馳浩の古典こらむ

 すずしさや             
 惣身
(そうみ)わするる
 水の音

松岡 青蘿
1740〜1791
青蘿発句集


 国会というところを季節に例えて言うとするならば、「梅雨」と私は答えたい。
 表に陰に聞こえてくる政治家の発言は、うっとうしくてあつくるしく、じめじめしていてグチっぽい。なかなかスカッとさわやか一刀両断!とはならない。いつもからだ全体をもて余し気味の暑さがまとわりついている梅雨のまっ只(ただ)中にいるようなものである。
 その国会に、ひときわ涼し気な水の音をひびかせてくれているのが菅直人厚生大臣。
 薬害エイズ訴訟問題の解決に向けて、強力なリーダーシップを発揮。厚生省の官僚や製薬会社の役員らににらみを効かせ、被害者の患者には素直に頭をたれた。建前論をふりかざす政治家が多い中、本音で国民の怒りを役所の壁にぶつけたところに清々(すがすが)しさを感じる。政治家は官僚の手先ではない。行政の監視役なのだという本質を見せつけてくれた。

 この俳句は、「暑い夏の道を歩いて来て、木陰の水の流れのかたわらに立つと、水の音が聞こえてきて、すっぽりと涼気に包まれたさわやかな気分になるよ」という意味。

 まさしく、ギトギトとあぶらぎった暑苦しい政治の世界で、菅大臣のような存在は涼気を感じさせてくれる。一服の清涼剤だ。
 ただ、その人気にあやかりたい人、仲良しのふりをしたい人、昔から友だちだったと声高に言いたい人、そしてねたむ人がいるのも政治の世界。
 ぜひ、そういう都合の良いとりまき政治家に対しては、国民のみなさんが冷水をぶっかけていただきたい。


[戻る]