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  ☆ 相談コーナー目次

13 ◎交通事故の損害賠償制度(99・2000年度版)

使用した図表一覧



1 交通事故にあったら

 道路交通法では、事故を起こしたときは直 ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護 し、道路における危険を防止する等必要な措 置を講じなければなりません(七十二条前段)。 その後に、至急警察署へ通報しなければなり ません (七十二条後段)。これをしないと懲 役等の処罰を受けます (百十七条、百十九条 十号)。
 届出により警察官は、人身事故、物損事故 いずれの場合でも、当事者車両運転者の運転 免許証、車検証(原付バイクは標識交付証)、 自賠責保険証明書をコピーまたは転記し、こ れが後日に「交通事故証明書」 に記載され発 行されます。人身事故の場合は、人身被害者 全員の住所、氏名も記載されます。
 人身事故の場合はほかに、事故当事者が原 則として後日事故現場にて事故のくわしい状 況を警察官に説明し、警察署内にて「実況見 分調書」に記載され本人の供述と同じであれ ば、最後に本人が署名、捺印します。人身事 故の場合は、過失の割合にかかわりなく、ケ ガをさせた方が刑法上の業務上過失致死傷の 疑いがあるために (二百十一条)、警察官が くわしく調査します。
 前記のことをおこなえば、必ず交通事故証 明書が発行されますので、事故が現実にあっ たのに法的な証拠がないとか、相手方の住所、 氏名、自賠責保険会社がわからないというこ とはないのです。逆に、交通事故証明書がな いと事故が現実にあったにもかかわらず、法 的には 「ない」あつかいを受けますので、十 分注意しましょう。

 1.相手の確認

 相互に以下のもののコピーを交換するのが 最も良い方法でしょう。夜間でも警察の取調 べ等が終了したら、できる限り早くおこない、 運転免許証、車検証、自賠責保険証明書、任 意保険証券、その他、名刺(原物)、昼間・ 夜間の連絡先電話番号のメモ等。
 そして、任意保険に加入している場合は、 相互に自ら加入する保険会社へ連絡し、アド バイスを受けましょう。ほとんどの任意保険 は示談代行つきですが、そうでない場合もあ ります。

 2.事故の状況を確認

 損害賠償をめぐつて起きる争いは損害額の ほか、事故の両当事者の過失の有無やその割 合が問題になる場合が多くあります。
 したがって、事故発生の状況 (衝突地点や 車の衝突箇所、程度、スリップ跡、被害者の 転倒位置、破損物件の散乱状況など) をでき るかぎり写真などの記録にとっておくことが 大切です。
 目撃者がいる場合は、かならず住所・氏名 を聞いて、後日、証人になってくれるように 頼んでおくことも大切です。

 3.負傷の程度の確認

 どんなに軽いケガでも医師の診断を受けて おくことはあとで損害賠償の請求をするうえ で必要です。

 4.領収証や関係書類の保管

 事故にあったことで使った費用はタクシー 代や氷代など、どんな費用についても領収証 をもらっておきましょう。保険会社に提出す るために必要な戸簿謄本や住民票、印鑑証明、 医師の診断書、給与証明書などは二〜三通を 用意しておくと便利です。
 また、あとの補償請求、示談交渉や裁判で 証拠となる診断書、写真などは大切に保管し ておく必要があります。

2 損害賠償

 交通事故にあったときは、自動車損害賠償 保障法(強制保険)や民法、任意保険などに もとづいて賠償保障を請求できます。(図表10)
 自動車にたいする保険には強制的に加入す る自賠責保険と任意保険があります。
 任意保険は加入するかしないかは自由な保 険で、保険の種類、契約の仕方で、対人・対物 の補償内容がちがいます。 なお、自賠責保険と任意保 険の人身に関する損害補償 のあらましは図表1図表2・3のようになっています。
 自賠責保険による損害賠 償には次のようなものがあ ります。

