産の保有を認めさせるうえでも必要です。
生命保険や学資保険の保有をめぐつては加藤裁判や中嶋学資保険裁判などの判決を積極的に活用し、判決の趣旨を広げることが権利を守るうえで大切です。「 7 役所の不当なやり方を許さないための豆知識」の中の「運動のなかで人権裁判の判決を活用して」を参照してください。
(5)田畑や山林、土地や家、住宅ローンがあるとき
田畑や山林については、その地域の人びととつりあいがとれる程度の面積で、現在使っているか、使っていな〈ても、おおよそ三年以内に使う見込みがあるなどの条件を満たし ていれば処分する必要はありません。
土地や家は、居住用であり、売るなどの処分をしないで住んでいるほうが処分後の新しい家賃の額などからみて利用価値が高く、その地域とつりあいがとれているというような条件を満たせば処分する必要はありません。
居住用の家屋について、生活保護実施要領は「保有を認めること」としながらもそのあとに、「ただし、処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められるものは、この限りでない」とし、処分するかどうかを判断する処遇検討委員会の設置と検討基準を示しています。このことから家屋の処分を強要したり、画一的な処分基準を設けているところがあります。
しかし、居住用の家屋は保有を基本にしていることや「処分価値より利用価値が高いと認められる土地や家は処分しなくてもよい」という原則は変わっていませんので、実態にもとづいて利用価値を主張し、認めさせることが大切です。
八八年度の実施要領で、住宅ローンのある家をもっている世帯は「原則として保護の適用はおこなうべきではない」という考え方が打ち出され、こうした世帯の生活保護申請を一律に却下しているところもあります。
しかし、実施要領は同時に、運用上の留意点として、「ローンの繰り延べやローンが短期間であり、少額な場合」は通用してもさしつかえないとしており、この点を活用して保護の通用を認めさせることが大事です。
(6)交通事故などの補償金や保険金が支姶されたとき
交通事故や災害、公害などにあい補償金や見舞金、保険金が支給されたとき、全額を収入とみなし(収入認定)、生活保護費を減額したり、生活保護を打ち切ろうとする福祉事務所や自治体がありますが、補償金の一定額は収入とされません。
これらの補償金のうち、その家族の「自立助長」に必要な事業の開始の費用や医療費、家屋補修費、葬祭費、生活用品の購入費、事故による被害や生活基盤(精神的なものを含む)を被害前の状況に戻す費用、災害にあった子どもの教育費などにあてるための費用は収入とされません。
いくらまでを「自立助長」分として認めるかの厚生省の目安は、事業開始資金などは生活福祉資金なみの金額、葬祭費にあてる場合は公害健康被害補償法による葬祭料の金額です。
したがって、補償金などが入ったことを理由に役所が打ち切りや「収入認定をする」(補償金などを収入とみなし、生活保護費からその金額を差し引くこと)と言ってきたときは「日立助長」に何が必要かを明らかにして、その費用にあてる分は収入あつかいにさせないことが必要です。この場合に大切なことは、必要な項目や金額は、被害や世帯の状況によって異なるので一人ひとりの実情に合った金額を認めさせることです。
なお、「自立助長」の費用には、子どもの教育費や結婚、災害による後遺症などに備える医療費など、今すぐに出費しないものもあります。この場合は、その費用分を社会福祉協議会や新聞社などの団体に預託すれば収入あつかいとならない方法もあります。
また、交通事故の補償をめぐる裁判でも「自立助長」に必要な経費にはどんなものが入るか争われていることもありますので、民主的な弁護士など専門家の意見を参考にすることも大事です。
(7)首切り撤回などの労働争議をしていて収入がないとき
労働争議のため収入がなく生活が困窮したときも生活保護の申請はできます。争議参加を理由として申請の受付を拒否することはできず、役所は申請にもとづき、世帯員の実情をみて通用条件に合っているかどうかを検討し、必要な場合は生活保護を支給しなければなりません。
この場合、争議に参加している人を含め世帯員全員に支給するやり方や、争議に参加している人を別世帯扱いとし、それ以外の世帯員に支給するなどの方法があります。
3 支給される扶助の種類
生活保護には生活扶助をはじめとする七つの扶助があります。七つの扶助には、「一般基準」と一般基準では必要額に足りないときに支給される「特別基準」があります。また、世帯員一人ひとりにあわせて支給される「加算」と、臨時的な経費が必要なときに請求できる「一時扶助」もあります。
