第百四十回国会
参議院環境特別委員会
会議録第八号平成9年5月21日(水曜日)午前10時1分開会
○渡辺四郎環境特別委員長
ただいまから環境特別委員会を開会いたします。
環境影響評価法案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。
○馳浩委員
自由民主党の馳浩と申します。先輩の河本委員と多少重複する点があるかもしれませんが、お許しいただきたいと思います。
まず、質問をする前に、行財政改革の厳しい折柄、環境庁におきましても、その存亡の危機に面していると私は承っておるわけでありますが、ある意味では環境省として、むしろ開発官庁に対するもっと大きな権限を持つためにも活躍をしていただきたい。加えて、そのためにはこの環境アセスメント法案が大きなにらみをきかす法案として実効カを持つようになることを期待しながらきょうの質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
朝日新聞の去る2月20日の記事にアセス法案の記事が書かれております。その見出しが、「魂入るかアセス法案」となっております。ここに魂を入れられるか否かの最大の分岐点は、私は、いわゆるスコーピング手続の充実度、完成度にかかっていると確信しております。言葉をかえるならば、スコーピング手続がその本来予定している効果を十分発揮させるならば本法は魂を入れることに成功したと言っても過言ではないと思います。
しかし、そのために、以下質問してまいりますが、多くの点で政省令や指針の内容をどうするか、これいかんにかかわってくると言わざるを得ません。当委員会での質疑も、この点をしっかり追及し、ただしていく点にこそ意義があると考えております。
そこで、具体的な質問をする前に、そもそもスコーピング手続を導入するのはどんな効果を想定してのことでしょうか、教えていただきたいと思います。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
スコーピング手続は、事業者が環境影響評価手続に係ります調査を開始するに当たりまして、事業の概要やあるいは実施しようといたします調査等に関する情報を公表いたしまして、地方公共団体やあるいは環境の保全の見地の意見を有する者の意見を幅広く聴取する、こういう手続でございます。このようなスコーピング手続の導入によりまして、論点が絞られ、めり張りのきいた効率的な予測評価ができる、あるいは作業の手戻りの防止ができる、あるいはまた関係者の理解の促進等の効果が期待されるということとともに、この手続により提供された有益な環境情報を活用することによりまして、事業計画の早期段階での環境配慮に資することが期待をされておるところでございます。
○馳浩委員
大きく三つの効果を挙げていただきましたけれども、これらからもわかりますように、いずれも重要なものばかりでありまして、この三つの効果が十分あらわれるならば本当にすばらしい、かつ魂の込められたアセス法案になると思います。ただし、果たしてこのままで三つの効果が十分あらわれるのか、ここを関係者の理解促進効果と早期アセス実現効果に絞って、以下検証していきたいと思います。
まず、重要度からいいまして、果たして事業計画の早期段階から環境に配慮するシステムになるのかを検証したいと思います。
結論からいいますと、このままでは早期アセスの実現は難しく、いわゆるアワセメントのままで終わるのではないかと懸命をいたします。なぜそういう残念な結論に至ってしまったのかを明らかにしたいと思います。
そもそも早期段階での環境配慮すなわち環境アセスを実現する、でいうところの早期段階には、事業計画の早期段階とアセス手続の早期段階の二つの意味がありまして、これは厳に区別されるべきであるのに混同して使われているようであります。今回のスコーピング手続の導入でアセス手続の早期段階での環境配慮は確かに実現します。なぜなら、準備書作成段階を起点に見れば、従来の閣議アセスでは、準備書作成後に初めて環境配慮、つまり実質上のアセス手続が開始されるだけなのに、今回は準備書作成前の段階でスタリーニング手続、そしてスコーピング手続という環境配慮がなされるからであります。
しかし、少なくともスコーピング段階で立地楊所が固まっているのが通常で、この点に関しましては衆議院での質疑でも明らかになっております。そうであるならば、用地買収の交渉も相当進んでいるはずであり、何ら制度的工夫もなければ、立地の変更も含めた代替案の検討可能な事業計画の早期段階での環境配慮は、既に事業内容がほぼ固まってからのスコーピング手続の実施でありますから、以前と同様アワセメントでしかないことになリます。
そこで提案したいことがあります。事業計画の早期段階からの環境配慮を事業者の内部で進めるために、地域において市民も参加した環境管理計画を策定し、どこが重要な自然環境かを現実に地図に落として、これを事業者にあらかじめ示した上でこれをスコーピング手続でも使っていくことが効果的と考えますが、いかがでしょうか。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
