扶養 (局)第4−1−(1)
第4 扶養義務の取扱い
(次)第4
要保護者に民法上の扶養義務の属行を期待できる扶養義務者のあるときは,その扶
養を保護に優先させること。この民法上の扶養義務は,法律上当然の義務ではあるが,
これを直ちに法律に訴えて法律上の問題として取り運ぶことは扶養義務の性質上なる
べく避けることが望ましいので,努めて当事者間における話し合いによって解決し,
円満裡に履行させることを本旨として取り扱うこと。
(局)第4
1 扶養義務者について
(1)保護の申請があったときは,要保護者の扶養義務者のうち次に掲げるものの有
無をすみやかに調査すること。この場合には,要保護者よりの申告によるものと
し,さらに必要があるときは,戸籍謄本等により確認すること。
ア 絶対的扶養義務者
イ 相対的扶養義務者のうち次に掲げるもの
(ア)現に当該要保護者又はその世帯に属する者を扶養している者
(イ)過去に当該要保護者又はその世帯に属する者から扶養を受ける等特別の事
情があり,かつ,扶養能力があると推測される者
〔相対的扶養義務者との特別の事情〕
間(第3のUの1)局長通達第4の1の(1)のイの(イ)にいう「特別の事情」に該当
するのは,どのような場合であるか。
答 民法第877条第2項にいう特別の事情と同様趣旨のものと考えてよく,この
場合,特別の事情とは,法律上絶対的扶養義務者には一般的に扶養義務が課せ
られるが,その他の3親等内の親族についても,親族間に生活共同体的関係が
存在する実態にあるとさは,その実態こ対応した扶養関係を認めるという観点
から判断することが適当であるとされている。したがって,本法の運用にあたっ
ても,この趣旨に沿って,保護の実施機関において,当事者間の関係並びに関
(115)
扶養 (局)第4−1−(2)
係親族及び当該地域における扶養に関する慣行等を勘案して特別の事情の有無
を判断すべきものである。
わが国の社会実態からみて,少なくとも次の場合にはそれぞれ各号に掲げる
者について特別の事情があると認めることが適当である。
1その者が,過去に当該申請者又はその世帯に属する者から扶養を受けたこと
がある場合
2 その者が,遺産相続等に関し,当該申請者又はその世帯に属する者から利益
を受けたことがある場合
3 当該親族間の慣行又は当該地域の慣行により,その者が当該申請者又はその
世帯に属する者を扶養することが期待される立場にある場合
※ Pl15(局)第4一1(1)−イー(イ)相対的扶養義務者との特別
の事情
(2)扶養義務者の範囲は,次の表のとおりであること。
*親族表 別画像参照
(116)
(局)第4−1−(3)扶養
(3)扶養義務者としての「兄弟姉妹」とは,父母の一方のみを同じくするものを含
むものであること。
2 扶養能力の調査について
(1)1により把握された扶養義務者について,その職業,収入等につき要保護者そ
の他により聴取する等の方法により,扶養の可能性を調査すること。
〔扶養義務の履行が期待できない者に対する扶養能力調査の方法〕
間(第3のUの2)局長通達第4の2の(1)による扶養の可能性の調査により,例
えば,当該扶養義務者が被保護者,社会福祉施設入所者及び実施機関がこれら
と同様と認める者,要保護者の生活歴等から特別な事情があり明らかに扶養が
できない者並びに夫の暴力から逃れてきた母子等当該扶養義務者に対し扶養を
求めることにより明らかに要保護者の自立を阻害することになると認められる
者であって,明らかに扶養義務の履行が期待できない場合は,その間の局長通
達第4の2の(2)の扶養能力調査の方法はいかにすべきか。
答1 当該扶養義務者が生活保持義務関係にある扶養義務者であるときは,局長
通達第4の2の(2)のただし書きにいう扶養義務者に対して直接照会することが
真に適当でない場合として取扱って差しつかえない。
2 当該扶養義務者が生活保持義務関係にある扶養義務者以外であるときは,個
別の慎重な検討を行い扶養の可能性が期待できないものとして取扱って差しつ
かえない。
3 なお,いずれの場合も,当該検討経過及び判定については,保護台帳,ケー
ス記録等に明確に記載する必要があるものである。
※ Pl17(局)第4−2−(1)扶養の可能性の調査
※ Pl18(局)第4−2一(2)扶養能力調査の方法
〔扶養能力の判断〕
間(第3のUの3)生活扶助義務関係にある者の扶養能力を判断するにあたり,
所得税が課されない程度の収入を得ている者は,扶養能力がないものとして取
り扱ってよいか。
答 給与所得者については,資産が特に大きい等,他に特別の事由がない限り,
(117)
扶養 (局)第4−2−(2)
お見込みのとおり取り扱って差しつかえない。給与所得者であってもこの取り
扱いによることが適当でないと認められる者及び給与所得者以外の者について
