馳浩の古典こらむ

 わが恋は
 行方
(ゆくえ)も知らず果(はて)もなし
 逢
(あ)ふをかぎりと思ふばかりぞ

凡河内躬恒 おおしこうちのみつね
生没年不明
古今和歌集 恋歌二


  キムタク、今や社会現象である。
 ご存知ない方のために言うならば、SMAPという若い男の子6人組のアイドルグループの一員。テレビにラジオにコマーシャルにと、そりゃもう超の字のつく人気者。
 十代の女の子ばかりでなく、オバサンたちにまでかわいがられるほど。母と娘が一緒になって、「キムタク、カッケェー(木村拓哉くん、かっこいーの意)」と叫んでそりゃもう大騒ぎ。
 その彼が、口紅のコマーシャルのイメージキャラクターに起用され、マスコミを騒がせている。
 ふつうならば女性を起用すべき商品であるにもかかわらず、キムタク、なのである。
 つまり、この口紅をつけていれば、キムタクのような男の子と「キス」なんてことになっちゃったりして、うふふ、てなコンセプト。
 彼のポスターが街中に張り出されるや、そんな期待に胸ふくらませた女の子たちに盗まれっ放しで在庫切れ続出の状態だと。
 せめてポスターを自室に張って、カレのそばに寄り添っていたいとの乙女心のなせる業か。うーん、うらやましい、キムタクが。

 この歌は「私の恋は、行方もわからなければその行き着く果てもわからない。ただ運良く逢えることを最後の目的とするだけ・・・」という切ない片思いの心を詠んだもの。

 まさかキムタクに逢えようとは夢にも思わないだろうが、夢だけでも持ち続けてほしい。
 こんな小さな夢でも、かけがえのない生きがいとなるだろうから。


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