馳浩の古典こらむ

 世の中は             
 三日見ぬ間に
 桜かな

大島 蓼太 おおしま りょうた
1718〜1787
蓼太句集


 一雨降るごとに春も深まっていくように、ニュースターが現れるたびごとに時代の成熟度も深まってゆく。
 その象徴がタイガー・ウッズのマスターズでの活躍であろう。まさしく新時代到来。二十一歳での最年少優勝。18アンダーというトーナメント記録。12打差という最大ストローク差。あらゆる記録をぬり変えてしまった。
 彼の出現は、ゴルフファンでもそうでない人たちに対しても、強烈な印象を与えていることだ。ひとつには有色人種であること。アメリカ国内ではいまだにタイガー・ウッズのプレーできない(つまり有色人種お断り)ゴルフ場が二十数ヵ所ある。世間の偏見を超人的なプレーによって打破しようとしているところに人気の一端がある。
 もうひとつは、ゴルフの概念を変えたこと。
 320ヤードを超すドライバーショットにより、2打目はショートアイアンでグリーンを攻めることになる。オーガスタのガラスのグリーンを点で攻めるのだから、スコアは他の選手とは段違い。驚異的なパワーと完璧(かんぺき)な技術を事もなげに実現してしまうタフな精神力。
 まさしく時代に花開いたスーパースター。

 この句は「世の中は、三日外を見ない間に桜が満開になるように、転変常ならないものである」という意味。

 いつの日か、タイガー・ウッズを打ち負かすスターは現れるのであろうが、それまでは彼のスター性とゴルフ技術をたん能していたい。彼と同時代に生きていることに感謝したい。


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