馳浩の古典こらむ

 ほととぎす
 汝
(な)が鳴く里の あまたあれば
 なほうとまれぬ 思ふものから

読人しらず
「古今和歌集」より


 言行不一致は友だちをなくす。あちらにもこちらにもと相手の顔色をうかがって取り入り、言ってることとやっていることがチグハグになってくると、しまいにはどちらからも相手にされなくなるものだ。

 新進党の船田元さんのことである。

 新党さきがけ代表幹事の鳩山由紀夫さんがぶちあげた新党構想。政策が表に出ず、『愛』という理念、イメージばかりが先行して実体が見えてこない構想である。その新党論議の中心には当初から船田さんの存在がチラつき、『船田さんが動いて本格的な政界再々編か?』と、永田町のセンセイばかりでなくマスコミ雀(すずめ)をもおどろかせていた。

 ところが、新進党離党の動きを見せるどころか、次々と難クセをつけて鳩山さんとの距離をとりはじめてしまった。『村山富市さんや武村正義さんが参加する新党には参加できない』とか、『集団的自衛権の行使をはじめ、安保論議についての政策で協調できなければ一緒にやれない』とか言って溝を深めている。かと言って新進党の結束を強化するために努力しているかと言うと、そうでもないようだ。

 この歌は『ほととぎすよ。お前が行って鳴く里が多いものだから、私はお前を愛してはいるけれど、自然とイヤになってくるよ』と、恋の相手の浮気心をほととぎすにたとえて詠んだもの。まさしく船田さんの調子良さを鳩山さんが非難している歌と言えまいか。

 政治家は決断力こそが魅力。できないことなら最初からあちこちにいい顔しなけりゃ良いのだ。

 さて船田ほととぎす。一体どんな鳴き声を国民にきかせてくれるのだろうか。楽しみ。


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