馳浩の古典こらむ

 風をいたみ
 岩うつ波の おのれのみ
 くだけて物を 思ふころかな

源重之
生没年不明
詞花和歌集所収


 
 結婚している男性が、女房以外の女性と恋仲になってしまうことを不倫という。お互い合意の上の関係で、決して他人にその関係を知られないようにつきあっていれば、人のうわさにもならずそのまま深く静かに進行して行く『究極の恋愛のカタチ』と言われたりする。ところが、ひとたび二人の間柄が女房にバレてしまうと離婚のタネになったり家庭内騒動というとんでもないことになる。さらに男性が有名人であったり、社会的に重要な地位を占めたりしていると、事件は家庭内のモメ事ではなく、一大スキャンダルとして社会に動揺をもたらすことになってしまう。もちろん、それほどハイリスクを冒すからこそ、不倫の果実は甘いのであるのだろうが。

 アメリカのクリントン大統領の一連の女性スキャンダルがまさにこの実例である。今では『フリントン大統領』などとからかわれる始末。下半身のしまりのなさが人格にまで波及し、大国のリーダーの地位まで追い落とそうとしているのだから笑い事では済まない。渦中の女性たちに比べて当事者のクリントン大統領ときたら追いつめられてオロオロしっ放し。大きな声じゃ言えないが、秘(ひそか)に『お気の毒に』と同情している世の男性は数多いことだろう。

 この歌は『風の吹くのが激しいので岩打つ波がぶつかっては砕け散っているように、相手の女性は岩のようにケロッとしていて私だけが砕け散る波のように物思いに悩んでいる今日この頃(ころ)である』という意味。

 さて、クリントン大統領は本当に砕け散るのでしょうか。


[戻る]