(1)自賠責保険から出る保険金の種類

 自賠責保険は、加害者が 被害者に支払う義務のある 損害賠償額のうち人身事故 に限って保険金を払います。

 1.死亡による損害・・・一人 につき最高三千万円。 

 2.死亡にいたる負傷による損 害・・・一人につき最高百二十 万円まで。

 3.負傷による損害・・・一人 につき最高百二十万円まで。

 4.後遺障害による損害・・・ 負傷による損害の限度額に 加え障害の程度 (一級〜十 四級)に応じて三千万円か ら七十五万円まで。
 後遺障害等級による保険 金額は(図表11)のようになっ ています。

(2) ケガをしたとき

 1.治療費や治療中の諸雑 費…応急手当費や入院料、 看護料で、治療中の諸雑費 は必要なものであれば支給 されます。

 2.休業補償…事故により 休業が必要な期間について、 実際に損害を受けた収入減 少分を請求することができ ます。
 労働者は雇主から「休業 損害証明書」(源泉徴収票 添付)を、自営業者は所得 税確定申告書の控えなどで 証明します。主婦の休業補 償は女子労働者の平均賃金 を参考に家事労働ができな かった期間の損害額を算出 します。
 失業者の場合でも就業の 可能性が高かったときは、 平均賃金をもとに損害額を 算定し休業補償を請求できます。

 3.傷害慰謝料…入院期間や通院日数、傷害 の程度、被害者の年齢、職業などを考慮して その額が決められます。それぞれの慰謝料の 金額は図表1のようになっています。

(3)後遺障害が残ったとき

 1.経済的損失(逸失利益)…後遺障害によ って、働けなくなったり転職しなければなら なくなったために、収入が減ったり長期の療 養を必要とする場合にたいする補償です。

 2.慰謝料…後遺障害が残ったことによる精 神的な苦痛にたいして補償しようというもの で、一級から十四級までで図表1の金額が支 給されます。

(4)死亡したとき

 1.経済的損失(逸失利益)…被害者が生存 していれば生涯に得られる利益(収入から生 活費や経費を引いたもの)を補償されます。
 2.慰謝料…被害者の性別や年齢、職業、収 入などによってちがいますが、自賠責保険で は、請求権者一人につき五百万円、二人は六 百万円、三人以上は七百万円、被扶養者一人 につき二百万円となっており、さらに被害者 本人の分として三百五十万円を認めています。 ただし、これらの合計額が一人につき三千万 円をこえたときは、三千万円で打ち切りとな ります。

(5)建物や店舗などがこわされたとき

 任意の対物損害賠償保険に入っていると、 家屋や店舗などをこわされたときは、修理・ 復旧や買い替えの費用、また、法律上損害賠 償責任があると認められれば、こわされたこ とによっておきた被害者の休業による損害の 補償が限度額まで請求できます。

(6)当面の費用が必要なとき

 事故にあっても賠償金が決まるまでに期間 がかかるときは、自賠責保険の場合、必要な費 用について仮渡金や内払いの制度があります。

 1.仮渡金…死亡の場合は二百九十万円、負 傷のときは症状によって四十万円、二十万円、 五万円が支払われますが、治療期間が十日以 内のときは支払われません。

 2.内払い…治療が長くなって、その間の損 害額が十万円をこえた場合に分割して請求す ることができます。
 仮渡金と内払いは加害車両が加入している 自賠責保険の保険会社に請求書を提出します。

(7)損害賠償の請求はだれに

1.請求できる人

 負傷や後遺障害、建物や店舗の被害請求は 被害者本人(二十歳未満は保護者)がします。 被害者が死亡したときは被害者の損害賠償請 求権が相続され、相続人がおこないます。請 求できる相続人の順序は(1)被害者の子、孫な ど直系卑属、(2)父母、祖父母など直系尊属、 (3)兄弟姉妹などです。なお、配偶者(内縁を 含む)はどの場合でも以上の人とともに相続 人となります。
 被害者が死亡しなくても、死亡と同じよう に考えられる重大な後遺障害が残ったときは、 一定の近親者(父母、配偶者および子)も慰 謝料を請求できます。
 また、被害者が未成年者のときは、親権者 (親)が法定代理人として請求することにな ります。