地方公共団体が環境管理計画のような形で環境保全上重要な地域を地図の上などに示して公表する、こういうことは事業者が自主的に地域の環境の保全に配慮して事業計画を作成するということを促進することにつながるものと考えます。また、地域の環境管理計画が策定されている場合には、今回新たに導入されますスコーピング手続におきまして、この計画を背景としまして地方公共団体等からの意見が出されることも想定ができるところでございます。
このように地域の環境管理計画と環境影響評価制度を関連づけて地域の環境保全を図っていくという考え方は重要な御指摘でございまして、制度の運用に当たりまして、御指摘の趣旨が生かされますように環境庁としても努めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
○馳浩委員
今提案を申し上げましたこの環境管理計画の事前提示制を実効性あるものにするためには、地域環境管理計画に示された自然環境の重要度がスコーピングにおいて参考にされるように、調査等の選定に当たっての基本的事項や指針にこの旨を明記すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
地域の環境情報といたしまして、例えば地域の環境管理計画に盛り込まれました自然環境の重要度などの情報がスコーピングにおいて反映されることはただいま申しましたように大変重要と認識をしておりまして、このことを十分踏まえまして、今後、御指摘のありましたように基本的事項あるいは指針の内容を検討していきたい、念頭に置いて検討していきたいというふうに考えております。
○馳浩委員
問題点は、自治体がこの趣旨に沿った環境管理計画を策定するかどうかであります。この点、環境庁、どんな施策でこの計画策定を促進させるつもリでしょうか。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
地域の環境保全に関します基本的な計画の策定等につきましては、国の環境基本計画、私どもが環境基本法に基づきまして策定をいたしております環境基本計画におきましても、地方公共団体に期待される役割の一つとして挙げておるところでございます。
環境庁といたしましても、このような地方公共団体の計画等の策定に資するためのハンドブックを作成いたしまして配付をいたすというような技術的支援を行っておりますが、このほかに、平成7年度から、計画等の策定を行う市町村に対しまして、環境基本計画推進事業費補助といいます財政的支援を行っておるところでございます。ハンドブックを作成して配付するほかに、こうした予算上からも環境基本計画を推進するための補助費を援助いたしておるところでございます。
今後とも、御指摘のような計画も含めまして、地方公共団体におきます総合的な環境計画等の策定が促進をされますように、支援の充実を図っていきたいというふうに考えております。
○馳浩委員
より一層の充実をお願いしたいと思います。
今提案させていただきました手だても効果があると思いますけれども、これはやはり自治体次第でありまして、やや他人任せの感があります。最善の方法は、答申にも指摘されておるとおり、上位計画段階のアセスであります。アメリカで実施されておりますし、実は本法に定める港湾計画に係るアセスが上位計画アセス、いわゆる戦略的環境アセスでもあります。
ならば、なぜ今回一部でなく全面的に戦略アセスを導入しなかったのか、答申にはその詳細な理由がないので、詳しく教えてください。
さらに、全面的に戦略アセスを導入するために、今後早急に詰めていく考えなのでしょうか、あわせて教えてください。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
中央環境審議会の答申におきましては、現時点ではなお検討を要する事項が多いということから、政府としてはできるところから取り組む努力をしながら、国際動向や我が国での現状を踏まえて、今後具体的な検討を進めるべきであると、こういうふうに答申で指滴をされまして、今後の課題とされておるところでございます。
法案におきましては、本答申を踏まえながら、できるところから取り組むというその取り組みといたしまして、先生から今お話ございました港湾計画についてのアセスメントを盛り込んだところでございます。
今後、この答申に従いまして、国際動向や我が国の現状を踏まえまして、政府の計画やあるいは政策につきましてのアセスメントの手続等のあり方につきまして具体的な検討を進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
また当面は、現在、国際影響評価学会というのがございまして、IAIAと略しておりますが、この国際影響評価学会におきまして戦略的環境アセスメントを含めました国際的な共同研究が行われておるところでございまして、環境庁といたしましても、このIAIA等を通じまして国際的動向を十分に把握いたしますとともに、我が国におきましてどのような計画あるいは政策についてどのような手続や手法で環境への影響を評価できるか、具体的に研究、検討を進めて、整理を進めていきたいというふうに考えておる次第でございます。
○馳浩委員
