馳浩の古典こらむ

 朝顔に
 釣瓶
(つるべ)とられて      
 もらひ水

 加賀千代女(かがのちよじょ)
1703〜1775
『千代尼句集』所収


 スハルトに政治とられてもらひ金

 少々ことばは悪いけれど、インドネシア経済の現状を端的に表現するとこんな川柳になってしまう。76歳と高齢のスハルト大統領が対立候補もなく7選を果たしてしまったことに、国内外から疑問の声が多数あがっている。

 タイの通貨、バーツの下落がインドネシアの通貨、ルピアの下落に連動して一気に東南アジア地域の経済が悪化した。IMF(国際通貨基金)がインドネシアの経済政策に介入し、構造改革を条件に融資に踏み切ったにもかかわらず、当の政策責任者であるスハルト大統領が介入に拒否の表明。そのスハルト氏がすんなりと大統領に選ばれて向こう5年間政権を握るのであるから、経済改革に期待できないと判断せざるを得ない。国際投機筋の短期性外資がインドネシアから引き上げてしまうのは当然で、さらに経済を悪化させている。再建どころではない状態に、インドネシア国内では学生や民衆を中心に反スハルトデモの集会が開かれて小競り合いが続いている。内紛の危機だ。

 いかに政治と経済が連動しているかの反面教師が今日のインドネシアなのである。スハルト一族による政治経済の支配が進めば、批判勢力は拡大すること必至。政治暴動に発展することは目に見えている。IMFや日本、欧米からの融資を効率良く使い、貧富の差を少しでも縮小し、経済を立て直してもらいたいものである。そのためには何よりも政治の発想転換が必要。

健全な批判勢力の台頭に期待したい。


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