馳浩の古典こらむ

 竹の子や            
 あまりてなどか
 人の庭

 大伴大江丸
1722〜1805
 


 英国において下院議員の総選挙が行われ、労働党が圧勝した。総議席の3分の2近い418議席を獲得したのであるから、まさしく雨後の竹の子のような勝ち方と言えるだろう。
 その勝因を分析してみよう。
 まず労働党党首にして、新しい首相に任命されたトニー・ブレア氏のキャラクターと党改革の成功が特筆される。
 弁護士出身にして情熱的な論客であるブレア氏は、常に保守党のメージャー前首相に攻撃的に論戦を挑み、非難しまくった。パフォーマンスと言われようともその意欲的な姿勢と政権批判は、現状に不満を持つ国民の多くの共感を呼んだ。そして保守でも革命的でもない中道路線をとったこと。
 福祉・教育分野への厚遇を公約としたことである。国民は大きな変革には不安を感じるが、社会保障政策と人心一新には共鳴するということだ。
 そして完全小選挙区制度と女性候補者の大躍進である。二大政党による小選挙区制では、ムードによって雪崩を打って票が動くということの証明であり、女性候補が福祉と教育の重要性を訴えると、「情」を動かす原動力となるということである。

 この句は「竹の子がまぁ、勢い余って人の庭になんか顔を出したよ」の意味。

 ブレア氏の作戦勝ちによって労働党が勢い余って思わぬ大勝ちをしたと評することのできる今回の英国総選挙。「若さ」と「中道」と「女性」と「ゆるやかな変革」がキーワード。さて、ブレア新政権の今後やいかに。


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