馳浩の古典こらむ

 あかねさす           
 紫野行き標野行き
 野守は見ずや君が袖振る

額田王
生没年未詳
万葉集巻120


 人間関係数ある中でも三角関係ほどダイナミックなものはない。こちらを立てればあちらが立たず。かといって両方立てれば総スカンを喰(く)うのだから困りもの。郵政三事業の民営化をめぐる議論の行方もまさしくこれと似たようなところがあろう。

 小泉純一郎厚生大臣は、『行革会議の打ち出した民営化の方向に省庁再編の結論がまとまらなければ閣僚でいる意味がない。辞任する』と息まいているし、自由民主党の山崎拓政調会長や郵政族議員や武藤嘉文行革本部長たちは『国営維持』を打ち出している。間に立っているのが橋本龍太郎総理大臣という図式である。

 省庁再編を成し遂げて行政改革のはっきりとした道筋をつけるのが橋本内閣の最重要課題。この問題では、ムダな官の役割りを減らすためにも第二の予算と言われる財政投融資制度は見直しが不可欠。その財投の原資となっているのが郵便貯金や簡易保険で集めたお金。ここを改革しなければ行革の実もあがらないというのは衆目の一致。

 ところがそこから先は既得権益のナワ張り争いで遅々として議論が進まないわけだ。

 この歌は『そんなに人目もはばからないで、愛情表現の証(あかし)である袖(そで)を振らないで下さいよ。野の番人に見つかるではありませんか』という、一人の女性をめぐる三角関係を想(おも)わせる歌。

 民営化の袖を振っているのが小泉厚相。野の番人は国営維持論者。二人の間で困っている女性が橋本総理という三角関係。さて果たして行革は三角関係解決のキーポイントになるのでしょうか。


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