馳浩の古典こらむ

 花の色は
 うつりにけりな いたづらに
 我が身世にふる ながめせしまに

小野小町
生没年未詳
『古今和歌集』所収


 近くて遠い国、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)。日本海をはさんでおとなりの国であるのに、いまだに日本とは国交が正常化されていない。

故に、政治、経済、教育、社会体制などあらゆる国情が明らかにされておらず、お互いに理解し合えていない関係にある。

 私は、一日もはやい日朝関係の正常化と朝鮮半島の平和的統一を願う一人であるが、その願いに暗雲をたれこめる事件が起きた。

 朝鮮労働党のファン・ジャンヨプ書記の韓国への逃亡問題である。

 彼が体系付けた主体(チュチェ)思想は、北朝鮮の国家体制を根底から支える思想である。また、彼は政治的には外交を担当する要職にあった。国家を担ってきた人物の突然の亡命申請の真実は知る由もないが、報道によると彼が築きあげた主体思想と現行の金正日(キムジョンイル)書記体制との路線の違いや食糧難が挙げられると言う。私たち日本人が想像している以上に北朝鮮の内部体制にズレが生じているのである。『思想』は国家の存立にかかわる課題だけに、この亡命問題が南北間に不測の事態をまねかないように祈るばかりである。

 この小町の歌は「花の色(姿・形)もすっかり色あせてしまったなぁ。

ぼんやりともの思いを続けている間に・・・・」という『女性の嘆き』を詠んだ歌。さて、すっかり色あせてしまったのは、主体思想なのかファンジャンヨブ氏なのか、それとも社会体制なのか。日本としてはその真実を見きわめる必要がある。平和的に解決されることを願う。


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