馳浩の古典こらむ

 春風や              
 闘志いだきて
 丘に立つ

 高浜 虚子
1874〜1959
「五百句」所収


第69回選抜高校野球大会の代表校が出そろった。昨年の秋季地区大会の成績を判断材料としながら適正な基準で代表が選ばれている。私の母校、星稜高校が10回目の出場を決めたこともうれしいが、高校野球ファンの一人としては、近畿ブロックから選ばれた日高高校中津分校の活躍に期待したい。

 少子化時代を迎える高校スポーツ界にとって、選手強化や地域振興の一環としてのクラブ活動のあり方を見直しさせるお手本となるべき快挙だからである。

 山あいの閑村に野球部が発足したのは1984年。高齢化の進んだ村の人口は当時最盛期の5干人から約半分に落ちこんでいた。何とか村の活性化をしようと白羽の矢が立ったのが、廃校寸前の野球部の再興であった。

 部員5人。24連敗からのスタート。だが、村の後援会は年間約5百万円の運営費を出し続けた。元縫製工場を寮に提供。専用グラウンドも村営で造り、提供した。選手たちは自主管理で寮生活を過ごしてチームワークを養い、村人に感謝の心を忘れずに練習に励んだ。

 まさしく、野球部を通して村が一つになり、村人に元気がよみがえった。

選手たちはスポーツを通じての感動の共有、仲間意識というかけがえのない宝物を手に入れたのである。

 甲子園を目標に努力した村人と選手には拍手を送りたい。と同時に、スポーツが果たす役割は大きいということも再認識したい。

 山の「春風」が甲子園に「闘志」を運んでくれたことに感謝しよう。

                  


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