酒は世につれ、世は酒につれ〜私の酒歴書

 

   第3話 八丈島「剃り魔」事件   

 

夕刊フジ 平成9年9月12日掲載


飲むとイタズラしたくてたまらない!

 は酒を飲むとイタズラをしたくてたまらなくなる。よくクラブなんかだと、席を外したホステスのグラスの底をマッチの煙であぶり墨をつけ、戻ってきたら顔当てクイズをやって、何も知らないホステスの顔を墨だらけにしてしまうという他愛もないイタズラで大笑いするのであるが、笑うに笑えない、取り返しのつかないイタズラも大好きである。

 あれはプロレス興行で八丈島へ行ったときの事件。ファン感謝デーでもあり、全国から集まった約50名のファンとともにフェリーに乗って八丈島と三宅島めぐりをしたのである。

 初日は八丈島泊。あいにくの雨天模様なので、夕食までホテル内に缶詰ということになった。
 たいくつな私は、自室に若いレスラー数名を集めてイタズラ談義。

「せっかく八丈島に来たんだから誰かイケニエにしようぜ。なーに、ちょっとやそっとのことをしたって大丈夫。何たって八丈島は治外法権だから」。ンなことはないのだが、とにかく本土を離れて私は有頂天だったことは事実。

 作戦はこうだ。エジキは週刊プロレスのS記者。夜の宴会の時に睡眠薬入りのビールをガンガン飲ませて酔わせ、寝入ったスキを見計らって髪の毛を剃っちゃおうという愉快なイタズラ。
 さぁ、そうと決まれば行動開始。皆が睡眠薬入りのビールを作る係、盛り上げ係、一緒にそのビールを飲むオトリ係、カミソリ用意係、剃り係(もちろん馳浩)と役割分担を決めて今や遅しと夜を待ったのだ。

 レスラーの宴会は、とにかく上半身裸でビールなんてラッパ飲みは当たり前。ファン、記者、レスラーなど入り乱れてその夜は大騒ぎ。ところがあまりの騒ぎぶりに恐れをなしたS記者は、馳が裸踊りしているスキを見計らってまんまと自室へトンズラ。
 こりゃいかんとばかり、若手レスラー総出でベロ酔い状態のS記者を、部屋から拉致して馳の部屋に連れ戻し、両手両足ぐるぐるしばって、さるぐつわまでかましてまさにイケニエ。マナ板の鯉。

 実はこの頃になると私も意識もうろう。シェービングクリームをS記者の頭といわず顔といわず塗りたくり、ヒッヒッヒーと奇声もろとも、何とモヒカン刈りプラス眉毛まで剃ってしまったのである。あまりの惨状にファンも若手レスラーも一人また一人とその場を立ち去ったのだそうな(私は何も覚えていない)。

 翌日、目覚めたS記者は大激怒。
「裁判で訴えてやる」と私を脅し、私も渋々、反省の念を込めて丸坊主にしたという次第。そのS記者はいまだに私の顔を見るたびに「馳、てめぇ、このやろう。いつの日かおまえの眉毛を剃ってやる。よくそれで国会議員になったもんだ」と悪態をつく。負けずに私も「今度はチンチンの毛を剃ってやるから覚悟しておくんだな」と言い返すという、大変仲の良い関係になったのである。

 ちなみに眉毛は1ヶ月半ほどで元通りはえ揃ったようである。
 みなさんも酒飲んで騒ぐときは、ぜひカミソリとシェービングクリームを用意してみてください。たまりませんぜ。

※八丈島は日本国固有の領土です。治外法権ではありません。日本の法律を遵守しましょう。
 睡眠薬は医師の処方箋にしたがって正しく服用しましょう。
 ビールに混ぜて無理矢理飲ませると危険です。絶対やめましょう。

参議院議員 馳 浩


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