馳浩の古典こらむ

 おもしろうて
 やがて悲しき
 鵜舟哉
(うぶねかな)

松尾芭蕉
1644〜1694
笈日記 おいにっき


 モラルの問われる時代となってきた。
 住専問題、薬害エイズ問題、もんじゅの事故などにおける役所や官僚の対応の不手際。
 いずれも情報公開のあり方が論点のひとつとなっている。だれの責任で、どうして問題が発生したのかという出発点での情報が明らかにされなければ、責任の所在は追及できない。結局はうやむやにされて、被害者である国民が泣き寝入りすることになるだけなのだから。公僕である官僚、国民から疑念を持たれないためにも、後ろ指さされないためにも、自らの抱えている情報をできる限りオープンにし、透明性を確保した中で仕事に励むべき。
 そんな中で起きたのが、TBSとオウム真理教の取材ビデオ問題。
 放映前の取材ビデオをオウム真理教の幹部に見せてしまったTBS。見せてしまったことを、坂本弁護士一家殺害事件後も報告しなかったTBS。このビデオ問題に関しての社内調査のあいまいさ。どの点を取り上げても疑問だらけ。報道機関としての体質。経営者、社員のモラルが問われても致仕方なかろう。視聴率至上主義や、マスコミ他社との競争意識が過度に働いてはいなかったか。あるいは社内の自浄作用は機能していたのかなど、検証すべき点は多々あるように思う。
 情報を送り出すマスコミ側も、受け取るわれわれも、もう一度情報とモラルについて考えるべき。

 皮肉と国民全員の自戒の念をこめて一句。

 おもしろうてやがて悲しきTBS


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