馳浩の古典こらむ

 鶯の             
 いくつも捨てて
 初音かな

仙石廬元坊
せんごくろげんぼう
1688〜1747
俳諧百一集所収


 新春に初めて聞く、うぐいすの『ほうほけきょ』という鳴き声は、私たち日本人の心を和ませてくれる風物詩。しかし、1998年の日本の政界は、新進党解体、そして六分裂といういささか耳苦しい鳴き声で始まった。

 ここ数年、年末年始に野党が分裂し、新党が雨後のたけのこのように誕生しては消えて行く運命をたどっている大きな理由の一つは政党助成金の分配。国民の皆さん一人あたりおよそ250円の割り合いでいただいている政党助成金は、毎年1月1日の時点を基準にして5人以上の国会議員の所属する政党に分配されることになっている。政策、理念があって新党が誕生するのではなく、まず5人以上の頭数を揃(そろ)えて仲間作りをして助成金を確保するところからスタートしていることに問題がある。このままでは自由民主党の一人勝ちは目に見えている。衆議院の小選挙区制は、政権交代可能な二大政治勢力の下に、お金のかからない政治、選挙をすることを目指していたはずなのに、このまま野党が細分化されてしまうようでは日本の国にとっても損失である。健全な批判勢力、いつでも政権交代可能な政治勢力として政治に緊張感を保ち続けるためにも、野党の結集は必要なのではなかろうか。

 この句は『うぐいすは自分ののどを試すかのように鳴きかけてはいくつもその声を捨てて、ようやくほうほけきょと初音らしい鳴き声をあげたよ』という意味。

 野党全体の本当の意味での年明けの初音は、一体いつのことか。


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