馳浩の古典こらむ

 散りぬとも
 香をだにのこせ 梅の花
 恋しきときの 思ひいでにせむ

   読人しらず
『古今和歌集』
巻第一・春歌上より


 離婚しちゃったのである。江角マキコさん。結婚生活はわずか九ヵ月。まぁ、この期間が長いか短いかどちらか、と言えば、一般的には圧倒的に短い。スピード離婚。会見でのコメントを聞いてびっくらこいたおばさんたちも多いと思う。

『仕事をもっと一生懸命やってステップアップして行きたい』

『彼が求めるあたたかな家庭をかなえてあげられない』

『これからも友だち同士でいたい』

 おいおい、なめんなよ、と言いたい。そもそもあなたは結婚を単なる『同棲(どうせい)』と考えちがいをしていたのではないか。十分な話し合いをした上での人生設計、生活設計をせずに結婚という甘い言葉とまやかしの幸せにあこがれて入籍してしまった軽薄結婚と言わざるを得ない責任のなさ。こんな女性が卜レンディードラマの人気女優なのかと思うと、日本の倫理はどこへ行ってしまったのかと嘆かわしい。人間関係のうすっペらさは、とうとう結婚形懸にまで汲んでしまったのか。ま、かすかに救われるべきは、別れた夫とは友だちとしてつきあいます、との一言。みにくい修羅場を演じてくれなくて良かったかな、ってとこ。

 この歌は、複雑な女心の江角さんに贈りたい。「花(結婚生活)は散ってしまおうとも、せめて香り(友情)なりとも枝に残しておいてくれ。梅の花(情(なさけ))が恋しくなった時には、それを思い出のよすが(頼り)にしたいから」。

花も結婚も、散るのは惜しい。


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