馳浩の古典こらむ

 世の中を
 厭しとやさしと 思へども
 飛びたちかねつ 鳥にしあらねば

山下憶良660〜733
万葉集 巻五 八九三


 一気に1ドル90円割れにまで進んだ円高では国民から対応能力を疑問視され、諸外国からは突き放されている様子。

 東京協和・安全両信組の経営破たん問題では東京都民から信頼を失い、国会でターゲットにされている。まさに四面楚歌(しめんそか)。
 せっかく勝ち取った大臣ポストのばすだったのに、イバラの道を歩んでいるのが武村正義大蔵大臣だ。
 自民党を離党し、新党さきがけを作り、混乱する政局の台風の目となったまでは順風満帆。
 細川連立政権を支え、今また村山連立内閣のキーマンとして政界を支えているはずだったのに、次の総理大臣候補か、とまでうわさされた人物にしては、窮地に立たされている。
 政局を読むには機を見るに敏であったが、かんじんの行政管理能力については疑問符がつけられたということになろう。
 国民、都民、国会と、大きな敵をかかえている現在の状況は、武村さんにとっては、「厭しとやさし」。ここがふんばりどころなのだ。

 歌の意味は、「この世の中をやせ細る思いのつらい所だと思うが、私は 鳥ではないので飛び立って逃げるわけにいかない」

 まさしく、国民の生活、日本の財布をあずかっている大蔵大臣はこの心境ではなかろうか。逃げてはいけないのだ。
 今こそ、強い決断力と判断力をもって、日本の経済を好況に巻き戻してもらいたいもの。
 そして、胸を張って政界をリードして行ってもらいたいものである。


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