授業分析で向山型算数を目指す 第2回

授業行為の意味を語る

      TOSS加賀 岩田史朗                  

 

向山型算数教え方教室12月号の向山氏の巻頭論文は授業分析をするものにとって必読の論文である。

 向山氏は述べている。

なぜ「幼稚園」レベルなのか。

それは「分析」の内容が、印象を語るだけ、思いつきを語るだけだからだ。

 意味が語られていない。

 理論が語られていない。

自分の授業分析はどのような視点でおこなってきたのか。

自問自答してみたが答えることはできなかった。

ただ漫然とおこなってきただけなのだ。

授業行為の意味を語る、理論を語る、この視点で分析をおこなっていくことが必要なのだ。

 

次は118日におこなった授業をテープ起ししたものである。

 これを授業行為の意味を語る、理論を語るという視点で分析してみる。

【0秒】
T 今から紙を配ります。
C 何の紙?
T どうぞ。
C ありがとう。
T どうぞ。
C ありがとう。

この紙は後で二等辺三角形、正三角形を書かせるためのものである。

しかし、問題を読んだ後に配るということもできる。

では、なぜ授業開始後すぐに配ったのか。

それは、問題を読んだ後、すぐに作業に取りかかれると考えたからである。

【38秒】
T 教科書10ページ、練習。
  丸の1、下の、からみんなで、はい。

いつもなら「教科書を開きなさい」と言っている場面である。最近、その言葉が形式的になっていると感じていた。

そこで今回はこの指示で一気に授業へ入ることにした。

そのためにこうした指示をおこなった。

C 読む。(一緒に読む)

なぜ、子どもだけに読ませず、教師も一緒に読んだのか。

1回目なので教師が一緒に読むと安心して読めると考えたからである。

【56秒】
T はやい子、たくさんいるな。
  念のためにもう一回。
  さんはい。
C 読む。

「はやい子」とは問題を読んだ子である。つまり、まだ問題を読んでいない子がいたのである。ほめることで、読んでいない子も巻き込もうとした。

子ども達だけで読ませたのは2回目だからである。

【1分11秒】
T その通り。
  今度はスピードを上げて。
  下の、から、はい。

問題をすらすら読ませることで意味が理解できると考えた。そこでこのような指示を出した。しかしすらすら読ませることでなぜ意味が理解できるか、その理論を明確に述べることはできない。

C 読む(途中から一緒に読む)

途中から一緒に読んだのは子どもの読むスピードが変わらなかったためである。

教師がひっぱっていくという気持ちで一緒に読んだ。

 

以上1分少々を授業行為の意味を語るという点で分析した。(理論については語れなかった。)

1分少々だから何とか意味を語ることができた。しかし、これが45分となると意味を語ることができない授業行為が山ほどでてくるにちがいない。

意味を語ることができない授業行為、それらは全て思いつきに他ならない。思いつきは所詮3流の授業行為であろう。

また、授業行為の意味を語ることができても、その授業行為がベターであるかはわからない。それらの検討も必要である。

 

向山氏の示した視点で分析するのは厳しい。

しかし、授業の腕を上げるためには、さけて通ることのできない視点である。

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