具体的に詰められているということでありますし、今後の対応をしていくということでありますから、好ましいことでありますけれども、この上位計画アセスがいつ導入されるかはまだわかりません。また、このほかにいろんな手だてを考えてこそ実効性のあるアセスになります。
そこで、また一つ提案をさせていただきます。
スコーピング段階、つまり方法書の作成段階で立地に関する代替案、A案、B案、C案など、これの提示を事業者に義務づけるということであります。具体的には、法第五条一項四号の評価の手法の一内容として主務省令により規定するのであります。省令事項であるから十分今からでも実現可能であると考えます。
このように、立地の代替案の提示を義務づけると、この後その立地の代替案の検討をしなければならないため、スコービング段階では立地の確定や用地買収交渉もできなくなり、アワセメントからの脱却ができると考えますが、この提案に対して環境庁の意見をその理由とともにお聞かせください。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
立地の代替案の提示につきましては、民間事業者が行う事業等もございますし、それから用地の制約を有する事業種類もございます。こうしたことで、主要国におきましても立地の代替を義務づけている例が見当たらないのが現況でございます。
また、立地の代替案を提示するということは地域の利害対立を誘発するおそれがございます。こうした観点からいたしましても、立地場所の代替案、これを義務づけるということは適当ではないというふうに考えておるところでございます。
なお、スコーピングの手続の開始に際しましては、今お許がございましたように、おおむね立地の場所が明らかにされていることが必要というふうに考えられますけれども、事業によっては一定の広がりの中からその後の調査等によって具体的な場所が固まっていく場合もあり得る、こういうケースもあるものと考えておる次第でございます。
○馳浩委員
もありますと強調していただいたようでありますけれども、私としては、効果が認められる政策でありますので、義務づけでなくても立地の代替案の提示ができるとしてほしいと考えますが、いかがでしょうか。これだけでもあれば、立地の代替案の提示を第三者が促すことになり、その結果事業者が自主的に提示することにつながると思いますが、重ねて質問を申し上げます。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
スコーピングの段階での具体的な記載内容につきましては、これは事業者の判断によるものというふうに考えておりまして、事業者が必要と判断をいたしまして立地場所の代替案を提示して意見を求めるということは何ら本法案は妨げるものではございませんで、そういうことは可能でございます。
○馳浩委員
続きまして、今度はスコーピング手続の導入効果の一つであります関係者の理解促進効果について、これが本当にそういう効果があるかどうかについて質問を続けていきます。
この点のポイントとなりますのは、評価項目や評価手法の選定の仕方を規定する法第十一条の規定の理解であります。特に、ここでの主務省令、それを内容的に拘束する指針、さらには技術的助言の理解が大変重要であります。
質問に移ります。
アセスのための技術指針の進歩は日進月歩であり、そのために常に最先端の科学、技術を反映したものでなければならず、したがって常に指針の見直しをしていくべきと思いますが、いかがでしょうか。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
技術的な内容につきましては、今後とも高度化あるいは複雑化をいたします環境影響評価を取り巻く要請に効果的に対応するということとともに、予測の不確実性の提言あるいは信頼性の向上あるいは利用性や効率性の向上を図っていくということが必要でございます。
こうしたことから、法案の五十一条にも定められているとおりでございまして、環境影響評価を支えます技術手法のレビュー作業やあるいは新しい関連技術手法の開発を継続的に行いまして、内外の科学的知見の集積状況を踏まえて指針等が適切に見直されるように、私どもといたしましては基本的事項を定めます際におきましてこれをお示しするなどの措置を講じていきたいというふうに考えております。
○馳浩委員
今の答弁を聞いておりますと、広く問題となる方法は科学的に普及したときでなければ見直しの対象にならないといった、ちょっと腰の引けた感じがあります。これでは十分な環境への配慮がなされていくとは思えないと思いますが、具体的に伺います。
科学的知見が広く普及し固まる前でも、最先端の技術や手法を取り入れることもあるのでしょうか。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
技術指針は、各事業種の標準的な事業形態を想定いたしまして標準的な評価項目それから手法を示しますとともに、事業の特性やあるいは地域の環境の状況に応じまして項目や手法の追加をしたり削除をしたり、あるいは重点化をしたり簡略化をする等の、どのような考え方で行うかを技術指針に定めることとしておるところでございます。