 2.請求する相手

 加害者と自動車の保有者にたいし請求しま す。
 自動車の保有者とは、自分が車を運転しな くても自動車の登録名義人であり、自動車を 運行することによって利益をうる人です。つ まり自動車を使って仕事をしているときは雇 い主、車を貸したときは貸し主(レンタカー 会社も含む)などです。また、加害者が無断 で車を使ったときや車を買うときに名義だけ 貸したときでも、状況によって損害賠償の責任 があります。
 車どうしの交通事故のまきぞえで被害を受 け、両方の車に過失があったときは両方に損害 賠償の請求ができます。

(8) 請求手続きと時効

 1.請求の手続き

 自賠責保険の賠償請求は直接、保険会社に 請求します。請求に必要な書類は図表4を参 照してください。各社に所定の用紙が置いて あるものもありますので、問いあわせてくだ さい。
 請求の方法には加害者請求と被害者請求が あります。原則としては加害者が保険会社に 請求します。しかし、加害者に損害賠償の誠 意がなかったり、支払い能力がなく先払いが できないときは、被害者が直接、保険会社に 請求をする被害者請求をおこなうことができ ます。
 加害者が自賠責保険のほかに、任意の自動 車保険(対人賠償保険)にも加入していると きは、任意の保険の契約会社から自賠責保険 を含め一括して保険金を払う制度があります。
 保険金の請求手続きは任意保険の会社がお こなってくれますので相談してみましょう。

 2.請求の時効

 加害者の保険会社への請求の時効は、加害 者が被害者に賠償金を支払ってから二年です。
 被害者請求の時効は損害や加害者がわかっ たときから二年間です。被害者が知らないう ちに時効が迫っていたときは時効中断の手続 きをとります。


3 自動車事故でも医療保険は使える

(第三者行為請求)

 病院や医院の窓口によっては、交通事故に 健康保険や国民健康保険などの医療保険は使 えないようにいうところもありますが、自動 車事故でも保険は使えます。
 たとえば、健康保険法第六十七条は「保険 者は、事故が第三者の行為によって生じたる 場合はその給付の価額の限度において被保険 者又は被扶養者が第三者に対して有する損害 賠償請求権を取得する」としています。
 この第三者行為によるものとして交通事故 被害も保険給付の対象となります。
 この場合はまず医療保険者が治療給付を一 時立て替え、あとから保険者が加害者に請求 することになります。
 健康保険や国保で治療を受けた場合は、給 付後に保険証、印鑑、交通事故証明書(人身 事故のもの)をそえて第三者行為請求につい ての手続きを健保は社会保険事務所へ、国保 は各市区町村の国保課におこないます。
 老人保健の医療対象の人も第三者行為請求 はできます。手続き先は市区町村です。
 また、労災や健保などで給付を受けていた 人が自賠責保険診療に切り替えることも自由 です。
 交通事故による病気やケガの治療は、労災、 自賠責、各種医療保険いずれで受けるかは本 人の自由ですから自分の症状やいろいろな条 件を考えて自分に一番有利なものを選べます。
 ただし、労災や健保から自賠責に切り替え る場合は、それまでに支給された労災や健保 からの治療費、休業補償金などは、国が自賠 責に求償することになります。したがって被 害者が自賠責保険金を全部使いきらないうち に国から求償されると、自分で使える保険金 がゼロになったり、わずかになりますので注 意が必要です。


4 事故のため生活費や医療費に困ったときの福祉制度

(−) 各種の貸付金や手当を活用

 事故のために生活費や医療費に困ったとき は国の貸付金としては生活福祉資金がありま す。このほかに各自治体でおこなっている制 度や  自動車事故対策センター(図表9)の生 活資金がありますので問い合わせてください。
 いずれも「8 活用できる貸付制度」の章 を参照してください。

