『言った言わない。』 天災は、忘れた頃にやってくる。田中外相と鈴木宗男代議士のバトルも忘れた頃にやって来た。
そう、言った言わないの水かけ論である。
事の発端は、1月21・22日に東京で開かれたアフガン復興支援閣僚級会議。日本政府主催のこの会議に、NGOのメンバーが陪席できるのだが、そのメンバーの人選に鈴木宗男代議士が口を出したのでは? という憶測から騒動は始まった。
鈴木さんの関与についての事の真偽はよくわからない。ヤブの中。しかし、鈴木さんが関与しているという事を外務省の野上事務次官が田中外相に「言った」いや「言ってない」ということが1月24日の予算委員会の質疑で延々と壊れたレコードよろしくくり返されたのである。その伏線は、前日の予算委員会における菅直人民主党幹事長と田中外相のやり取り。
菅「鈴木氏が一部NGOを出席させないよう外務省に指示を出したと言われているが、本当なのか?」
田中「21日に事務次官に電話で話をしたら、そうした名前があったということを、私は確認している。」
菅「鈴木宗男さんという名前があったと言ったわけか?」
田中「今朝も具体的に名前を言って認めていた。事務次官が言っていた。」
このやり取りを受けて、鈴木氏が
「私は支援会議の日程や政府の方針について報告を受けたので、それについて意見は言ったが、一部のNGOの出席をどうのこうのと指示をしてはいない。こういうことで私の名前が出るのは迷惑千万。野上事務次官も、私の名前を田中外相に言っていないと証言している。田中さんはウソを言っているのではないか。非常に不愉快だ」とマスコミのぶらさがり取材に発言。これを受けて今度は田中外相が、
「そんなことはない。私ははっきりと聞いた。みんな知っていることなんだから」と反論。この景気の悪い時に、重要な補正予算の審議をしている予算委員会で言った言わない真実は何だという空論がくり返されるのだから、国民はあいた口がふさがらないのではないだろうか。ちなみに、私は鈴木宗男議院運営委員長の下で理事をつとめている関係上、事の本質であるアフガンとNGOの問題について直接こう聞いた。
「タリバンやアルカイダの残党の目下の狙いは、NGOメンバーの誘拐、拉致だ。私の持っているハイレベルな外交筋からの情報だ。となると、NGOと言えども政府とよく連係をとって、身の安全を確保しながら現地での活動を行なってもらいたい。一部NGOで、お上の言うことは信用できない、と反発している人がいるが、ならばどうして日本政府主催のアフガン復興支援会議に出席させろというのか。十分事務方と連絡を取り合いながら活動する必要があるのではないか。今までも政情不安な地域でNGOメンバーが誘拐されたり殺されたりした実例が多い。」
とのことである。
言った言わないでこんなに話題となってしまい、田中外相も鈴木さんも野上次官も心外であることは間違いなかろう。しかし、この問題の奥にスケて見えるのは、アフガン復興に向けての日本政府やNGOの献身的な努力が結実して欲しいとの関係者の切なる願いがあるということだ。
NGOの皆さんも、活動資金の援助を日本政府から受けている。ODAの草の根無償援助活動の中心はまぎれもなくNGOだ。そしてこのODA予算とは国家予算からの拠出であり、日本国民の税金だ。であるならば、有効に活動するためにも、担当となる外務省経済協力局や中東アジア課との連係は密にして、安全に活動して欲しい。
そして、外務省の職員だけでは十分にカバーできない分野において、日本の顔の見える人道支援を行なってもらいたい。そうすることによって、アフガニスタンという国の復興に日本が貢献できるという目的が達成される。鈴木さんの思いも、その点を強調してのことであろう。
マスコミも発言の揚げ足取りばかりしていないで、事の本質を指摘しないと、日本外交の恥部を世界にさらけ出すことに加担しかねない。