HIROTAの紹介 「何でもこい」コーナー

「赤旗(新聞)1995年8月25日付」
くらし・家庭」欄

園芸

園芸研究家 斉藤 薫

バラ、秋花を楽しむ しっかり手入れし 長く楽しみましょう


 今年の残暑は例年になく厳しく、人間ばかりか庭の植物も暑さにあえいでいるようです。しかし秋の園芸シーズンも、すぐそこにきています。今回は、ちょうど秋花のためのせん定の時期を迎えたバラについて、手入れの方法をお伝えします。
 昨年二月、このコーナーで取り上げたときにのべましたように、バラは一部のツルバラを除いて四季咲きです。夏涼しいヨーロッパ諸国では六月から九月がバラのシーズンで、どちらかというと夏の花に当てはまります。歌唱由「庭の千草」の原題である「ザ・ラスト・ローズ・オブ・サマー」(夏の最後のバラ)が、その辺の事情を物語っています。
 夏暑い日本では、バラは初夏(五月中・下旬)と秋(十月中・下旬)に良花を楽しむことができます。一般に秋花は弁質や色彩、花持ち、香りが良く、春のようにいちどきに咲く豪華さはありませんが、その分長く楽しめます。

タイミングを
逃さずせん定
 秋の花を楽しむためには、何よりも、関東地方を標準にした場合、八月三十一日を中心とした前後七日ほどのあいだに(八月二十八日〜九月三日)、春以降に伸びた技をせん定してやることが大事です。そうすると約四十五日後に美しい秋のバラを咲かせることができます。このタイミングを逃さずにせん定しましょう。
 ただしせん定が少し早いと、まだ暑い十月上旬に咲いてしまいます。少し遅いと、十一月にずれ込んで蕾(つぼみ)がなかなか開いてくれません。関東より寒い地方では少し早く、暖かい地方では少し遅くせん定するように加減します。また、残暑の厳しい年には遅めに、秋の到来が早そうな年には早めにせん定するとよいでしょう。こうしたことを考慮するのが面倒でしたら、八月三十一日か九月一日におこなえば大体大丈夫です。
 せん定の方法はイラストを参照してください。全体の高さを四分の三に縮める感じでせん定します。冬季のせん定のように二分の一以下に深く切り詰めてはいけません。生育中なので、ショックで新芽が出なくなってしまいます。良花を期待できない弱小杖は元から切り捨てて、風通しを良くします。夏の管理が悪くて葉が少ししかない場合は、なるべく葉を大切にしながら良い枝のところでせん定します。

春は自然が
秋は腕前が
 せん定が済んだら消毒をしてやりましょう。ダコニ−ル水和剤(ウドン粉病と黒点病の防除薬)、スミチオン乳剤(害虫防除剤)にダニ用のケルセン乳剤を加えます。1リットルの水にそれぞれの薬品を1ccずつ加えると千倍液ができます。これを噴霧器でバラの木全体に十分に散布してやります。黒点病がひどく出ている場合には、ダコニールの代わりにサプロール家用います。
 秋は「ホソオビアシブトクチバ」の幼虫か夜の間に新芽を食い荒らしますので、毎朝見回りをして食べられた跡があれば、カルホス乳剤を散布します。技にへばりついているので、ちょつと見ただけでは幼虫を発見できません。
 せん定の前後に(なるべくせん定前のほうがよい)秋花のための肥料を与えましょう。バラ用のものがいくつか販売されているので、それを1株に30〜50グラム与えます(鉢植え場合は大きさによって5〜10グラム)。
 与えたあとはタップリと灌水(かんすい)して、発芽を促しておきます。新芽の生育が悪いようでしたら、ときどさハイポネックスの五百倍液を与えます。この追肥は十月に入ったら完全に止めないと、花がすっきりと開かなくなろので、注意してください。
 バラの花は、春は自然が咲かせ、桃は作る人の腕で咲かせる、といわれています。やはり日ごろの手入れと愛情が肝心のようです。


メッセージの送り先: ksk@po.incl.ne.jp

HIROTAの紹介

ホーム