(2)常時介護の必要な人には一日四千五百円の介護科

 白動車事故による負傷で自宅で常時介護が 必要となった人には、一日四千五百円の介護 料(家族介護のときは二千二百五十円)が支 給されます。
 介護料は三、六、九、十二月に三か月分ま とめて支給されます。
 申請の受け付けは各地の自動車事故対策センター(図表9)でおこなっています。
 〈対象者)脳損傷や脊髄損傷で自分で動け ない、食べることができない、意思の疎通が できない、重度の精神神経障害の状態が三か 月以上続いているといった人です。本人や扶 養義務者の所得が一千万円をこえるときは支 給されません。
 〈手続き)戸籍謄本、住民票、診断書、事 故証明、所得証明に申請書をそえて自動車事故対策センター(図表9)に申請します。

(3)緊急貸付や育成給付金など援護制度の問い合わせ先

交通事故被害者にたいする援護制度は大別 して次のようになっています。

 1.自動車事故対策センター(図表9)の育成資金貸付 (中学生まで)は「2 教育費の父母負担軽 減…」の章、それ以外の生活資金の貸し付け は「8 活用できる貸付制度」の章参照。

 2.(財)交通遺児育英会の高校・大学生にたい する奨学資金の貸与は 「2 教育費の父母負 担軽減…」の章参照。

 3.(財)ハイウェイ交流センター(〒101−00 53東京都千代田区神田美土代町7の1東京 YMCA国際奉仕センターTel03−5282− 8163)の高校生にたいする修学資金…日 本道路公団の管理する道路で死亡した人の遺 児に年額二十八万二千円、卒業祝金十万円 (九五年度卒業より)を給付。

 4.(財)交通遺児育成基金 (〒105−0012東 京都港区芝大門1の10の1全国たばこビルTel 03−3434−3611)の育成給付金…ゼ ロ歳から十歳までの交通遺児が、拠出金を払 い込んで加入すると、加入の翌月から満十九 歳になるまで年齢に応じて支給。
 拠出金−ゼロ歳から六歳まで六百万円、七 歳から八歳まで五百五十万円、九歳から十歳 までが五百万円。
 支給額−年齢に応じて、月額三万二千円か ら七万円の範囲内。

 5.(財)自動車事故被害者援護財団(〒102− 0052東京都千代田区麹町6の1 の25上智麹町ビルTel03-3237- 0158)のおこなう図表5の事業。
 各財団のおこなっている援護制度 の内容や手続きについては各地の交通事故紛争処理センタ ー(図表6)に問い合わせ てください。


5 特別の場合の救済

(−) 加害者に資力のないとき

 加害者に資力がないときでも、加 害車両が自賠責保険や任意保険に入 つていれば保険金が支払われます。 自賠責保険で出る補償金は死亡のと き三千万円まで、負傷のときは百二 十万円までですが、後遺症が出れば その状態によって七十五万円から三 千万円まで出ます。
 任意保険の場合には被害者請求の 制度はありませんが、加害者の無資 力が認められれば、加害者に代わっ て被害者が保険金の請求ができるこ とが裁判などで認められています。

(2)ひき逃げなどのときは国の自動車損害賠償保障事業を

 ひき逃げや無保険車による被害、加害者の 自賠責保険の期間が切れているとき、盗難車 運転による被害などで車の保有者の責任がな いときは、強制保険支払限度の範囲内で国が 被害者に損害の補償をします。これを国の自 動車損害賠償保障事業といい、補償額は自賠 責保険と同額です。国にたいする補償の請求(図表10) はどこの保険会社でも受け付けてくれます。

(3)加害者の車が業務使用の自家用車のときは会社にも補償請求を

 事故の加害者が、通勤中に運転していた自 家用車が業務にも使われているときは、会社 側に補償を請求できるケースがあります。た とえば、セールスマンなどで会社が積極的に 通勤用自家用車の業務使用を認めているとか、 暗黙のうちに業務使用を認め、維持費や修理 費を会社が負担するなど、会社がその車の使 用をコントロールしている場合は、使用者責 任(民法第七百十五条)と運行共用者責任(自 動車損害賠償保障法第三条)をもとに会社の 責任を追及できます。
 請求できる補償は強制保険の限度額以内で す。


