馳浩の快刀乱筆

 力のもののふ目指し 

 やった!大関出島誕生 

平成11年7月25日富山新聞掲載


 

 やった新大関出島誕生。

 夏場所初優勝を飾った関脇出島が、大関に昇進した。手放しで喜びたい。

 というのも、出島関は私の中学校の後輩であり、さらに深い因縁があるからだ。

 今から24年前。当時金沢市立鳴和中学校2年生だった私は、生来のすもう好きが高じて正式に相撲部を作ってしまったのだ。

 友人からも仲間を募り、総勢10名。校庭の土俵で汗を流しながらしこを踏み、まわし姿で町内をランニングしたものだ。そのころの夢は、全国にも名高い卯辰山相撲場の土俵に立って闘うことでもあった。

 しかし私の夢は夢のままで終わり、高校進学と同時にレスリング部に入ったのであるが。

 その後有能な指導者のもとに母校鳴和中学校相撲部は北信越大会に優勝し、果ては全国大会の上位入賞常連校にまで強化されていった。その中心人物か若き日の出島武春選手なのである。彼は金沢市立工業高校、中央大学と進学し、とうとう国技大相撲の頂点に立ったのである。

 学生時代は潜在能力を存分に発揮することができなかったが、武蔵川部屋に入門して地力を発揮するようになるのである。

 名は体を表す、というが彼の出足鋭い安定した突き押し相撲は、改めて相撲の魅力を国民に教えてくれる。温和な人柄であるため、千代大海などのように向こう受けすることはないが、基本に忠実な土俵さばきには定評のあるところ。ぜひ、若貴問題で暗いムードの大相撲界に新風を巻き起こしてもらいたい。

 石川県からはプロ野球の松井秀喜選手に続いてのスポーツ界のヒーロー誕生。沈滞していた石川経済界を鼓舞してくれる快挙でもある。スポーツの活力がいかに国民にエネルギーを注入してくれるか。私も実は一人ひそかに興奮しているのである。

 出島よ、闘えそしてもう一段上の横綱の地位を目指してくれ。何より真の力のもののふになってくれお祝いの一句。 

 

もののふは 出足鋭く 夏を呼ぶ
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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