したがいまして、技術指針が見直される前でございましても、個別の事業の状況に応じまして、必要に応じまして最先端の技術や手法を取り入れることはできるもの、そういうものであるというふうに考えております。
○馳浩委員
個別の事業につきましてできるものという答弁でございますので、この点を確認ができたことを一つの成果としておきたいと思います。
次に、評価項目や評価手法の選定基準となる第十一条三項の指針につきまして、例えば住民や知事提案の評価項目、評価手法を積極的に取り入れるためにも、網羅的な柔軟な指針内容になるよう配慮すべきと考えますが、いかがでしょうか。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
御指摘のとおり、個別の事業の特性やあるいは地域の環境の状況に応じまして適切に評価項目や手法を定めることができることが必要でございまして、技術指針がこのような自由度のあるものとなるように努めていきたいというふうに考えております。
○馳浩委員
ここからはちょっと先ほどの河本委員の質問とも重なっていくのでありますけれども、第十一条一項の規定の仕方を見れば、知事、市町村長、一般市民の意見を十分検討し考慮してくれるように見えます。しかし、評価項目や調査、予測及び評価手法の選定権者はあくまでも事業者であります。そうであるならば、自分に都合のよいものを選定する可能性が大いにあると考えます。
さらに、それらの選定基準である指針は、さきの答弁でわかるとおり、事業者の評価項目や評価手法を当然含んでおりますし、知事等が提示した評価項目や評価手法も当然含んでいる網羅的な内容でありましょうし、また指針でそのような選定に優先順位もつけられるわけでもないので、幾ら条文で勘案するといいましても、事業者に都合のよいものを選定されてもいたし方ない仕組みになっているような気がいたします。この点どうでしょうか。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
調査等の項目の選定につきましては、法案におきましては、調査等の項目の選定のための指針が主務省庁によりまして事業種ごとに示されまして、事業者はこれに基づき選定を行うこととしておりまして、この事業種ごとの指針におきまして考慮すべき事項は基本的な事項ということで環境庁長官がお示しをするということになっております。項目等は現境庁長官の基本的事項それから主務省令に基づきまして定められるということでございます。
それから、スコーピングの手続では、一般意見、地方公共団体からの意見、こうしたものが述べられまして、これは事業者が準備書においてこれらに対する見解を明らかにすることが義務づけられております。さらに、準備書から評価書に至る過程でも同様の仕組みが設けられておりまして、評価書につきましては環境庁長官が意見を述べて、それから主務大臣によって許認可に反映をするという、こういうプロセスが控えておるわけでございます。
このようなことから、先ほども御答弁申し上げましたが、事業者としては真摯な対応をしなければプロセスで手戻りが生ずるということで、あたら時間を食う、こういうことにもなるわけでございまして、事業者は真摯な対応ができるようなそういう仕組みにしておりますので、先生ただいま御指摘のような御懸念には及ばないというふうに考えておるところでございます。
○馳浩委員
先ほどの河本委員に対する答弁とほぼ同じようなことで、最終評価書の審査で事業者の利己的な決定を非難し、許認可等に反映させられるので心配は要らないというふうな環境庁としての御意見でありますけれども、本当にそうであるならば結構でありますが、懐疑的にならざるを得ない。といいますのも、許認可権者と事業者は非常に近い関係にあり、幾ら環境庁長官が頑張っても運用段階で限界があるような気がするという懸念であります。この点がやはり環境庁を早く環境省にしていただきたいという私の考えにも通じると思うんです。
そこで、この点を踏まえて、制度的担保が必要と私は考えます。そこで、準備書の記載事項として知事等の意見不採用の理由を明示させてはいかがでしょうか。これをもとにすれば事業者、許認可官庁の横暴をより以上セーブすることができると考えますが、いかがでしょうか。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
本法案では、事業者は、スコーピング手続に係ります知事などの意見に対しまして、その見解を準備書あるいは評価書に記載することになっております。それで、準備書等に事業者の見解をどの程度の詳細さで記載をするかにつきましては、法の趣旨からいたしまして、知事などの意見提出者はもとより、一般の人が見て納得のいく程度の一般常識にかなったものとすることが当然必要でございます。
スコーピング手続におきまして、知事等からの意見が出された場合には、事業者におきましてこれは適切に勘案、配意されるものと考えておりますけれども、仮に事業者が知事等の意見を取り入れないこととした場合には、準備書等におきます事業者の見解におきましてその理由が合理的な詳しさを持って説明されることとなるものというふうに考えております。
○馳浩委員
次の質問に移ります。