6 損害賠償の示談や裁判

(1)示談をするときの注意

 「示談」とは、民法上の和解契約(民法第 六百九十五条)のことをいい、一度成立する と当事者はその内容に拘束され原則的には内 容をくつがえすことはできません。
 示談については、交通事故紛争処理センタ ー(図表6)、または日弁連交通事故相談セ ンター(図表7)に相談や示談のあっ旋を依 頼することもでさます。両センターへの相談 や示談のあっ旋は一切無料です。
 示談の際には次のことに注意しましょう。

 1.相手の代理人が来たとき確かめること

 示談は当事者がするものですが代理人をと おしておこなうこともあります。その際は、 代理人がどういう立場にある人か、ほんとう に代理人かを加害者本人に確かめるなり、加 害者の委任状を持参してもらうなどします。 信用できない人であれば交渉に応じる必要は ありません。

 2.ケガなどが完治してから示談を

 交通事故による傷病が完全に治りきってい ないうちに示談をし、その後、体の具合が悪 くなりめんどうなことになるケースもふえて います。
 交通事故による賠償請求権の時効は、損害 および加害者を知ったときから三年(民法第 七百二十四条)ですから、完治してから示談 をしたほうが安全です。また、時効に関係な く事故発生から二十年で請求権は消滅します。  完全に治ったと思って示談をしてもあとで 後遺障害が出ることもありますので、示談書 のなかに、後遺障害が出たときは別途に賠償 金を支払うという条項をかならず入れましょ う。
 最終的な示談をするときには、交渉中の補 償額が妥当かどうかを専門の弁護士に聞いて から決めることも大切です。

 3.補償額を確実に支払ってもらうために

 いちばんいい方法は、全額一括に支払いを 受けるのとひきかえに示談書をとりかわすこ とです。
 もし、分割払いになるようなら、加害者に 示談内容を確実に履行してもらうために、示 談書に不履行の場合の制裁条項を入れておく ほうが安全です。たとえば、分割金の支払い を二回以上怠ったら、即時残金全額を支払う などという条項です。
 また、私製の示談書を作るのでなく、不履 行の場合、すぐに強制執行ができる即決和解 調書または公正証書にしたり、加害者の不動 産にたいして抵当権を設定するとか、支払い 能力のある人に連帯保証人になってもらうこ とも考えましょう。
 示談書の書き方については様式が法律では 決まってませんが、少なくとも次のことは記 載します。1.当事者名、2.事故の日時・場所、 3.加害車両の登録番号、4.被害状況、5.示談 の内容・支払方法、6.示談書作成年月日。
 書き方の見本は(図表8)のとおりです。

(2) 示談成立後に後遺障害が出たとき

一般的に示談成立後に新たな請求をするこ とはできませんが、次のようなときは認めら れます。

 1.被害者の弱みにつけこんだ示談の場合。

 2.当初予想しえなかった後遺障害などが発 生したとき。

 このほかにも示談が暴力や脅迫によって成 立したときは、示談を取り消して無効にでき ます。

 また、示談書のなかに、示談書作成のとき までに生じた損害についてだけの示談である ことが明記されていれば新たに請求できます。 この点は示談をするときにかならず入れるよ うにしましょう。
 示談書のなかに「今後はいっさい金銭的な 請求はしない」と書いてあっても、その後、 症状が悪化したときは医師の診断書を加害者 と保険会社に提出し、症状と事故の因果関係 を証明して賠償を請求できます。

(3)裁判による解決

 交通事故による賠償交渉が解決しないとき は裁判にもちこむことがありますが、裁判の 手続きの費用、裁判費用の立て替えの制度(法 律扶助制度)などもありますので、信頼でき る弁護士に相談してください。また弁護士会 や役所に交通事故相談係もありますので相談 するとよいでしょう。


