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馳 浩 衆議院議員 永田町通信 107
 

『国のカタチ』

 浜松市へ行ってきた。
 衆議院文部科学委員会の、視察。
 テーマは、外国人学校支援。
 どうして行き先が静岡県浜松市なのか?
 塩谷立文部科学大臣のご地元で、
 定住外国人の多い都市であり、
 市にとって死活問題であり、
 つまるところ「国のカタチ」に直結する問題を内包している土地だから。

 まずは、学校法人ムンド・デ・アレグリア校訪問。
 女性校長の松本先生。(株)スズキから出向して来て経営サポータ役をつとめる山内理事が対応してくださる。
 玄関入り口正面の壁を見てびっくり。
 「○○ちゃんのパパ、就職決定おめでとう!!」
 と、短冊が何本も掲示されているのだ。
 「ど、どういうことですか、コレ?」
 「保護者のハローワーク役もやってるんです。 この不景気で派遣先を解雇されたら、帰国するか再就職するしかないじゃないですか。 日本に残って働きたいと願う保護者には、この学校の校舎を使っていただいて、日本語教室を開いているんです。 それだけじゃなくて、就職のお世話もしているんです。 そうしないと子ども達が学校に来られなくなりますし、経営も成り立ちません。 私たちは公立校の補完校であり、共存共栄の学校です。 日系人の子ども達に教育を受ける選択肢を与えたいのです。 そのためには、保護者支援も欠かせませんから。」
 と、力強く語ってくださった。

 日本にブラジル人系の外国人学校が急増した背景には、平成2年の入国管理法改正が契機となっている。
 日本で働きたい、定住したいという日系人を受け入れる方針を決定したのだ。
 結果、どうなったか。
 ポルトガル語などの母国語しか話せない日系人がどんどん来日し、製造業の現場で働きはじめたのだ。
 そのうち、派遣が製造業にも解禁されるという法改正があってからは、定住外国人労働者は、なくてはならない存在となった。
 それは一面、雇用の調整弁ともなった。
 忙しいときは、ハケンを日系外国人でまかない、生産減少となれば、ハケン切り。
 まさしく、外国人労働者は使い捨て同然のコマとして輸出産業(自動車、家電、建機など)の下支えをすることになったのである。
 これが世界第2位の日本経済の現実だ。

 定住外国人が家族と共に日本で生活を始めればどうなるか?
 当然、子どもの教育問題にぶち当たる。
 ・母国語で教育してくれる外国人学校を選ぶか!
 ・日本の公立小中学校で受け入れてもらうか。
 ・不登校になるか!
 の、3つの選択肢がさらにのしかかる。

 外国人学校は、日本の法律で規定された各種学校(許認可権は都道府県当局)の認可を受ければ、まだ少しは公的助成金を受けることはできる。 しかし、圧倒的少数だ。 大多数は、無認可校であり、高い授業料を有志の寄附金で経営をつないでいる。
 その寄附金も、昨年来の経済不況のあおりを受けて、例年の5分の1しか集まらない、と。
 もちろん、外交ルートを通じて、本国からの支援を充実させ、教育派遣や教材を提供させることが必要。 事実、麻生総理も河村官房長官も塩谷大臣も中曽根外相もいずれも自民党きっての文教族議員であり、総力を挙げて本国と交渉してはいるのだが、うまく進まない。

 松本校長はさらに訴える。
 「浜松市在住の外国人の子ども1,700人のうち600人ほどは不就学なんです!」
 「先生にもちゃんとした給与をあげたいけど、平均16万円です。」
 「本当なら公立小中校で受け入れてもらえるんですが、いじめと文化習慣の違いで外国人学校に救いを求めてやって来ます。 とくに、日本語ができるかできないかは大問題です。」
 「国に望むことは、特定公益増進法人の指定です。 そうすれば寄付も集まりやすいので…」
 「都道府県の各種学校としての認可校の基準もハードルが高すぎます。 別枠でなんとか!」

 この学校の他には、無認可校である「エスコーラ・アウカンセ校」と、日本人塾経営者である倉橋社長が経営する「エスコーラ・アレグリア・デ・サベール」校の2タイプも視察した。
 いずれの3校とも「日本政府の犠牲になっている外国人子弟」という認識は強い。
 このままで良いのだろうか。
 日本経済の底辺を支えている外国人労働者にとって、子どもの教育が何よりの心配の種。
 これも、「国のカタチ」の一つである。
 もしかして、私たち日本人は、こういう現実に向き合おうとせず、臭いモノにフタをしてきているのではなかろうか?!


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