『朝晩小松空港』 ガソリン国会のヤマ場を越えた日曜日。
地元の空港を朝晩2回利用した。
ずは小松空港始発。「馳さん、日曜日の始発なんてめずらしいねぇ。 何かあるの? 四川省の大地震かわいそうだね。 助けてあげなきゃ!!」 と、チケットカウンターに並んでいると声をかけられる。 顔見知りの方もいれば、全然知らない方にも声をかけていただく。 もしかしたら、どこかのパーティーですれ違った方かもしれないので 「覚えてる?」 と言われても、 「いやぁ、お久しぶりですね。 最近いかがですか?!」 と、知っているフリをして、それを相手に悟られないようにと、うまくやり過ごすテクニックも身についたが。
休日の早朝の地方空港を利用する方は、観光目的の家族連れやカップルが中心。 そんな中に、大男(私)がきちっとスーツを着こなして黒いかばんに新聞や単行本や書類を無雑作に詰め込んで歩いている姿は珍しいらしく、目立つ。 目立つので当然、声をかけられる。 国会議員だと皆わかっているので、文句の方が多い。
「ガソリン下げて」 「年金あげて」 「道路作って」 「役人天国なんとかして」 「自民党だらしない」 「民主党にやらせてみたら」 「奥さん元気?」 「子どもさん大きくなった?」
……期待も失望もコインの裏表のようになっているのだな、見てないようでみんな国会の動きを見ているんだな、ということが、俺を見つめる空港を行き交う人たちの視線で如実に体感することができる。
羽田空港に到着。 東京で知人の結婚式に出席後、とんぼ返りで富山空港へ。
こちらは選挙区ではない。
従って、俺を見る人もほとんどいない。
唯一、到着ロビーを出たところで、若いカップルに、
「あ、プロレスのハセ!!」 「ハセだ、ハセ!!」 と、指差されて呼び捨てにされたくらい。いまだに 「プロレスの」 という枕詞を使われるだなんて、どうなんだろう。 でも、呼び捨てにされるのは悪い気がしない。 有名人として認知されているのかな、と思う。 もちろん、呼び捨ては尊敬の対象ではないけれど、ほとんどのニュアンスは親愛の情が込められていると伝わるので嬉しいのだが。
空港に向かえに来ていた秘書の車に乗り、生まれ故郷、小矢部市後援会総会へ直行。
小学校2年生までしか住んでいなかったにもかかわらず、地元市長、議長、市議を軸にしながら、100名を越える後援会。幼馴じみもいれば、企業後援会もいれば、親類縁者もいれば、プロレスファンもいる。 後援会長は、地元選出の柴田巧富山県議。 47歳で県議三期目だが、次期衆議院選に、富山3区から立候補の意思表示をし、世代交替を旗印に自民党公認を目指している渦中。 ゆえに、マスコミ記者も取材に駆けつけ、俺の存在もかすむばかり?!
やはり、ガソリン国会の山場を越えたがゆえに、有権者の関心は、解散総選挙はいつ?!に移ってしまったことの証佐。 後援会長という立場上、自身の政治的決断について口ごもり、 「金沢は厳しい。 小矢部から援護射撃してなんとか勝たせよう!!」 と、あいさつする柴田さん。 入れ替わりに、柴田さんの代弁者となる馳浩。
「次期総選挙のテーマは、税制。 道路特定財源の一般財源化もそうだし、医療や年金や介護の財源確保も急務。 いくら負担すれば、どういうサービスを受けられるのかを明確にし、安心を勝ち取るための選挙。 そのための税制を国民に示して信を問うのがスジ。 じゃあ、その役割を、誰にまかせるのかが、公認調整。 富山3区は、綿貫民輔さん、萩山教嚴さんと重鎮揃い。 新進気鋭の柴田さんの情熱がどう評価されるか。 それは本人と地元後援会の覚悟次第です!!」 と、言葉を選びながら激励した。
懇親会で大いに談論風発。 そして、8時20分発の最終便に乗るために、小松空港に向かう。
「アレ、馳せんせー、朝一番で東京にお戻りになったのでは?」 と、空港職員に声をかけられる、やっぱり始発とは空港内の空気も違う、お疲れ気味の観光客、月曜日からの出張に向かうサラリーマン、見送りの家族でごった返している。 手続きを済ませ、2Fのソバ屋で晩ご飯。 「アレ、馳さん、今日は森さんいないの?」 と、店主が美味しい水をグラスに一杯注いでくれる。
小松が地元の森喜朗元総理のことだ。 ここでは肩書きは通用しない。 いつも立寄る森のおっちゃん、だ。 柴田さんは森先生の秘書でもあった。
「今日は別々なんですよ。 お先にお帰りのようで。 私は最終便です。」
いつも通りソバを注文し、いつも通り店主に市井の声を聞く。 自民党は逆風だ。朝も晩も小松空港。 人も行き交い、情報も行き交う。 ここに政治の発着点もあるように感じながら、羽田行きの搭乗口に向かった。