馳浩の古典こらむ

 まるまると            
 まるめまるめよわが心
 まん丸丸く 丸くまん丸

 木喰上人五行 もくじき
1718〜1810


 世の中、人間関係がいちばんやっかい。こどもたちのいじめ問題にはじまって、学校、地域社会、会社とあらゆる場面において他人とのつきあいがうまくいくかどうかによって居心地が良いかどうかが違ってくる。

 円滑な関係をつくりあげるには2通りある。徹底的に話し合い、ぶつかりあい不満や道理をぶつけあって結論を導き出すこと。もうひとつは、まず結論があって、そこに到達するためのプロセスについては水面下で打ち合わせてしまい、周囲に波風を立てないように処理してしまうこと。いわゆる事なかれ主義。

 今回の野村証券と第一勧業銀行をまき込んだ総会屋への利益供与事件を検証してみると、日本人社会における事なかれ主義が遠因となっているような気がしてならない。企業にとっては株主総会を円満に乗り切ることが結論。そのためには目の上のたんこぶとなる総会屋との人間関係は穏便に当たり障りなく納めておく必要がある。自然と利益供与という犯罪が悪しき前例ではありながらも暗黙の了解となってゆくわけである。丸くおさめようとするプロセスが時には法律を犯すという実例だ。

 この歌は「心をまんまる丸くおさめよ」という意味。
 野村証券や第一勧銀の役員は、総会屋との関係をまんまる丸くおさめようとして犯罪の道を選んでしまった。事は商法違反の罰則を強化することではなく、円満に何事もやりすごそうとする体質を改めることである。そのみせしめのためにも、利益供与に絡んだ者は厳罰に処してもらいたい。


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