馳浩の古典こらむ

 鳴く蝉(せみ)
 手握りもちて その頭
 をりをり見つつ 童
(わらべ)(は)せ来る

 窪田空穂(うつほ)
1877〜1967
『鏡葉』より


 たまごっち、ってご存知?

今ちまたの女子高校生を発信元として大流行の携帯ゲーム機。

 キーホルダ型。液晶画面に卵がポコッと現れた五分後、卵から孵(かえ)ってたまごっち誕生。

 この、なぞの生物たまごっちを育てるのがゲーム。上手に育てないとグレちゃったり死んでしまったりするので、飼い主の育て方かゲームに反映される楽しみがあるそうな。

 たまごっちは自分の要求を電子音で知らせてくる。つまり鳴くのであって、そこがまた可愛(かわい)がられる人気の秘密。女の子たちはたまごっちを自分の熱意で思うがままに育てることによって、「私もいつかはこうして本当のこどもを育てるのよね」と、育児を実感するんだそうな。なんせたまごっちは画面の中でウンチをするはグレるとくちぱしが出るはさみしいと『遊んでー』と鳴くはで大騒ぎ。ゲームに熱中してしまう気持ちもわからないではない。しかし、しかしである。富山県の田んぼで風と大地と共に育った私は疑問を感じる。こんな機械相手のバーチャル(仮想)ゲームぱっかり流行(はや)ってしまって、こどもの情操教育にとって不可欠な人間関係のぬくもりが忘れ去られてしまうのではないか、と。

 この歌は蝉を手に持ってその頭を時々見ながらわくわくして走ってくるこどもの様子を表現している。

 たまごっちを持って走るこどもなんて私は見たくない。だって蝉には『リセット』なんてないのだから。・・・・と言いつつも、私も一回はたまごっちやってみたい。

どっかに売ってない?


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