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2007年7月30日 金沢市生活保護、「特別控除」「未成年者控除」未実施について  金沢生健会 広田敏雄 


はじめに
 
 金沢市は生活保護実施要領に定める運用を誤り、「特別控除」「未成年者控除」について未実施であることが判明した、市の説明では、実施している世帯もあるというが、実施要領に定められた運用について基本的な考え方を誤っているものであり、法令遵守違反である  
 
 金沢市はこの運用を早急に改善し、今まで支給がされなかった被害者に対して職務責任者によるお詫び、そして受けられたであろう保護費の追支給、事件の詳細の調査と再発防止策について市民に公表することをもとめる
 
 
1,経過
 
・4月中旬生健会に、「金沢市は特別控除と高校生の未成年者控除を実施していない」との相談あり
 
・生健会で制度の実施状況を確認すると、特別控除は賞与のあるものだけに実施、高校生の未成年者控除は実施していないと回答、金沢市に控除しない根拠と実態を問い合わせたが、何を根拠としているかが明らかにならなかった
 
・石川県厚生政策課に対して、金沢市のこれまでの誤った行政について、対応を取ること要望した
 
・金沢市支援課は、これからは全員実施する、遡及は一年と考えている、との回答をほのめかす
 
・5月29日県社保協とともに、生活保護の改善を求める要望書を提出した際に、市側からこの問題についてはあらためて研究しているとの回答にとどまり、これまでの説明をご破算とした
 
・6月1日、尾西県議によると、県からの報告では県内では加賀市も実施漏れがあるという
 
・現在、「特別控除と高校生の未成年者控除」は今までの方法を改め、実施要領どおりの施行となったが、謝罪と遡及については必要ないとの立場である
 
 
 
2,解説
 
 
*今回の解釈の誤りは、昭和36年次官通達の際の実施から、昭和38年にその細目を局長通知によって全国的に徹底されたにもかかわらず、金沢市はその運用の見直しをせずその当時より誤った運用を続けてきているものと思われる
 したがって、今年度予算 一千万円 該当者 二百人と市が発表したが、過去 40年以上にわたり、結果として最低生活費を下回る生活を押し付けてきたものである  
 現在でもその多くは、小さな子を抱えた母子家庭と思われるが、そういう意味では福祉を増進する部局としての対応としても、重大な問題を抱えていると言わざるをえない
 
 
*「特別控除」
・今回問題となった「特別控除」は、年収の一割(限度額あり)を控除することになっており、「ボーナス月において控除するのが望ましい」というものを「ボーナスがあるものに控除」と間違えて解釈してきたものである  
 厚生省の指導では「ボーナスのない勤労者については、毎月控除が適当な場合には毎月の均等控除もできる(別冊問答集問384)」との解説まである
 
・このことを「厚生省のあいまいな規定」として、自らの解釈の誤りを認めず、「現在は社会状況が変化したので改善する、これは規定以上のプラスアルファである」との認識で、今年より実施したものである、したがって遡及しないという
 
 
*高校生の未成年者控除未実施については「高校生は学業が本分だから」と、実施要領に定められた以外の、課長見解による個人的な考え方をもって正当性を主張していたが、誤りを認めて今年度より実施している
しかし、「当事者からの請求がない」ので、遡及しないという見解である
 
 
*「実施要領」
「生活保護法」にもとづき、具体的な生活保護の実施にあたっての基準額や取り扱い方法などを、厚生労働大臣が設定しているもので、「生活保護手帳」として編集され、各福祉事務所では業務バイブルとして、その「生活保護手帳」にもとづき業務を行っており、その内容が全国で違うことは絶対ありえないことである
 そのことを一番よく理解しているのは行政当局であり、今回もわれわれの指摘に対して、思いもよらない、いち早い改善をしてきたのはそういうことであると思われる
 また、実施要領は上級庁による監査や指導などもその内容にもとづいて行われ、不正とされた金銭を「生活保護法63条」にもとづき返還させるる根拠ともなっている
 