今回の法制化に当たりまして注目されている論点の一つとして、アセス対象事業の拡大があります。しかし、この問題は実は観点の異なる二つの問題であります。一つは、対象事業そのものの拡大問題です。発電所を対象とするかどうかなどはここでの問題であり、いわば事業種の問題です。もう一つは、既にアセス対象の事業種であるが規模が小さくてアセスを免れている問題で、この規模要件を綾和して対象事業を拡大する問題であります。
そこで、まず事業種の拡大について質問します。
発電所については法の第二条二項一号のホで明文化されたのでよいとして、大規模林道、在来線鉄道についてはいかがでしょうか。
関連して、対象事業とする予定ならば、それらは第二条二項一号のイの「道路」に、そしてハの「鉄道」に含まれるのか、それともワの「政令で定める事業」の種類でしょうか。純粋な政令事項だと政府レベルでの裁量となるので問題があります。この点を確認したいと思います。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
いわゆる大規模林道につきましては、法案の二条二項第一号のイのところにございます「その他の道路」に含まれるわけでございます。
それから、いわゆる在来鉄道につきましては、同号のハの「鉄道」または「軌道」に含まれるということでございまして、範疇としてはこれに該当するわけでございます。
○馳浩委員
確認をさせていただきましたが、明確に答弁いただきましたので、ありがとうございます。
続きまして、問題はゴルフ場やごみ焼却場などです。現時点でこれらを対象事業種と考えてはいないのでしょうか。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
ゴルフ場あるいは最終処分場以外の廃乗物処理施設、ゴルフ場といわゆるごみ焼却施設につきましては、現段階では法案の対象とすることを予定してございません。
○馳浩委員
では、まずゴルフ場について、なぜ対象事業種に加えないのでしょうか。その理由を述べてください。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
この法案では、中央環境審議会の答申等も受けまして、国の立場から見て一定の水準が確保された環境影響評価を実施することによって環境保全上の配慮をする必要があり、なおかつ国が実施をし、または許認可等を行う事業を対象といたしておるところでございます。これは、中央環境審議会の答申の趣旨を踏まえてのものでございます。
ゴルフ場につきましては、事業そのものをとらまえる許認可法というものがございません。それから、環境影響評価制度を有しております地方公共団体の大部分におきまして既に対象事業として扱われているということなどから、法案の対象事業とすることにはいたしておらないという判断でございます。
○馳浩委員
ちょっと詳細に今の答弁を分析し、かつ批判をしたいと思います。
まず、ゴルフ場には許認可法が存在していないから対象外との理由は、そもそも発想が逆であります。ゴルフ場をアセスでチェックしていく必要性があるか、どれだけ環境に悪影響を与えているかを検討して、チェックする必要性があれば、規制の対象とできるように立法化するのがあるべき立法姿勢であります。許認可の対象でなければ、極端な話、関連法規を改正してアセスの対象にすべきなのであります。今回は、いきなりゴルフ場を許認可事項にするのは非現実的でありますので、法第二条二項二号で言う届け出事項にしてアセス対象事業にできるよう努力すべきではなかったのでしょうか。
次に、ゴルフ場は地方アセスの対象となっており、適切な役割分担の観点から地方に任せたいとの理由は、一見なるほどと思いますが、無責任な国の対応と言わざるを得ません。なぜなら、都道府県、政令指定都市全59団体中、51の団体がアセス条例または要綱を持ち、うちゴルフ場をアセス対象としているのが45団体あると。この数字をどう見るか。これも問題がありますけれども、一歩譲ってまずまずといたしましょう。しかし、平成元年1月から6年9月までの全国で起こった開発事業にかかわる住民との紛争事業数が約4700件ですね。そのうち1500例をピックアップしたところが、そのうち約550、三分の一近くがゴルフ場の問題で、二位の産廃施設の160を大きく引き離しているところでありまして、つまり地方のアセスでは十分ゴルフ場の問題を処理し切れていないということをあらわしております。これを忘れてはいけないと思います。つまり、国レベルの問題になっているということ、これがまず第一点。
さらにもう一つ。それは、このアセス法の立法動機の一つである行政手続法の制定と関連します。
この法の制定で従来の行政指導は限界を迎えたと言わざるを得ません。この行政手続法第三十二条二項、「行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。」と、「行政指導の一般原則」のところでありますけれども、この法の制定によりまして従来の行政指導は限界を迎えて、相手方が行政指導に従わずとも不利益な処分をしてはいけないということになったのであります。そして、地方の要網アセスは一言うまでもなく実態は行政指導であり、その要綱アセスがアセスを持つ51団体のうち45団体にまで及んでいる。この事実をどうするのでしょうか。今現在は行政指導の無力化が余り知れ渡っていないからよいとするのでしょうか。