生活保護基準は、住んでいる地域による区分(級地)や年齢による差があり、医療扶助を除いては金額で基準額が決められています。
七つの扶助のうち一つを受ける(単給)ことも、必要に応じて二つ以上あわせて受ける(併給)こともできます。
(−)基本となる七つの扶助
七つの扶助のあらましは次のとおりです。
@生活扶助(基準額は98年度基準表 へ)…生活保護の中心をなしており、一類と二類からなっています。
一類はおもに家族一人ひとりが支出する飲食費や衣類などの費用であっ、二類は家族全体で使う光熱費や家具什器費などです。ゼロ歳の乳児が人工栄養を必要とするときは人工栄養費(一、二、三級地ともに月額一万一千九百七十円)が支給されます。
A教育扶助(基準額は98年度基準表 へ)…義務教育を受けるのに必要な扶助であり、学校が指定する副読本的教材や学用品、通学用品、給食、夏季施設参加費、そのほか義務教育にともなって必要なものが支給されます。
今年度から基準額で足りないときは、小学校で月額六百円、中学校で月額七百三十円が学級費等(学級費、児童会費、生徒会費、PTA会費)の特別基準として設定されました。
また、校外活動費も、従来一年一回としていたのを「児童又は生徒の全員が参加する場合」設定できることになりました。
また、災害など不可抗力で学用品がなくなり再支給が必要なときは、特別基準として支給されます。
B住宅扶助(基準額は98年度基準表 へ)・・・月々の地代や家賃、間代のほか、転居にともなう権利金、敷金、不動産屋への礼金、住宅補修維持
費が支給されます。
家賃は住宅事情でやむをえないときは、その地域の第二種公営住宅家賃を参考にして決めた特別基準まで支給されます。
特別基準は都道府県知事、指定都市市長が厚生大臣の承認を得て決めます。昨年から「2の(3)生活に必要な電話・・」の項で紹介したように中核市の市長も知事などと同じように決めることができるようになりました。
住宅補修維持費は畳、扉、ふすま、風呂、便所、窓、ガラス、建具、水道や配電設備など住宅に必要な物や、雨もりなど、家屋の補修・維持の費用、白アリの駆除、網戸の費用、豪雪地帯での雪囲い、雪降ろしの費用で、年額で基準が決まっています。
補修維持費をすでに支給されたことのある世帯が災害のために新たに補修を必要とするときは、災害の時点から新たに支給することもできます。
<注意してください>
ここ数年、住宅扶助のとりあつかいは次のような点が変わっています。
家賃や間代・・・九二年から、月の途中で保護を受けはじめたり、保護内容の変更・停止・廃止をしたときに、日割計算だと実際に払う
家賃などに足りないときは一か月分支給されるようになりました。
入院や施設に入所している人の住宅費・・・単身者が長期入院をし、家にいない場合でも六か月以内に退院の見込みがあるときは六か月
を限度として住宅費を支給していますが、九二年から支給対象が職業能力開発促進法でいう職業訓練所、身体障害者職業訓練所またはこれに準じる施設、社会福祉事業法第二条に定めている指導・訓練を目的とする施設に入所している人にまで広がりました。
なお、六か月をこえても状況が変化し、さらに入院・入所していなければならないときは、三か月後に退院・退所の見込みがあれば、知事などの承認を得て三か月を限度に支給を延長できます。
また、入院している単身者がやむをえない事情で家財を自宅以外で保管しているときは一年間を限度として月額九千円が保管料として支給されます。この対象も九二年から施設に入所している人にまで広がりました。
敷金・・・引っ越しのときに敷金が必要な場合があります。敷金は一定の条件に合っていれば、知事などによる特別基準として、家賃の
一か月分の基準額の130%の三倍までを限度として費用を支給するようになっています。
九二年からこの金額で足りないときは次の都道府県と市は厚生省と相談して三倍以上を限度として支給額を決めることができるようになりました。
・四倍・=埼玉県、千葉県、千葉市、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、石川県、静岡県、愛知県、岡山県、岡山市、金沢市、静岡市、浜松市
・五倍…名古屋市、福岡市
・六倍…滋賀県、京都府、兵庫県、神戸市、姫路市
・七倍…大阪府、大阪市、祭良県、和歌山県、京都市、堺市
また、九三年から次の場合にも敷金が支給されるようになりました。
生活保護を受けている高齢者や身体障害者が、扶養義務者の日常的な介護を受けるために扶養義務者の近くに転居するとき、介護を受ける人と扶養義務者のいずれも生活保護を受けていて扶養義務者が介護のために高齢者や身体障害者の近くに転居するときです。
