馳浩の古典こらむ

 一声や               
 千万人の
 ほととぎす

 内藤 露沾
1655〜1733
六百番誹諧発句舎


 ヒーローとは何だろう。アニメ、スポーツ、映画、アイドル界と、それぞれの世界のワクを超えて広く一般社会に訴えることのできる主張を持ち、かつ魅力あふれるキャラクターを兼ね備えていてこそヒーローと呼べるのではないだろうか。人は誰(だれ)でもヒーローにはなれないので、傑出した才能を持つヒーローにあこがれと夢を抱くのである。

 さて、そのヒーローも日本とアメリカの描くヒーロー像に少し差があるようだ。

 それはヒーローに求める要素ではなかろうか。日本で代表的なウルトラマンは、敵を倒すためには街中で大暴れしてビルをこわしたりしても許される。圧倒的な権力の誇示のシンボルが日本でのヒーローの描かれ方。ところがアメリカで強調されるのは弱者へのいたわりやチャリティーやボランティア活動を熱心にするヒーロー。先日映画「バットマン&ロビンMr・フリーズの逆襲」のキヤンペーンで来日したアーノルド・シュワルツェネガーもその一人。片や画面では圧倒的なパワーと超人的活動をするにもかかわらず、こども施設への寄付をしたり橋本首相との懇談で「政治は最高のボランティア活動」と発言したり、きっと自分の及ぼす社会的影響を自覚しているからであろう。

 この句は「ほととぎすの鳴き声が聞こえた。その一声は千万人もの人が待ち望んでいて喜ぶ声である」の意。

 たくさんの人に待ち望まれ、喜ばれるヒーローの出現こそ、社会を明るくするのではなかろうか。これからの日本のヒーローは誰だろう。


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