「北陸中日新聞」99年 3月 6日(金)
所沢高生徒と校長、平行線
卒業式の在り方をめぐ
り、手作りの記念行事開催
を求める生徒側と、日の丸
を掲げ、君が代を斉唱する
厳粛な式を主張する内田達
雄校長が対立。昨年、異
例の「二つの卒業式」が行
われた埼玉県立所沢高校。
話し合いは平行線のまま
で、八日の卒業式はことし
も「分裂開催」になりそう
だ。「われわれの意見を尊重してほしい」と訴える生
徒、「学習指導要領に従う
のは当然」とする校長。背
景には、両者の学校運営を
めぐる譲れない思いがあ
る。
発端は一九九七年四月の
入学式。着任直後の内田校
長がそれまで実施していな
かった式での日の丸掲揚、
君が代斉唱を強行した。反
発した生徒が昨年三月、校
長主催の「卒業式」をボイ
コット、自分たちで「卒業
記念祭」を開いた。
混乱は昨年四月の入学式
にも波及。県教委と校長は
「式に出席しなければ入学
を許可しない」と出席を強
要する文書を発送し、新入
生の四割が欠席する事態と
なった。
同校生徒会が九〇年に
「解釈が分かれている日の
丸・君が代問題は学校に持
ち込まない」と強制反対を
決議したことも一因だが、
生徒会側には、所沢高では
生徒と教師の話し合いで物
事を決めるのがルールだっ
たのに、校長が独断でこれ
を破ったとの不満が根強く
あった。混乱を避けるた
め、生徒の一部からは「日
の丸・君が代のある式でも
いいのでは」との声が上が
り、内田校長も昨年より話
し合いの機会を増やすな
ど、ことしはやや対決色が
薄まっている。
だが、生徒側の「自由な
校風は誇り」との信念は強
い。内田校長も「最終決定
権は校長にある」という態
度を崩しておらず、打開の
糸口は見えていない。