馳浩の古典こらむ

 白鳥(しらとり)
 哀しからずや 空の青
 海のあをにも 染まずただよふ

 若山 牧水
1885〜1928


『沖縄は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ』

 と書いてみれば、日本国中の人がドキッとするのではないだろうか。

 日米安全保障条約は大切だ、と言いながらも、米軍基地が自分の住んでいる街にやってくることは本土の誰(だれ)もが遠慮している現状。

 沖縄県には、日本にある米軍基地の75%が存在している。とどろく戦闘機のごう音。ゴミ処理問題による大気汚染や水質汚濁。一部の心ない兵士による婦女暴行などの犯罪の発生。これらすべての負担が沖縄県民全員の心に積み重なっていることに、はたしてどれだけの本土の人間が心を痛めてきたというのか。そして少しでもそれを解消するために知恵を出し、苦労を分かち合おうとしてきたというのか。

 戦後50年たっても変わらぬ『占領』状態に対して、遂に県民の慣まんが爆発したのが、『県民投票』の実施なのである。日米地位協定の見直しと、基地の整理、縮少に賛否を問うたこの投票は、確かに法的拘束力を持たない。また、質問の設定も一考を要すると言えよう。

 しかし、これまで政府の言いなりのままに従ってきた沖縄県民の心情を察してあげなければいけない。この県民投票の結果に対して真摯(しんし)な気持ちで取り組むことが、日本という国の将来を本気で考えるスタート地点となるはずである。

 県民投票は、米軍基地やアメリカに対して向けられたのではない。日本人の心に対して向けられた質問なのである。沖縄をただよわせてはいけない。


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