馳浩の古典こらむ

 壁の新聞の     
 女はいつも
 泣いて居る

 尾崎放哉
1885〜1926


 去る7月12日、英国においてチャールズ皇太子とダイアナ妃の離婚決定発表があった。

 正式な法的確定は8月28日とのこと。

 慰謝料は29億円。離婚後、ケンジントン宮殿住まいは許されたが、妃殿下『ハー・ロイヤル・ハイネス』の称号は剥奪(はくだつ)されることに。離婚後に結婚生活のことは口外しないように、といろいろ条件をつけられての離婚成立。

 世紀のロイヤルウエディングも、こういう結末を迎えてしまっては色あせるばかり。

 チャールズ皇太子に至っては、この正式決定をさっそく不倫相手のカミラさんに連絡をとったとのこと。まさしく『愛のある不倫と愛のない政略結婚』の典型的パターン。

 英国民の王室を見る目は、『尊敬』をとうに通り越して『落胆』『恥奪』以外の何物でもないという。

 さて、さまざまな離婚条件の調整が済み、決定してせいせいとしているかと思いきや、ダイアナ妃は情緒不安定気味。これ幸いとターゲットにしてまとわりつくマスコミの面前でいきなり泣き出し、

「オー、プリーズ。ドント、チェイス、ミー。(お願いだから追っかけないで)」と懇願したという。女性として一つの愛を成就できなかったことの無念さが言わせた一言だろう。国民に対する申し訳なさもあったろう。

 新聞の一面に大きく映し出されたダイアナ妃の泣き顔を見て、チャールズ皇太子は何を想(おも)うだろう。

 彼女の心中を思いやるためにも、ぜひとも彼の寝室の壁に、彼女の泣き顔の載った新聞をはりつけておきたい。


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