馳浩の古典こらむ

 木喰(もくじき)
 けさや衣は やぶれても
 まだ本願は やぶれざりけり

木喰上人 五行 もくじきしょうにん ごぎょう
1718〜1810


 サッカーの、五輪日本代表チームが、アジア地区選考会において準優勝。みごとオリンピック出場権を勝ちとった。メキシコ五輪以来、実に27年ぶりのオリンピック出場ということで、代表チームメンバーのこれまでの努力に対し、敬意を表したい。
 中でも、今大会でMVPに輝いたゴールキーパーの川口能活選手に注目すべきであろう。
 ボールに対する天性の反射神経と、試合の流れを的確に読んで自分のポジショニングを整えるクレバーな頭脳。加えて、何よりもサッカーを愛する一途(いちず)な心に感心する。
 彼は、自分の納得のいくまでグラウンドに残り、トレーニングに明け暮れるという。チーム全体の練習時間が終了しても、コーチに志願してまで居残り特訓を続け、日に11時間もグランドに立ち続けることもザラだとか。
 目鼻立ちの整った、彫りの深い甘いマスクとは裏腹のそのド根性ぶりは、多くの少年ファンにとってあこがれの的であるとも。

 この歌の作者は、45歳の時に木喰受戒(木の実や草などを食べての修行に入ること)。
 歌の意味は、「旅をし、歳月を重ねて修行に打ちこむと、袈裟(けさ)や衣はボロボロとなる。けれども私の本願は決して破れることはない。」
 心の内面、精神力の強さを訴えている。

 なりふり構わず、自分の打ち立てた本願成就のために努力を惜しまない姿。もしかしたら、現代社会に生きる私たちがどこかに忘れてきた精神のことではないだろうか。川口選手と日本代表チームのますますの活躍を祈る。


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