馳浩の古典こらむ

 蕭条(しょうじょう)として   
 石に日の入る
 枯野かな

  与謝蕪村
1716〜1783
『蕪村句集』所収


 薬害エイズ問題やO-157問題で国民の信頼を大きく失った厚生省。

国民の健康と福祉と衛生を預かる役所の不祥事なだけに、事はモラルの問題にまで発展した。ところがその厚生省に、あろうことか現職の事務次官が福祉法人理事長とのゆ着という疑惑が発生。マスコミに大きくこの事件が報道されるやアッという間に次官の辞任という展開にまで発展。この理事長は、厚生省の元課長補佐への贈賄容疑で逮捕されており、その供述次第では厚生省の局長クラスを巻きこんでの疑獄事件に広がりそうなのである。

 一体、この国の官僚に『国民に奉仕する公僕』としての自覚はあるのだろうか?と考えさせられる。薬害エイズ事件では、患者の生命よりも、製薬業界との利益供与が優先され、O-157問題ではいまだに真相解明と対策が十分に取られていない。常に謙虚に反省して仕事に取り組まねばならない時に、よりによって官僚の最高責任者の絡んだ贈収賄事件が起きるなんて、全く信じられないこと。

 この句は「ほんとうにものさびしい様子で、石のゴロゴロしている枯野に、冬の日が沈んで行く」という意味。まさに現在の厚生省は日が沈んだ枯野の状態か。

 厳しい世論の目が注視している中、決定的な事件を起こしてしまった厚生省。

 小泉純一郎という鳴り物入りの大臣を迎えたばかりなのに、そのスタートを汚してしまったことは事実。ぜひ小泉大臣の強いリーダーシップで、厚生行政の信頼回復にまい進してもらいたい。


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