馳浩の古典こらむ

 目出度さも               
 ちう位也
 おらが春

木喰上人五行
1718〜1810


 この句は『おらが春』巻頭の句で、巻尾の「ともかくもあなた任せのとしの暮」と照応させている。句意としては、新春を迎えるにあたってめでたさが中くらいであることにむしろ満足している。それを超えた上位を望む気はさらさらない。なぜなら「あなた任せ」の自足の心境だからである、といったところ。

 自由民主党の二年に一回の総裁選が行われ、橋本龍太郎氏が無投票再選を果たした。
 そして新たな執行部人事も決め、これからの政局に挑もうとしている橋本総裁の心境は、まさしく『目出度さもちう位』であり『あなた任せ』の姿勢ではないかと思う。

 なぜなら、六大改革の道半ばであることを考えると、総裁二期目に入ったとてそれを手放しで喜んでいられる場合ではないということ。そうかといって自分を取り巻く環境に不満かというとそうではなくむしろ『あなた任せ』に安心している、といった様子。

 改革は一人ではできないのはあたりまえ。党内や11日に決まった新しい改造人事の閣僚に支えてもらうことになる。今回の人事で橋本総裁は自らの強い意向を示しすぎると保保派と自社さ派のバランスを崩すことになってしまうため、『あなた任せ』で両派の緊張関係を維持したといえよう。これによって盤石の体制を築きつつあることに満足しているのである。

ただ、任される方の加藤紘一幹事長は集中砲火を浴びてたまったものではないが、組織のナンバー2の役割としては致し方ないところ。盤石の政権で国のカジ取りをされることを願うばかり。


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