馳浩の古典こらむ

 雪しろき          
 高嶺にいでて
 春の月

関 成美(しげみ)
1926〜
『かびれ』所収


 季節は、暦の上ではもう春。しかしアルプスの山々に囲まれた長野県では白銀の上で熱きオリンピックの闘いが展開されている。

 前半戦で日本チームに2つの金メダルがもたらされ、国民は感動と感謝と驚きの心持ち。

 まずは、スピードスケート男子500メートルの清水宏保選手。本命中の本命と言われ、重圧も大きかっただろうに、一回目、二回目ともにトップのタイムで圧勝。亡き父の夢であり、家族全員に支えられてのオリンピックでの金メダル。彼の努力と根性とそれを支えたスタッフのがんばりに深く感謝したい。夢は努力すれば実現できるんだということを教えてくれた。たくさんの子どもたちに勇気と感動を与えたことだろう。

 そして伏兵の中から飛び出して金メダルに輝いたヒロインは、スキーモーグル女子の里谷多英選手。切れ味鋭いターンと高いジャンプ、スピードに乗ったリズム感のある滑り。競技後の無邪気な笑顔とは不釣り合いの堂々たる金メダルである。素直に驚かされた。

 表彰式では、高くそびえるアルプスの山々に、まるで春の満月が昇ったかのように、頂点に日の丸の日本国旗が掲揚された。私も大声で『君が代』を斉唱し、我が事のように2人の勝利の余韻のおすそ分けをいただいた。

 この日が来るまでどれだけの汗と涙を流したことだろう。その姿を天上の神様は見逃さずにいて、金メダルというごほうびを下さったのだろう。スポーツは、夢と感動の宝箱だ。

                   


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