 
*「保護の実施機関」
都道府県知事及び市町村長により設置される福祉事務所の長が保護の実施機関とされる
一般的に「市」がある都市では「福祉事務所」を自前で設置するが、「市町村」などでは都道府県の設置する福祉に関する事務所として石川県では「中央福祉事務所」などが設置されている
 
 
*法令違反に対する被害弁済
 
・「実施要領」違反は法令違反でありその被害を弁済することが法的に求められる
 特に今回の解釈誤りは、生活保護法 「第一条(この法律の目的)この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に村し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」にもとづく目的を実現するための「第八条(基準及び程度の原則)@保護は、厚生大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銘又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。」で定めた「基準」を定めるための「通達」「通知」であり、これは法そのものとしての解釈が成り立つ部分である  したがって、法に違反した解釈により実施された時点、昭和36年もしくは38年より遡及されるものである、遡及の時効についてはその時効の訴えの内容に応じて有効かどうかが判断される
 
 
*今後、被害弁済がされない法令違反状態が続くと
 
・公務員として当然守らなければならない職務に違反するものとして、その処分がされるものと思われる

3,今回の問題点
 
 
*生活保護利用者の立場に立った行政だったか
 
・今回の発端となった方は昼夜と二度働き、しかも病気を抱えて自らも身体的苦痛を抱えながら就労指導にこたるかたちで働いてきた、また少しでも収入を増やそうと高校生も就労している
 
・市の担当者は、特別控除がないかと聞かれた際に「無い」と答えながらその制度について調べているはずである、そのなかで、市が実施していないということに疑問を持たなかったのか、昼夜働く世帯に対して少しでも収入が増え高校に通う子にも学業に専念できるように考えるべきであった
 
・当初からの話し合いで、そういった立場からの制度に対する考え方の見直しを示唆する発言はなく、これまでの自分たちの立場説明や弁解に終始しているばかりである
 
・幼い子を家に残し夜働く母親の気持ち、全国的にはそういう家庭で夜間に子どもが焼死するという事故などもあり、そういったことに対する見守りを配慮する発言はなかった
 
 
*法律の解釈について
 
・今回の事例の特別控除は「実施要領」で解明されており、この内容が生活保護手帳に編集記載されている
 
・金沢市が唯一根拠としてあげた、生活保護手帳別冊のなかの「問384」は臨時収入がないものに対しての適用を前提に回答しているものである
 
 
*福祉事務所の裁量について
 
・実施機関としての福祉事務所に裁量があると主張したが、「実施要領」に違反し保護基準額を勝手に定めるとか、運用について「基礎控除」を廃止するなどということはできない
 
・また、先に述べたように「実施要領」があいまいなどということは起こりえるはずがなく、それを理由とするならば市が上級機関にそれを正す必要がある
 
 
*誤解釈についての金沢市のありかた
 
・金沢市はこの問題について、内容を勝手に解釈し法令遵守違反の運用を何年にもわたり行っていた、いままでそのことについて気がつく機会がなかったと思われるが、一人二人の職場でなく、二十人近くの専門職が働く職場では考えられない、重大なミスである、日常的にそういったことが起きないようなシステムをつくっていたか、職場運営が問われる
 
 
*今後の対応について、金沢市に対する要望
 
・今まで生活支援課の対応を「何一つ疑わず信じてきた」該当世帯のみなさんに対し、市政の責任者が個別に真摯な態度で謝罪し、いままで受けられたであろう分の金品を一円も漏らすことなく、すみやかに追支給すること
 
・今回の二つの控除もれの他にも控除漏れや、支給すべき項目の漏れがないかについて調査し、調査結果を市民に報告すること
 
・今回の二つの控除もれについての内容・原因を調査し、今後そういったことが絶対起こらない対応策について市民に明らかにすること 
 
*今後の対応について、私たちの取り組み
 
・金沢市の判断についての県や厚労省の解釈によっては、県や国レベルでの対応が必要となってくる
 
・金沢市が法令遵守をするような取り組みも検討する必要があると思われる
 
・私たちの取り組みでも制度の仕組みを学習し、漏給が起きていないか調査する
 
・全国では他にも未実施自治体があるとのこと、県内の点検と全国との連帯の取り組みをしていく













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