馳浩の古典こらむ

 寒けれど          
 二人寝
(ね)る夜ぞ
 頼もしき

松尾芭蕉 まつおばしょう
1644〜1694
笈(おい)の小文


 松居直美ちゃんが結婚した。
 お相手は、3歳年下。テレビ局で働くアシスタントディレクター。名は「岡山」くん。
 彼女が常時出演している「ものまね番組」の現場でいつもこき使われている彼は、スターとスタッフの恋が成就するとは夢想だにしなかったと語る。まさしくシンデレラボーイ。
 私の妻が、直美ちゃんと私生活で仲が良く、加えて岡山くんがプロレスファンということで、2年ほど前からつきあいがあった縁で披露宴に招待を受け、出席してきた。
 プロポーズは、彼女の方からしたと言う。
 「ねェ、結婚しよ。今年の11月に、結婚しようよ」
 その時ファミコンに夢中の彼は、気負うこともなく「うん」と答えた。その朴訥(ぼくとつ)な人柄が、芸能界という生き馬の目を抜く世界で勝負している彼女にとって、支えとなり続けたのだと。
 女性タレントが、息永く芸能界で活躍し続けることの難しさ。いつ時代の流れに取り残され、人々の前から姿を消してしまわなければならない日がくるか−−プレッシャーの毎日。
 「松居直美は私が守ります」と宴の締めに彼は声ふるわせながらもきっぱり宣言した。
 温かい気持ちになって外に出ると、折しも木枯しの肌に突き刺す季節。でも、ま、若き二人に関係ないか。
 直美ちゃん、岡山くん。外は寒くても、二人で語らいながら寝る夜は、心底しあわせと頼もしさを感じることでしょう。いつまでもそのぬくもりを忘れないでいて下さいね。

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