「Men's Ex」 9月号
シック&HowTo誌
 喧嘩の心を持って日常生活に臨む法(一部抜粋)

自己主張を云々する前にまずは「個の確立」を!

 「どうやってケンカに勝つか」ケンカをする以上は勝ちたい。いや、勝たなければ意味はない、のかもしれない。そこで、馳浩氏に会って話しを聞いてみた。

 

 「ケンカ」がもしも”感情をたかぶらせ、相手を攻撃すること”なのだとすれば、「リング以外でしたことはない」と馳浩氏は言う。子どもの頃も、学生時代も、いわゆるケンカとは無縁だったというのだが、それならば「人とぶつからない」という主義でもあるのだろうか?

 「いや、筋の通らないことまで受け容れる必要はない。ただ、感情をたかぶらせているヒマなんてないし、破滅的で非生産的なケンカをしても無意味だと思っているだけだよ」

 と馳氏。国会議員として行う議論もまたある意味では「ケンカ」と言える。ただし、それは生産的な意味でのケンカだ。ひとたび相手なり自分が感情的になってしまえば、このケンカも無意味になる。

 それでは、馳氏の場合はどうやって感情的にならないよう持っていくのか?

 「なんてことはないよ。自分の主張をする前にまず相手の主張を聞く。そうしていけば相手は感情的にならないからね。そして自分の主張をする時には一言一言に裏付けを持って話していく。これでOKなんだ」

 争いを避けるのではなく、まず相手の出方を把握してから、自分は着実な論法で主張をしていく・・・・・・これが馳流の議論。議論という名のケンカに勝つため、まずはこうしたベーシックな手法を用いるのである。けれど、これだけでは海千山千の論客が揃う国会で「勝つ」のはむずかしい。馳氏は自民党の政策勉強会に毎朝出席するようになって論理的なケンカ術を学んだという。

 「これは何も国会での議論に限らないけれど、例えばケンカをするのなら相手をしっかり見きわめて選んでいかなければ駄目だよね。それに『いつ』ケンカをするのかってことも大事だし、『どんな』ケンカをするかも大切になってくる。人目につかないところでケンカしたほうがいい場合もあるだろうし、時にはあえて人前でケンカしたほうがいい場合だってある。強気で攻めたほうがいい場合もあるし、わざと下手に出ていったほうがいい場合もある。大きな声を出したほうが得な場合と、論旨をしっかり組み立てて静かに話したほうが有効な場合とを見きわめることも重要だよ」

 「いつ」「どこで」「だれと」「どんな風に」というように、ケンカにもまた5W1Hがある。それをきちんとふまえることで勝利は見えてくる。

 「選択肢はいくらでもあるんだ。だから結局、そういった選択肢を豊富に持っていて適切な選択をできる人というのが、ケンカに勝つんだと思う」

 リング上で、時に静かに、時に荒々しく、幾多の技を駆使して勝負するプロレスラー・馳浩氏は、議論という戦いにも同じようなスタイルで臨んでいた。

 ところで、デーブ・スペクター氏は自己主張の件とはまた少し別の、もう1つの問題提起をしてくれていた。

 「日本で少し前から問題になっている過労死というのがあるでしょ? そんなの他の国にはないよ。もちろんいろんな背景はあるだろうけれど、『どうして死んでしまうまで我慢するの?』と聞きたくなるね。我慢して我慢して、それで死んでしまうなんて悲しすぎるよ」

 と。ここでも「自己主張」のことは絡んでくる。しかし、それ以上に気になったのはストレスのこと。我々は日常生活の様々な場面でストレスを抱えている。それが不用意に蓄積していけば精神面、ひいては肉体的な面でも健康を害していく。ケンカは「新たなストレスを生む」一面も持ち合わせてはいるが、他方で「ストレスの発散・解消」につながるのではないか? アメリカ人ビジネスマン同士は頻繁に議論をする。しかし、どんなに激しい議論をしてもその後は、あっさりしたもの。後々まで引きずるようなケースは少ないという。「腹のさぐり合い」に終始するよりも「正面からぶつかる」ほうがずっと健康的だと言えるではないか。

 デーブ氏はまた、

「大阪の人たちって、結構ちゃんと言いたいことを言うよね。だから僕ら外国の人間にしてみると、東京の人より大阪の人のほうが親しみを感じるんだ」

 とも言う。たしかにそうかもしれない。そしておそらく「クチの悪い江戸っ子」が多数いた頃の東京のほうが今よりずっとストレスは少なかったに違いない。いい意味で「ケンカのできる人」がいる社会は風通しがいい。

 馳氏は言っていた。

 「ケンカはリングでしかしないけれど、夫婦喧嘩はするよ」

 と。そして「あえてするようにしている」と言い直した。

 「いつも一緒にいる相手だから腹の中は見えていたほうがいいと思うよ。それに言いたいことを言い合ったらスカッとしてストレスも発散できるしね」

 夫婦喧嘩だけは、「たいてい負けるよ(笑)」なのだそうだが、それはそれでいい。

 「結局、私は党内で理論を鍛え、家庭内で精神面を鍛え、リングで肉体を鍛えているんだね。これならどんなケンカでも勝てそうじゃないですか」

 笑いながら馳氏は、さらにこんな提案をしてくれた。

 「痴話喧嘩をもっとやって、ケンカのテクニックを磨け!と言いたいね。もちろん暴力は抜きで、女性ともっともっとケンカしたほうがいい。ウチの女房だけでなく女性はケンカが強い。そういう人と何度もケンカしていくことで力をつけていってほしいと思うね」

 デーブ・スペクター氏はというと

 「人がたくさんいて混み合っている島国なんだから、なにも好きこのんでケンカをすることはないよ。でも言いたいことはもっともっと主張したほうがいいね」

 と助言。有田氏は、

 「教育の世界でよく聞くのが『心から何かをしたい、という思いが子どもたち自身の中から出てくるようにならなければ駄目』という考え方。大人になってもそれは同じですよ。心の底から『こうしたい』というものが生まれてこなければケンカなんて勝てやしません」

 と語った。さて、あなたならどうしますか?

ケンカに勝つには
選択肢を豊富に持つことが大事だ!

 

 馳浩流 ケンカ必勝法 5ヶ条

1.自分も相手も感情的にならぬよう配慮せよ

2.相手次第でケンカの仕方を考慮して臨め

3.タイミングや場所といった条件も考えよ

4.痴話喧嘩を積極的に重ねていくことで腕を磨け

5.論理と精神と肉体、この3つを鍛練せよ


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