7 加害者になったとき

 事故を起こしたら被害者(被害車両)の状 況を確認し、被害者が負傷していれば病院に 運ぶか救急病院に連絡することが必要です。
単に「だいじょうぶか」と口で確かめただけ ではひき逃げとされることもあります。
 被害者の救護と安全の緊急措置をとったあ と警察に報告する義務があります。報告をす ると警官が実地検証をおこないます。
 このときは検証のやり方を注意し、距離の 測定や位置関係などが正確かどうかを絶えず 確認することが必要です。実況見分調書は、 あとで裁判になったとき重要な証拠となりま すので警官に状況説明を求められたときは、 あいまいなことは言わず、事実にもとづき自 分の主張すべき点をはつきり主張します。こ のことはその後の取り調べでも大切です。
 さらに、自分でも調査や証拠の収集(被害 者の住所や氏名、道路の状況、明暗、交通状 況、目撃者の住所・氏名の確認など)をして おきます。これはあとで裁判になったときに 大切です。
 事故のあとは、なんといっても被害者の救 済に全力をつくすことです。多額の賠償請求 をされているケースをみると、被害者が加害 者の不誠意にふんがいして裁判になっている ことが少なくありません。
 被害補償にしても弁護士や保険会社まかせ にすることはよくありません。
 被害者の負傷については専門家に早く診て もらうようにすることです。遅れると損害を 大きくすることがあります。
 自賠責保険や保険会社にたいしても、早く 被害者の名前で請求することです。加害者の 名前で請求すると、いろいろの面で被害者の 名前で請求するよりも不利なことがあります。


8 自転車事故の補償

(1) 自転車安全整備制度(TS)

 自動車などは自動車績害賠償責任保険への 加入が義務づけられており、一定の補償がさ れますが、自転車については強制保険はあり ません。
 そこで、自転車の安全整備を普及・促進し ながら一定の補償をするため、八二年四月か ら自転車安全整備制度 (略称TS=Traffic Safety)が発足していますが、あまり普及し ていません。

〈対象)

 補償の対象は個人ではなく「TS」マーク のついた自転車に乗っている人です。たとえ ば飲食店などで店主が店の自転車にTSマー クをつけていれば、従業員がその自転車に乗 っていて事故にあっても補償されます。
 TSマークをつけるには、安全整備店のマ ークをかかげた自転車店で安全整備をしても らうとマークをつけてもらえます。保険の有 効期間は、点検日から一年間です。

〈補償内容)

 TS制度による補償内容は事故を起こした 場合と事故にあった場合によってちがいます。

 1.事故を起こしたとき・・・事故から百八十日 以内に相手が死亡したり、重度後遺障害(自 賠法に定められている後遺障害等級一級から 四級まで)を与えたときは、五百万円を限度 に賠償金が被害者に支払われます。

 2.事故にあったとき・・・マークのついている 自転車にのっていて事故にあい死亡したり負 傷(重度四級以上)したときは一律三十万円 の見舞金が支給されます。また、入院が十五 日をこえたときは一律一万円が給付されます。
 なお、一九九〇年十月から、前述した補償 をするのを第一種TSマーク(青色のマー ク)とし、新たに第二種TSマーク(赤色の マーク)をつくり、補償額は事故を起こした ときの賠償金限度額が一千万円、死亡か負傷 したときの見舞金百万円、入院が十五日をこ えたときの見舞金十万円としました。第一種 か第二種かは自転車を整備してもらう人が決 めます。
 いずれの場合も財団法人・日本交通管理技 術協会(〒162−0843東京都新宿区市ヶ谷 田町二丁目六番エアマンズビル市ヶ谷Tel03− 3260−3621)から支給されるように なります。
 この制度の案内チラシは安全整備店のマー クをかかげている自転車店にあります。

(2) 自治体の交通災害共済

 自治体によっては、比較的軽費のかけ金で 自転車事故などにたいして補償(お見舞い) する交通災害共済を設けているところがあり ますので問い合わせてみてください。
 たとえば東京では、二十三区で一つの事務 組合をつくり実施しています。対象は自転車 に乗った人も含む歩行者で、人身事故にたい してです。かけ金は年額二千円、千円、五百 円のコースがあります。五百円のコースの場 合、死亡百五十万円、小・中学生の子どもが いる場合には子ども一人につき十万円。ケガ の場合、治療を一回でもおこなったとさは一 万円が支給されます。この案内のリーフレッ トは区役所のほか、二十三区内の金融機関な どに置かれています。



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