渓流釣り大会必勝法
- はじめに
- 渓流釣りの本当の魅力は、一人川の流れと鳥のさえずりの中に身を置くところにあるのかもしれない。しかし、解禁日のお祭りのような雰囲気も楽しいし、自分の腕がどの程度なのか人と競争することもまた楽しい。このような年に数度の楽しみを、より積極的に楽しむために、また自分の腕前の上達のために、この必勝法を読んでみられてはいかがかと思う。
海の釣り大会と違って、渓流の釣り大会は人工的な環境での釣りといえる。 というのは、大会の前には必ず成魚放流がおこなわれるからだ。しかし、参加者は普通の渓流釣りのスタイルで大会に参加してしまう。そこに大きな落とし穴がある。この必勝法では、どこが普通の渓流釣りと違うのかを念頭において読んでいただければ、より明確に理解できると思う。また、これから渓流釣りを始めようという人は、市販の入門書と比較しながら読まれると違いがよくわかってもらえると思う。
- 道具について
- 「竿」 硬調の川幅に合った竿。4.5mか5.3mが標準といえる。軟調だと取り込みに時間がかかる。また、大物がかかった場合は暴れてしまい、場を荒らしてしまう。
- 「仕掛け」 道糸とハリスを分ける。通し仕掛けは大会には向かない。なぜかというと、積極的にポイントを攻めると根掛かりとなる確率が高くなるからだ。かりに根掛かりとなっても、道糸とハリスを分けてあれば、ハリスを替えるだけですむ。従って時間があまりかからない。ハリスは道糸の2倍以内がよい。たとえば、0.5号のハリスを使う時は、道糸は1号以内とする。それ以上道糸が太いと、経験上ハリスは切れやすい。ハリスの長さは、私は1ヒロ(約1.5m)とっている。仕掛け全体の長さは慣れとも関係あるが、手じりを出さない程度がよい。(竿の長さと同等) あまり長すぎると手返しが遅くなる。仕掛けの具体例は、「作戦」のところで紹介したい。
- 「オモリ」 これが一番重要。大会当日の、そしてポイントの流速にもよるので、最低でもB〜3Bを持っていく。実際に使う目安は、仕掛けが止まるほどのオモリを使うということ。なぜなら大会で釣る魚は、ほとんど前日まで養魚池の中で生活していたため、早く流れるエサを捕まえるのがへただからだ。エサを止めて釣るという意識が大切だ。
- 「ハリ」 渓流8号と7号で十分。使用例は「作戦」のところで紹介したい。もちろん自分で糸を巻くことを前提としている。
- 「エサ」 イクラがベスト。イクラの臭いが麻薬のように魚たちを引きつけるという。養殖用のエサが本当はベストなのかもしれないが、試したことがない。同じエサばかり見ていると慣れてきて食べなくなる場合もあるので、ぶどう虫・ミミズも持っていき、アタリがなくなった場合に試してみる。ただしミミズをエサにしたときのアタリの合わせは1テンポ遅らせないと針掛かりしない場合がある。早合わせをするとしっぽだけ食べて逃げられてしまう。
- 「目印」 アタリを見るために見やすい目印が必要なのは当然だが、もう一つ重要な意味がある。それは自分の仕掛けがどこを流れているかを他の競技者に知らせるという意味だ。従って、普段より目印を多くしたりしてとにかく目立つようにする。他人の仕掛けと絡まってしまうと、たとえ運良くほどけたとしても相当な時間を無駄にすることになる。最悪の場合は仕掛けを全部取り替えなければならない。これが致命傷になる場合があるので、絡まった場合は直ぐにほどけるか、仕掛けを付け替えるか即断する必要がある。
- 「魚籠(ビク)」 魚が入れやすく蓋があってこぼれないもの。大きさは20p程度の魚が30〜40匹入る大きさが欲しい。
さらに氷の入る余裕があれば魚が傷まなくてよい。肩掛け用のベルトが付いているタイプがほとんどだが、そのベルトは取り外して腰のベルトにビクを通した方がずれなくてよい。右腰に付けるか、左腰に付けるかは、魚をつかむ手とビクの蓋の位置を考えて、具合の良い方を選ぶ。
- 「たも網」 持たない人が意外に多いが、大物が掛かった場合はないと苦労する。大物賞をねらうためには必需品。また、水につかる足場で釣る場合は、たも網を使うことでハリス切れや針はずれのリスクを軽減できる。網の直径は30pもあれば十分。材質や価格はピンからキリまであるが、使い慣れていることがすべてに勝ることは言うまでもない。
- 「針はずし」 使いやすい物を一本、胸にぶら下げておくとよい。針を飲み込まれてしまった場合、糸を引っ張って切ってしまうより、針はずしを使った方が時間を無駄にしない。0.8号のハリスならば引っ張る力にはかなり耐えられるので、口元まで針を引っ張り出し、その口元を支点にして針をこじ上げることもできる。それにしてもハリスに無理をさせずに長く使うことが時間内に沢山の魚を釣る秘訣である。レーサーがタイヤの消耗を押さえながら走るのに似ている。
- 「手ぬぐい」 赤ちゃんの「おしめ」が最高。格好が悪いと思われる方は、水を吸収し魚のヌルヌルをとってくれる物なら何でもよい。手が滑ると的確な竿さばきができない。また、手が濡れているとイクラを針に刺すとき滑って刺しづらくなる。
