馳浩の古典こらむ

 恋ひ恋ひて
 逢える時だに 愛しき
 言つくしてよ 長くと思はば

大伴坂上郎女 おおとものさかのうえのいらつめ
生没年未詳
万葉集 巻四 六六一


 国民的美少女と言えば、ゴクミこと後藤久美子さん。少女のころにデビューしたので、いつまでも幼いと思っていたら、もうすでに二十歳(はたち)を過ぎたという。
 大人びた表情になったものだと思っていたら、外面ばかりの変化ではなく、それは心の内側からの美しさが表れているようなのである。
 芸能マスコミの情報では、彼女はF1レーサーのジャン・アレジ選手と海を渡る恋をしているという。最初は彼女のあこがれからはじまったのが、レースを応援するために各地を転戦する彼を追っかけているうち、「大人の恋」に発展した様子。少女から大人へ−の道は、なんと国際的な恋愛によってゴールインしそうなのだが、ちょっと待った。
 アレジ選手には奥様がいる。そう、これはりっぱな不倫。現在離婚調停中とはいうものの、奥様の立場も考えず、堂々と彼と人前に出かけて行く彼女の一途な気持ちは、理解に苦しむ。障害のある恋ほど燃えあがるというけれど、それにしても向こう見ずな気がする。

 歌の意味は「恋しくて恋しくてたまらない。逢(あ)った時だけでも優しい言葉のありったけを言って。このひとときを永遠と思うなら」

 坂上郎女らしい、男心をとろけさせるような情愛ほとばしる歌いっぷりである。
 さて、世間体よりも現在進行形の愛に夢中の後藤久美子さんに一言。その熱い想(おも)いがいつまでも続きますことを願うとともに、奥様の立場もわかる、本当の大人の女になって下さいね。


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