授業分析で向山型算数を目指す 第4回

追試することの難しさ

      TOSS加賀 岩田史朗                  

 

 3学期最初の授業は福島の正木惠子氏の追試から始まった。

 正木氏の最初の指示は以下のものである。

「15。かけ算のひっ算(2)」

(向山型算数セミナーin埼玉 模擬授業資料より引用)

 次に示すのは実際の授業をテープ起ししたものである。

【0秒】

T 教科書47ページです。
C え!
T 15。かけ算のひっ算(2)というところです。

追試のはずが最初の指示から違っている。

「教科書47ページです。」この指示は正木氏の授業案の中にはない。

何気なく口にした指示である。また、テープ起しをしたときはとくに気になることもなかった。

テープ起ししたものをMLに発信するとさっそく返信をいただいた。

その中には正木氏からのものもあった。

拝読して驚いた。

ここは、あえて「15。かけ算のひっ算(2)」だけというのである。

あえて「教科書47ページ」は入れなかったそうである。

その理由として、3学期というまとめの時期だから乗り越えさせようと考えたとおっしゃっている。

1つの指示の中になんと深い考えが凝縮されているのか。

そこまで考え抜かれた指示を自分勝手に思いつきで変更していたのだ。

そして、その思いつきの変更にまったく気づかず追試したつもりになっている自分に腹が立った。

そう考えテープ起ししたものをみてみると、つぎのところも気になる。

T 15。かけ算のひっ算(2)というところです。

ここも正木氏の指示通りではない。

正木氏は

「15。かけ算のひっ算(2)」

である。

余計な言葉を言っているのだ。

言葉を10分の1に削れという向山氏の言葉が全然わかっていないのだ。

そして、たった一つの指示すら追試できていない自分に愕然とした。

向山氏は次のように述べている。

例えば「ノートにうつしなさい」という言葉。「できた人はかしこい」という言葉。

こんなに短いフレーズの言葉でも、自己流にやると、全く違ってしまう。

同じセリフを、何人ものタレントに言わせて見れば、みんな違ってしまうのと同じだ。同じセリフを悲劇にもできれば、喜劇にもできる。

だから、「追試」をするときは、原実践者の息づかいまで、まねすることが大切だ。

「猿まね」などと軽蔑する馬鹿教師がいる。

向山の授業セリフを「猿まね」できればたいしたものだ。

教師修行5年や10年の駆け出し教師にはできないだろう。

(向山型算数教え方教室12月号6ページより引用)

 

たった1つの指示すら正確に追試できない自分にとって、「猿まね」できるようになるのはいつになるのだろうか。

今回のテープ起しで、あらためて追試の難しさ、そして厳しさを実感した。

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