馳浩の古典こらむ

 朝皃(あさがほ)の            
 命は其日
 其日かな

井上井月
(せいげつ)
1822〜1887
 


 テレビの夜のニュース番組は毎日が真剣勝負。その日あったことを正確に報道し、多くの国民に情報をわかりやすく共有してもらうことによって世論を形成する役割を果たさなければならない。視聴者層は主に家庭。となるとニュースを伝えるキャスターの人選には、国営、民放を問わず各放送局はしのぎを削る。

 草野満代さんが満を持して「ニュース23」に登場した。NHK退局の際にミソをつけてしまっただけに、彼女の一ファンである私は汚名返上とばかりに活躍するであろう彼女の仕事ぶりに注目している。まだ一週間しか放送をチェックしていないが、ちょっとガッカリしている。多分に制作側の失敗だと思うが。

 彼女はNHKでスタジオ司会者だった。その表現力の正確さと仕切りの歯切れ良さが好きだったのに、「勘違いしてんじゃない?」と思えるのだ。初日のマザー・テレサ国葬リポート企画は、まるでタレント扱いの陳腐な映像で、「インドの今の何を伝えたいの?」と疑問を持った。番組の最後で彼女は「きょう、バージョン・アップの一日目どうでした?」と、してはならない発言もした。バージョン・アップかどうかは見ているわれわれが判断すること。送り手が押しつけがましく問いかけるものではない。制作スタッフの、彼女を売り出して他番組と差をつけようという意図が彼女にも乗り移ったかのようで見ていて不愉快。

 ニュースはその日その日が花を咲かせ命を終える朝顔のようなもの。インタビューや現場リポートの正攻法で勝負してもらいたい。


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