馳浩の古典こらむ

 よき人の
 よしとよく見て よしと言ひし
 芳野
(よしの)よく見よ よき人よく見

天武天皇
?〜686
万葉集 巻一


 今も昔も、日本人が求めるヒーロー像に大差はない。かっこ良くて頼りがいがあって、ちょっぴり泣かせてくれて、何よりも強い。
 悪者をこらしめて、弱者や困った人を助けてくれる正義の味方は、実在の人物であろうがアニメの中の架空の存在であろうが、いつ見ても飽きることがない。スカッとさせてくれる。
 現在34歳の私の永遠のヒーローは、ウルトラマン。ふつうのお兄さんが地球を守るために、次々と怪獣と闘ってやっつけてしまうその姿に、あこがれの視線を注いだものである。
 そのウルトラマン生誕30周年記念映画「ウルトラマンゼアス」が封切りされて、こどもたちに大人気、久々のヒット作品。
 今回のキャラクター、ゼアスさんは、神経質で気が弱く、ドジなガソリンスタンドのお兄さんがその正体。いざ戦闘開始となってもずいぶんズッこけて、笑わせてくれる。パーフェクトな強さでないところがまた、人間くさくて親しみが持てる。好感度大。

 万葉集のこの歌は「いにしえの善い人が良い所だとよく見て、素晴らしいと言った吉野の地を、今の良い人よ、よく見よ」という意。

 まさに、昔の人に学び、素晴らしいものに対して目を開いてその真実を学びなさい、ということ。ウルトラマンに学べ、である。
 映画の世界ではあるが、ヒーローはいつまでもヒーロー。その存在意義を学ぶことによって私たちは心の中に「生き方の美意識」をつくりあげるのである。日本人の美意識はウルトラマンにあり、だ。


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