は,各種収入額,資産保有状況,事業規模等を勘案して,個別に判断すること。
(2)生活保持義務関係にある扶養義務者及び扶養の可能性が期待されるその他の扶
養義務者については,更に次により扶養能力を調査すること。
ア 当該扶養義務者が保護の実施機関の管内に居住する場合には,実地につさ調
査すること。
当該扶養義務者が保護の実施機関の管外に居住する場合には,まずその者に
回答期限を付して照会することとし,期限までに回答がないときは,再度期限
を付して照会を行うこととし,なお回答がないときは,その者の居住地を所管
する保護の実施機関に書面をもって調査依頼を行うか,又はその居住地の市町
村長に照会すること。ただし,扶養義務者に対して直接照会することが真に適
当でないと認められる場合には,まず関係機関等に対して照会を行い,なお扶
養能力が明らかにならないときは,その者の居住地を所管する保護の実施機関
に書面をもって調査依頼を行うか,又はその居住地の市町村長に照会すること。
なお,相当の扶養能力があると認められる場合には,管外であっても,でき
れば実地につき調査すること。
イ 調査は,扶養義務者の世帯構成,職業,収入,課税所得及び社会保険の加入
状況,要保護者についての税法上の扶養控除及び家族手当の受給並びに他の扶
養履行の状況等について行うこと。
ウ アの調査依頼を受けた保護の実施機関は,原則として3週間以内に調査の上
回答すること。
エ 調査に際しては,扶養義務者に要保護者の生活困窮の実情をよく伝え,形式
的にわたらないよう留意すること。
(3)扶養の程度及び方法の認定は,実情に即し,実効のあがるように行うものとし,
扶養義務者の了解を得られるよう努めること。この場合,扶養においては要保護
者と扶養義務者との関係が一義的であるので,要保護者をして直接扶養義務者へ
の依頼に努めさせるよう指導すること。
(4)扶養の程度は,次の標準によること。
(118)
(局)第4−2−(5)扶養
ア 生活保持義務関係(第1の2の(4)のイ,同(5)のイ,ウ若しくはオ又は同(8)に
該当することによって世帯分離された者に対する生活保持義務関係を除く。)に
おいては,扶養義務者の最低生活費を超過する部分
イ 第1の2の(4)のイ,同(5)のイ,ウ若しくはオ又は同(8)に該当することによっ
て世帯分離された者に対する生活保持義務関係並びに直系血族(生活保持義務関
係にある者を除く。),兄弟姉妹及び相対的扶養義務者の関係(以下「生活扶助義
務関係」という。)においては,社会通念上それらの者にふさわしいと認められ
る程度の生活を損なわない限度
※ P96(局)第1−2−(4)常時介護又は監視を要する寝たきり老人等の世
帯分離
※ P96(局)第1−2−(5)出身世帯貝と同一世帯として認定することが出
身世帯貝の自立助長を阻害する場合の世帯分離
※ P97(局)第1−2一(8)救護施設等の入所者と出身世帯貝とを同一世帯
として認定することが適当でない場合の世帯分離
〔扶養の程度〕
間(第3のUの4)局長通達第4の2の(4)のアは,生活保持義務関係にある者の
同居の事実の有無又は親権の有無にかかわらず適用されるものと思うが,どう
か。
答 お見込みのとおりである。
※ Pl19苑4−2一(4)ア 扶養義務者の最低生活費を超過
する部分
(5)扶養の程度の認定に当たっては,次の事項に留意すること。
ア 扶養義務者が生計中心者であるかどうか等その世帯内における地位等を考慮
すること。
イ 生活扶助義務者が要保護者を引き取ってすでになんらかの援助を行っていた
場合は,その事情を考慮すること。
3 扶養の履行について
(1)扶養義務者が十分な扶養能力があるにもかかわらず,正当孝理由なくして扶養
(119)
扶養 苑4−2−(6)
を拒み,他に円満な解決の途がない場合には,家庭裁判所に対する調停又は審判
の申立てをも考慮すること。この場合において,要保護者にその申立てを行わせ
ることが適当でないと判断されるときは,社会福祉主事が要保護者の委任を受け
て申立ての代行を行ってもよいこと。
(2)(1)の場合において,必要があるときは,(1)の手続の進行と平行してとりあえず
必要な保護を行い家庭裁判所の決定があった後,法第77条の規定により,扶養義
務者から,扶養可能額の範囲内において,保護に要した費用を徴収する等の方法
も考慮すること。
なお,法第77条の規定による費用徴収を行うに当たっては,扶養権利者が保護
を受けた当時において,当該扶養義務者が法律上の扶養義務者であり,かつ,扶
養能力があったこと及び現在当該扶養義務者に費用償還能力があることを確認す
ること。
(3)扶養義務者の扶養能力又は扶養の履行状況に変動があったと予想される場合
は,すみやかに,調査のうえ,再認走等適宜の処理を行うこと。
なお,扶養能力及び扶養の履行状況の調査は,年1回程度は行うこと。