馳浩の古典こらむ

 なげきつつ
 ひとり寝
(ぬ)る夜の 明るく間(ま)
 いかに久しき ものとかは知る

右大将道綱母 うだいしょうみちつなのはは
生没年不詳
蜻蛉日記


 長渕剛容疑者が大麻取締法違反で逮捕され、世間を騒がせた。
 ロックミュージシャンとして、クスリにおぼれざるを得ない状況にあったのか。それとも人間的な弱さがそうさせてしまったのか。
 彼の身辺をさぐるワイドショーのスタッフは、その常軌(じょうき)を逸した女性関係にも非難の的をしぼっている。
 最初の妻が石野真子さん。2度目(現在)の妻が志穂美悦子さん。そして愛人として浮上した国生さゆりさん。
 登場人物がすべてテレビや映画の世界で活躍する芸能人であるだけに、好奇に満ちた目で見られてしまうのは仕方ないところか。
 中でも現在の奥さん、悦子さんの心痛はいかがなものか。
 夫が若い女性のもとに通いつめてしまい、家になかなか寄りつかない。子どもとともに家庭を守る立場にある悦子さんは、恥ずかしさと悔しさでやるせない思いで毎夜過ごしていたことであろう。
 不安な夜が明けるまでの時間は、どんなに長く感じたことだろうか。

 この歌の作者、道綱母も、同じ境遇。
 夫の藤原兼家が、新しい女性「町の小路の女」のもとに通いつめて、自分のもとを訪れなくなったことを嘆いて詠んだ歌である。
 ふらふらと他の女性のもとに通いつめている男性は、心してこの歌を味わうべき。
 いつの時代も、泣きを見るのは女性の側だとすると、いつかは逆襲にあうだろう。


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