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授業分析で向山型算数を目指す 第8回 難問で子どもとの距離が縮まった TOSS加賀 岩田史朗 |
新学習指導要領が実施され、はや1ヶ月が過ぎた。
学校現場では新学習指導要領の目玉である総合的な学習が本格的に始まった。
また、もう一つの目玉である基礎基本の徹底も声高に叫ばれている。
(ちなみに自分の学校では毎日10分間のドリルタイムを取ることになった。)
しかし、文部科学省が出した次の見解への取り組みはどうであろうか。
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学習指導要領は最低基準である。私立入試では、指導要領も超えた問題も、場合によっては許される。 |
いわゆる、発展学習である。
ベネッセ教育研究顧問の高階玲治氏は発展学習について次のように述べている。
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発展学習の導入は当然の帰結であると言っても、教科書主体の授業展開に馴れすぎている教師に、教科書を超えた学習教材を用意するだけの余裕があるとは到底思えない。 (現代教育科学 2002年 1月号 P31より引用) |
自分自身、学校週五日制が実施され、ゆとりができると考えていた。
しかし、実際に実施されてみてそうではなかったと思っている。
持ち時数は増え、学級事務をする時間すらないというのが現実である。
高階氏が述べているように教科書を超えた学習教材を用意する余裕など正直にいってない。
では、どうするか。
算数ならば、強い味方がある。
それは、
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もう一つの向山型算数「難問」 |
である。
向山型算数教え方教室誌にリレー連載され、32回まで続いている。(5月号現在)
32回分あれば、1年間は充分に発展学習に取り組ませることができる。
また、「向山型算数の楽しい問題100選 低・中・高学年用」「思考力が伸びる『算数の良問』
ベスト72選」も明治図書から発売されている。
これだけあれば、発展学習はバッチリである。
今年度は6年生の担任となった。
難問は現在までに3回行った。
始めて難問をやらせたのは、新学期が始まり1週間が過ぎたころであった。
自分にとって初めての6年生ということで、緊張しながら毎日を過ごしていた。
その緊張が子ども達にも伝わったのであろうか。
正直言って、子ども達との関係はギクシャクしていた。
どこかで子ども達と心をつなぐことができないだろうか。
そればかりを考え毎日を過ごしていた。
そのきっかけは思わぬところにあった。
算数の時間が少し余ったので、
の中に四角形がいくつあるかという問題を出した。
向山実践の追試である。
子ども達は熱中した。この時間では丸をもらえず、休み時間も解いている子が何人もいた。
次の時間が始まって教室に行くと、何人もが丸をもらおうと教卓に駆け寄ってきた。
丸をつけると「やった!」と飛び上がって喜んだ。
そんな様子を見て、子ども達との距離が少し縮まったように感じた。
そして、ぜひ難問に挑戦させたいと思った。
数日後、また隙間時間ができた。
そこで、準備しておいた難問プリントに挑戦させた。
熱中度はすさまじかった。
「できそうでできないんだよね。」「答えを教えようか?」と挑発するたびに、
子ども達から「ダメ〜!」「待って!」と声があがった。
子ども達との一体感がうれしかった。
次々にもってきて、バツをもらって帰る子どもたち。でも、その表情は明るかった。
もう何人がもってきたであろうか。1人の男の子が「お願いします」とプリントを差し出した。
正解だった。その子の顔を見ながら、にっこりと笑い言った。
「○○さん、一番!」
「え〜っ!」「○○、すげえ!」
教室中が沸いた。にっこり笑いながら席に戻る○○さん。
次ぎにもってきた女の子も正解だった。
「●●さん、二番!」丸のついたプリントを大事そうに胸に抱いて席へ戻る姿はとてもかわいらしかった。
放課後、子ども達が周りに集まってきて言った。
「また、難問プリントやりたい!」
難問が教師と子ども達の距離をぐっと縮めてくれた。