- 「偏光メガネ」 ポイントの深さや底石のようす、魚影が確認できるのでなるべくつけたい。また、水面の強烈な光の反射から目を守ってくれる、UV(紫外線)カットのものがお薦めである。
- ポイント選び
- 「基本」 大会当日になると沢山の人が会場につめかける。そのため大きなポイントになると10人以上で取り巻くことも少なくない。思い通りの場所を確保するためには、少なくとも1時間前に会場に着く必要がある。場所を確保した後は、その場にビクと竿を置いて参加申し込みに行ったり、朝食をとったりすればいいだろう。
さて肝心のポイントであるが、落ち込みの深くなっているポイント(プールとも言う)を一番にねらう。このポイントが大きければ大きいほど魚がたまっている。ただし先にも言ったように一目で絶好のポイントとわかる場所は沢山の釣り人でにぎわうことになるので、覚悟というか用心しておかなければならない。こうした落ち込みのポイントは会場に何カ所かあるが、できることなら下流のポイントを選んだ方が有利だ。自然のイワナやヤマメは上流に上るけれども、放流直後の魚は下流に下るからである。人混みを警戒した魚も下流に下る。
一つのポイントを1時間ほど攻めると、だんだんアタリが遠のいてきて、そのうちパタリとアタリがなくなる。次のポイントに移る前にいろいろとする事があるが、この次のポイント選びで勝敗が分かれると言っていいだろう。次のポイントは他の釣り人が竿を出した場所がほとんどなので、ここが絶対と言えるところはない。ただ言えることは落ち込みのポイントは移動した釣り人が必ず竿を出すので、釣れる確率は低い。おすすめは小さなポイントをあたりながら移動して、瀬を攻める手だ。瀬の岸際は見落としがちなうえに、魚が隠れやすい場所でもあるからだ。
- 「初心者におすすめのポイント選択法」 ポイント選びの大切さは今さら言うまでもないが、一朝一夕で身につくものでもない。市販の解説書は場が荒らされていない所では有効だが、それ以外の条件が入ってくると、全く役に立たなくなる。経験がものをいうのである。しかし、そう言ってしまっては身も蓋もない。ここで初心者でも簡単的確にポイントを見つけるとっておきの方法を紹介しよう。
大会の前日あるいは当日に行われる魚の放流を見るのである。放流された魚がどこに、どのように流れていくか。そしてたまる場所がよくわかる。岸際から流された魚は流れの速さにとまどいながら、岸に沿うように下流に流されていく。身を休める流れのない所を見つけると、そこにとどまる。これがポイントだ。大きな石や段差によってできたポイント以外にも岸際の流れの緩やかな場所に魚が落ち着くのがわかるはずだ。
- 作戦
- 競技時間はおよそ2〜3時間。この時間を前半と後半に分けて作戦をたてる。まず、前半戦の仕掛けは道糸1号、ハリス0.8号を使う。最近流行の細糸釣法の逆をいくわけだが、ちゃんとした理由がある。それは放流直後の魚はそれほど釣り糸に敏感ではないからだ。この仕掛けなら石にすられない限り50pオーバーの大物でも大丈夫だ。それほど強いわけだから思い切り釣ることができる。
最初のポイントで1時間は釣れる。自分の足場からできるだけ遠い所から釣り始め、手前の方は後にとっておく。手返しの間に他の釣り人が竿を入れる場合があるが、気にせずペースを乱さないようにする。釣り人同士で競い合うわけだが、相手を意識してしまうと手元が狂い、結果的に手返しの時間が長引くことになる。その場所で1時間に20匹釣れれば、前半戦は合格といえよう。その後アタリが止まったところで、細仕掛けに切り替える。道糸0.4号、ハリス0.2号で、着実に数を増やしたい。それでもアタリがなくなった場合はポイントを移動しなければならないが、移動の前にエサをイクラからぶどう虫やミミズに替えてみるのもよい。
ポイント移動からが、後半戦と言うことになる。後半戦は川の渓相にもよるが、瀬や小さなたまりを丹念に探りながら移動する。特に他の釣り人が見落としているのが岸よりのポイントである。川の流れの中心あたりに気を取られ、足元を釣り忘れている場合が多いので、ここを対岸からねらう。後半戦は他の釣り人が竿を出していないポイントをどれだけ探れるかで、数を伸ばせるかどうかが決まる。瀬や石の下の潜り込むような流れに乗せるためには、オモリをBぐらいに軽くして、ポイントの上流から流すように心がける。また、大物は落ち込みの深みの底にじっとしていて、小物が釣れた後でも残っている可能性がある。4B以上のオモリを使い、針とハリスの間隔を50p程度とり白泡のたつ強い流れの下に仕掛けを沈めてやるのもおもしろい。しかし、大漁賞をねらうためには、大物とじっくりと渡り合いたい誘惑が大きな落とし穴になることを、肝に銘じておかなければならない。
後半戦を整理すると、瀬や足元・対岸の岸際をねらう。落ち込みのポイントは底の大物をねらうが、深追いしない。他の釣り人が見落としているポイントを丹念に当たる。以上である。こうして後半戦に10匹以上釣ることができれば、入賞は間違いない。うまくいけば大物賞もと考えるのはちょっと欲か。
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