Apple Town


永田町通信 59
 

『パーティ事情』

 永田町はパーティラッシュ。
 今年は(おそらく)衆議院の解散総選挙はなかろう。昨年の参議院選挙も終わったばかりだし。どれどれ、国会まっさかりの今のうちに、東京で資金集めパーティを開いて一息ついておこうかな……という国会議員特有のカンの働く心理なのであろうか。

 私の議員会館の郵便受けポストには、与野党を問わず毎日のようにご案内の封書が届けられてくる。
 このご案内封書の届け方にも実は各先生方の熱意の温度差が表れる。
 どうしても、どうしても出席してほしい相手のところには、先生自身が手持ち。腰を90度以上折り曲げてお願いして行かれる。
 できれば出席してほしいな、という相手には、秘書が手持ち。
 出席してくれればめっけもん。会費の振り込みがあればなおさらラッキー。でもあんまり仲が良いというわけでもないしな、という相手には、ポストへ投げ込み。

 受け取るこちとらにしても、毎日のことであるのでそれはなれっこ。
 この人は出席。
 この人は会費のみお届け。
 この人は無視。
 などと自分の日程も加味しながら、出欠や会費支払いの有無について決断するのである。

 招待のご案内を開くと、会費も当然明記してあって、相場は二万円である。
 この場合、経費に一万円はかかり、残りの一万円が政治活動費や秘書の人件費や選挙資金に使われると考えた方が良い。だから、主催者としてはいっぱいパーティ券が売れて、そして実際のパーティ出席者はそんなに多くない方がうれしい。わんさかやって来て、ビールや水割りがぶがぶ飲まれて、料理のおかわりまでされた日にゃあ、経費ばっかりかかっちゃって残るべきモノが残らなくなるのであるから。

 だから、政治家の資金集めパーティに出かけるときは覚悟を決めて出席し、払った会費以上の元を取る気分で飲んだり食べたり名刺交換したりする方が楽しいかもしれない。しみったれた料理しか出していない国会議員はしみったれ政治家というレッテルが貼られる。よって、皆けっこう料理には気を使っていて、時には地元の名産品や地酒をふるまってくれたりするから、そういうさり気ない心配りに政治家としての度量が見えたりするので、注視すべきである。

 さて、私はパーティで司会者に指名されることが多い。だいたい派閥の若手中間に依頼することがほとんど。なぜかというと、国会議員のパーティは特殊であり、門外漢がつとめるには荷が重いからである。とりわけハプニングが多いからだ。
 例えば先日、こんなことがあった。

 長勢甚遠代議士から直々に「俺のパーティの司会頼むよ」と言われ、一も二もなく直立不動で快諾した。森派の政策通、当選五回、議員在籍15年、5期連続厚生労働委員会筆頭理事、政調筆頭副会長、東大出身、労働省出身……とくりゃあ、経歴からして普段の仕事師ぶりからして、いつ大臣に就任してもおかしくない実力者。

 よって、来賓の顔ぶれはハンパではない。その来賓あいさつの順番を間違えることなく司会がさばかねばならないのであるから、これは大変なプレッシャーなのである。だから、いくらしゃべりのプロといえども、永田町の「鉄の年功序列の掟」がわかっていなければつとめられないのだ。その長勢先生のパーティ。

 発起人代表の森前総理が遅れて来た。こういうときは「人が先私は後」を信条とする森先生にすぐにあいさつさせると逆に怒り出すから、頃合いを見て後回し。党三役クラスや並入る大臣よりも先にあいさつしていただくのは、当然地元富山県の重鎮である綿貫民輔前議長。その基準は、役職の重さ+議員歴×人間関係という、方程式をさらに加工して複雑にしたような難解さ。この日はなんとか段取り良く玉沢徳一郎先生に乾杯をしていただいて、ヤレヤレと安心したのがまずかった。

 乾杯後のあいさつを尾辻厚生労働大臣にシナリオ通りにしていただいたら、なんと、森前総理が鬼の形相でツカツカと歩み寄ってきて一言。「ダメじゃないか、麻生が先だろう。麻生総務大臣だ。大臣歴は麻生太郎の方がはるかに長いじゃないか!! 何やっとるんだ!!」

 ……だって、麻生大臣、人垣に隠れて見えなかったんだもん……などと先輩に言い訳してはならないのも永田町の掟。パーティって、大変だ……。


戻る