馳浩の古典こらむ

 やすらはで
 寝なましものをさ 夜ふけて
 かたぶくまでの 月をみしかな

赤染衛門(あかそめえもん)
生没年未詳
『後拾遺和歌集』恋二所収


 低迷する株価に対して、政治の側からの口先介入が盛んになっている。とりわけ企業の経営者にとっては決算期にあたるこの3月を乗り切ることが、ひとつのハードルに、なっている。株価が高くなることによって資産の含み益は自然と上がり、赤字をそれだけ計上しなくて済むことになるわけだ。

 金融機関は4月からはじまる金融ビッグバン(規制緩和、自由競争)を控えて貸し渋り体質をなかなか改めようとしない。資金繰りの苦しい企業経営者にとってせめてもの救いが株価の高値安定なのである。

 株価とはまさしく市場経済の好不況を占うバロメーター。本来ならば政治が口を出すものではないのだが、敢(あ)えて口先介入をしなければならないほどの不景気だということだ。

 平成10年度予算が衆議院で成立したのを機に、ますます与党政治責任者からの発言は勢いを増している。『特別減税の延長も視野に』『10兆円規模の財政投人を』『公共事業の前倒しを』『アジア経済の建て直しのためには日本の内需拡大を』などなど。しかし、狼(おおかみ)少年ではないが、なかなか実行に移せないだけに、株式市況はずっと目をこらしてため息をついているという現状。

 この歌は『嘘(うそ)だとわかっていたらためらわずにさっさと寝てしまったのに。あなたの言葉を信じたばっかりに今か今かと期待して訪れを待っていて、とうとう夜もふけて西の山に傾く月を見てしまったよ』という意味。

日本経済が傾く前に、株価を回復させ、有効な政策を打たなければならない。

有言実行。


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