C医療扶助…ケガや病気で治療を必要とするときに、診療や薬剤、治療材料、処置および治療、手術、病院・診療所への入院、看護、移送に必要な費用が支給されます。
ただし、他の扶助が現金で支給されるのにたいし、医療扶助は、「現物給付」といって福祉事務所が発行する「医療券」を病院などの窓口に出して、医療保険の通用される治療についてはお金を払わず治療を受ける方法をとっています。ベッド代や付添看護料の差額徴収は自己負担ですが、自治体で負担しているところもあります。
D出産扶助…出産に必要な分娩料、もく浴料、脱脂綿など衛生材料費が支給されます。扶助額は一、二、三級地とも、施設分娩の場合は十四万円以内、居宅分娩の場合は十七万八千円以内となっています。なお、施設分娩の場合は、八日以内の実入院日数にたいして入院料の実費が加算されます。
<次の点を注意してください>
◎付添看護の廃止にともなう措置…昨年の四月から健康保険の改定で付添看護は原則として廃止されています。しかし、計画的に実施ということで知事の承認を受けた医療機関では昨年(九六年)四月一日から最長一年六か月以内は例外として付添看護が認められます。知事が認めている医療機関などに入院しているときは、いままでどおり、生活保護でも付添看護費は給付されます。
◎二百床以上の病院の初診料の特例について…昨年からベッド数が二百以上の病院では緊急やむを得ない場合は、初診料を特別料金で徴収できるようになっています。しかし、生活保護を受給している人については特別料金の徴収はしないように厚生省保険局医療課から指示(厚生省通知=・保険医療機関及び保険医療養担当規則の一部改正にともなう実施上の留意点について<平成8・3・8保険発第二十二号>)が出ていますので徴収を求められたら、このことを指摘し断りましょう。
E生業扶助…一、二、三級地とも生業費(生業を営むのに必要な資金や器具・資材の購入費)は四万五千円以内、技能習得費は五万八千円以内、就職支度金は三万一千円以内が支給されます。
F葬祭扶助(基準額は98年度基準表 へ)・・・葬式をおこなうときの検案、遺体の移送、火葬や埋葬、納骨、その他葬祭のために必要な費用が支給されます。
葬祭扶助は夫婦や親子などが葬祭をする場合にだけ支給されるのでなく、三親等以内の親族等であれば他に引き取り人がいないときは、その人が葬祭をする場合にも支給されます。
<病院・施設入所者の場合>
以上の七つの扶助は在宅(居宅)の場合です。病院に入院している人や施設に入所している人も保護基準の計算など基本的なしくみは変わりません。
しかし、こうした人は七つの扶助のうち生活扶助の一・二類にあたる部分を、病院に入院している人は入院患者日用品費98年度基準表 へ、施設に入所している人は施設などの施設等保護基準98年度基準表 へで計算します。
なお、九五年七月に精神保健法が改正されたことにともなって、精神障害者社会復帰施設に入所している人の基準生活費の取扱いも改定されていますので福祉事務所に問い合わせてください。
(2)老齢、母子、障害など家族の状況に応じて支給される加算 98年度基準表 へ
生活保護には、保護を受ける世帯月の状況に応じて各種の加算がつくことになっています。
つくべき加算がついていない場合もありますので確かめることが必要です。
@妊産婦加算…妊娠の事実を確認した日の月の翌月から加算されます。
A母子加算…父母の一方、または父も母もいない世帯で十八歳の誕生日以降最初の三月三十一日までの間にある子ども(一〜三級の障害のある場合は二十歳)を養育する場合に加算されます。
母子加算がつく期間は児童扶養手当の支給と連動しています。九四年までは児童扶養手当の支給期間は十八歳末満でした。このために高校に通学をしていても、諜生日によっては誕生日以降高校卒業まで手当が支給されないケースが生まれ、同じ高校に通学をする子どもの間でも支給対象になる、ならないといった矛盾がありました。「高校卒業まで支給せよ」の運動によって、九五年から児童扶養手当や遺族年金の対象となっている子の支給年齢などの支給期間を「十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日まで」に延長させました。このことにともなって母子加算の支給期間も同じように延長されました。
B障害者加算・・・決められた障害等級の身体障害者に加算されます。
C老齢加算・・・七十歳以上の高齢者に加算されます。身体などの状況によっては六十五歳以上の人にも加算されます。
D在宅患者加算・・・在宅患者で、現に療養に専念している人が栄養の補給を必要とする場合に加算されます。
E放射線障害者加算・・・原爆被爆者など放射線による障害がある人が一定の要件を満たす場合に加算されます。
