馳浩の古典こらむ

 振り放(さ)けて
 三日月見れば 一目見し
 人の眉
(まよ)引き 思ほゆるかも

 大伴 家持
717〜785
『万葉集』(巻6 994より)


アムラー、である。皆さんご存知?

 出す曲すべてがミリオンセラーとなっている、沖縄出身の歌手、安室奈美恵ちゃん、19歳。その彼女のファッションやライフスタイルを真似(まね)ている女の子を、『アムラー』と呼ぶのだそうな。コギャル(女子中高生)の間では今やカリスマ的大人気。

 サラサラストレートロングヘア。茶髪。スリムなウエスト。ヘソ出しルック。サテン地のシャツ。そして何よりも特筆すべきは、チョー極細で切れ長の眉(まゆ)。この、アムラー風眉毛を描きあげることによって、そこら辺のコギャルも立派なアムラーもどきに変身するのだそうである。そのために、わずか15〜16歳の女の子たちは、親からもらった大切な眉毛を毛ヌキで抜いたりカミソリでソったりするそうな。また最近では、通信販売で、『あなたもアムラーになれる分度器』を売っていて(バカ売れ中)、この分度器に沿って眉毛を描くと、アラ不思議、彼女と同じ角度の眉毛ができあがっちゃうそうな。

 我(わ)が国でも眉は女性の化粧のポイントで、黛(まゆずみ)を付けて強調して描いていた。眉がかゆくなるのは想(おも)う人に逢(あ)える前兆という習俗もあったことから、おそらく眉には霊が宿っているとも思われていたのだろう。そういえば、マンガでも眉の描き方で表情が変わるもんね。

 さてこの歌は「夜空を振り仰いで三日月を見れば、ただ一目見たあの人の美しい眉が想われてなりません」と、初々しい恋心を詠んでいる。

 コギャルたちも、せいぜいくっきりしたアムラー眉毛を描いて、チョベリグな恋を楽しんでもらいたい。


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