馳浩の古典こらむ

 ひさかたの           
 光のどけき 春の日に
 しづ心なく 花のちるらむ

 紀 友則 きの とものり
生没年未詳
古今和歌集


 いよいよ四月一日から消費税が三%から五%に引き上げられる。国民の義務として納税は当然の行為ではあるが、心情的な問題は残る。私も国会議員のはしくれとして国民のみなさまに頭を下げて引き上げをお願いする立場であるけれども、いくばくかのうしろめたさを感じているのは紛れもない事実。
 加えて平成九年度国家予算においては医療保険制度の改正による国民負担の増加や、特別減税の打ち切りも盛り込まれており、より一層のプレッシャーを欠けているのではないかと心の落ち着き所がない。
 高齢者人口の増加による年金受給者の増加、老人医療費の増加などの現実を見るにつけ、それ相当の国民負担を各世代に公平にお願いしなければならないのだが、その横で公務員や政治家の不祥事(官官接待、岡光事件、オレンジ共済など)が続発しており、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。加えて消費税には益税(集めた消費税が事業主のふところに入ってしまうこと)問題や便乗値上げの問題もある。私はじっと耐えてこの流れに身を委 (ゆだ)ねなければならないと覚悟している。

 この歌は「日の光のうららかさにさす春の日に、どうして落ち着いた心もなくそんなに桜の花は散るのだろう」

 私には、散る花びらが、財布の中から消費税として消えてゆく一円玉に思えて仕方ない。この消費税の花びらを、社会生活のために還元するのが私たちの役目。まさしく「しづ心ない」のは政治家も同じ心境である。


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