F児童養育加算・・・児童を養育している場合に加算されます。加算額は第一子と第二子には三歳末満まで月額五千円、第三子以降には
三歳末満まで月額一万円です98年度基準表 へ
G介護料加算・・・障害者を家族が介護する場合は一万一千九百六十円、介護人をつけた場合は七万六百五十円が加算されます。さらに、介護人をつけた場合で先の額で足りないときは、特別基準(知事承認)として十万五千九百八十円を限度として加算されます。
(3)毎月と一時的に支結されるもの
七つの扶助のなかで生活扶助や教育扶助、住宅扶助、それに老齢や母子、障害などのいくつかの加算は、加算の条件を満たしたときから毎月支給されます。
医療扶助や出産扶助、生業扶助、葬祭扶助、住宅扶助のなかの補修費や維持費と一時扶助などは必要なときだけ支給されます。年末には期末一時扶助98年度基準表 へが支給されます。
(4)生活上、臨時に必要なものは一時扶助を請求しましょう
親族の葬儀のため旅行しなければならない、災害にあったなどのため、毎月の生活保護費でまかなえない一時的な費用が必要になったときは一時扶助を請求できます。
一時扶助として厚生省が例示しているのは、被服費や家具什器費、移送費、小・中学校などの入学準備金、配電補修費、上下水道設備費、井戸の設備費、家屋補修費などで内容は次のようになっています98年度基準表 へ。
なお、被服費や寝具、家具什器などは保護開始時や入退院時に所有していない場合という制限があります。
@被服費と寝具等・・・ふとん顆(綿打ち直しを含む)や衣類、小学校四年生にたいする学童服、転校したときの制服、入院または長期
在宅患者のねまき、丹前、おむつ代、おむつの洗濯代などです。
A家具什器類・・・コンロや鍋、かまどなどの炊事道具、プロパンガスを設置するための費用などです。
B入学準備金・教材費=・小中学校入学の準備費用(精神薄弱児通園施設に入所する児童にも支給)、災害にあった場合に学用品を再度購入する費用、学校長が指定する副読本、ワークブック、辞書など義務教育に必要な費用などです。
C医療責=・病気やケガを治すのに必要なもの(治療材料費)として、義眼や義肢、松葉杖、装具、眼鏡、収尿器、ストマ用装具、サポーター、輸血用生血、尿中糖半定量検査用試験紙、保護帽子などが支給されます。
なお義眼や義肢、松葉杖、眼鏡などについては、身体障害者福祉法などによる補装具の支給を受けることができない場合であっても治療のため必要なときは支給されます。
D移送・・・なんらかの理由で旅行や出かける場合の費用として交通費、宿泊費、食費などが支給されます。移送費が支給されるおもなことがらは次のとおりです。
(一)求職または就職した場合に就職先におもむくための費用、
(二)入院患者の家族が病院に連絡に行くとき、
(三)施設への移送、
(四)親族が危篤状態にあるときや葬儀への出席(付添者の分も支給)、(五)納骨のとき(この場合は運搬費も支給)、
(六)出産のために病院等に入退院するとき(付添者の分も支給)、
(七)引っ越しをするとき(運搬費、荷造費も支給)など。
Fその他の費用 配電設備費や水道、井戸または下水道設備費、プロパンガス等液化石油ガス設備費などがあります。
<注意してください>
九二年から妊娠中に保健所以外の医療機関で定期検診を受けたときの費用、九三年から借家などに住んでいる単身世帯の家財の処分費用が一時扶助として支給されるようになっています。家財の処分費用は単身世帯が入院・入所し、その期間の見込みが六か月をこえ、家財処分が必要になったとき支給されます。
<必要なものは請求を>
ここにかかげている一時扶助は、あくまでも例示にすぎません。生活をするうえで必要なものは例示にないものでもどんどん請求しましょう。
(5)−般の基準額で必要な額に足りないときは特別基準を
七つの扶助や家具・什器、配電、上下水道設備の費用、住宅維持費、出産費、おむつ代などで一般の保護基準額では実費(必要額)に足りないときは、特別基準を請求し認められれば「特別基準の設定」といって一般の基準額以上のものが支給されます。
特別基準は、金額が多くなるにしたがって福祉事務所長、都道府県知事、厚生大臣が決めるようになっています。
福祉事務所長と都道府県知事が設定する特別基準は98年度基準表 へ中の「知事承認」基準などのように実施要領で各扶助ごとに品目と考え方、限度額が例示されているものがあります。例示されている限度額で必要額に足りないときは、さらに厚生大臣に必要額の設定を請求します。 また、例示されていなくても、健康で文化的な最低生活をするうえで必要なものは請求する権利がありますので、必要なものはどんどん特別基準の設定を要求しましょう。
手続きは、福祉事務所長から知事を経て厚生大臣へと請求します。