以上、二点の反論がありますが、どう環境庁は釈明いたしますか。喫緊の課題としてゴルフ場の問題は処理することを提案したいと思いますが、いかがでしょうか。
以上、御答弁をお願いいたします。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
今回私どもが環境アセスメント法を提出するに至りました背景としていろいろございますが、その中で、今先生がおっしゃいました二つあるわけでございます。
一つは、行政手続法の制定によりまして、行政指導には限界があるということでございます。もう一つは、地方分権推進法ができまして、国と地方の役割分担を改めて見直していろいろ整理をしていくと、二つの大きな命題も背景にあるわけでございます。
そうしたことで、ゴルフ場につきましては、環境影響評価制度を有しております地方公共団体の大部分、先生今51の中で45とおっしゃいましたが、51の中で今50ございます、50がゴルフ場を対象にいたしておると。そういう状況でございまして、地方分権の流れの中で国と地方の適切な役割分担を行うという観点からも、今回国の制度の対象とはしなかったところでございます。
それからもう一点、地方公共団体の制度が要綱が中心でございまして、ゴルフ場のアセスを適切に処理できていないのではないかという御指摘でございます。
国におきましても、ただいま申し上げましたように行政指導の限界を認識いたしまして、環境影響評価制度の法制化を図ったということでございますし、また法制化に当たりましては、事前手続を導入して住民参加の機会を拡大させるなど各般にわたりまして制度の充実を図ったことにつきまして、その経緯と趣旨を地方公共団体に十分お伝えするなどを通じまして、各地方公共団体でのこの環境アセスメント制度の充実が図られるように、私ども環境庁としてもそういう面でも努力をしていきたいというふうに考えておるところでございます。そういうことで、ゴルフ場につきましてはこういう整理をいたしたということをぜひ御理解いただきたいと思います。
○馳浩委員
私が質問した中でお答えがちょっと私はっきり理解できなかったんですが、このゴルフ場について、第二条第二項二号に言う届け出事項にしてアセス対象事業にできるようにすべきではないかと私は申し上げましたが、それについては具体的にどうお答えをいただけるのでしょうか。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
一般的に規制緩和が言われておる時代でございます。できるだけ規制は洗っていこうと、こういうことでございまして、事業法、ゴルフ場の事業としての許認可が果たして必要なのかどうかという観点もございまして、私どもといたしましては、ゴルフ場を規制するというゴルフ場の規制法等につきましては慎重に考える必要があるのではないかというふうに考えておるところでございます。
○馳浩委員
重ねてしつこく質問いたしますけれども、そのゴルフ場というのは、私もたまにゴルフをやるので余り大きなことは言えませんけれども、非常に大きな範囲にわたりますし、それから東京近郊の千葉、埼玉、静岡、神奈川などは一カ所に集中しておることもありまして、地方に任せてよい問題ではないというふうな意見を私はまずここで述べさせていただきたいと思います。これは改めて私ももうちょっと詳細に資料を検討して、この委員会で質問させていただきますので、きょうは法案審議でありますのでこれ以上はちょっといたしませんが、今後の課題として私は引き続き環境庁としても大きな問題としてお取り組みいただきたいと思います。
次に移ります。次に、ごみ焼却施設の問題についてですが、ゴルフ場同様に、なぜアセスの対象から外れているのか、理由をお聞かせください。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
一般に申しまして、最終処分場以外の廃棄物処理施設につきましては、これは点的な事業といたしまして類似をいたします発電所に比べまして敷地面積も非常に小さくなるわけでございますし、それから大気汚染につながる排ガスを発生させる施設の能力規模も大幅に小さいものでございます。そうしたことで対象事業としての要件には合致しにくいというふうに判断をいたしたものでございます。
○馳浩委員
ごみ焼却施設の排ガス発生能力は確かにほかと比べて小さいと。しかし、ここで問題となっている排ガスはダイオキシンであります。最強最悪の猛毒ダイオキシンはその猛毒性ゆえに、排出量が極端に小さくとも人体に決定的ダメージを与えます。
この点を踏まえて、今回、この法でも評価項目にダイオキシンが加えられるはずであります。ならば、この点を生かす上でも、ごみ焼却施設をアセスの対象事業とすべきではないのでしょうか。
○野村瞭政府委員(環境庁大気保全局長)
直接のお答えにならないかもしれませんけれども、ダイオキシン対策を行っている立場からお答えを申し上げたいと思います。
ダイオキシン問題につきましては、御指摘もございましたが、国民の健康影響を未然に防止するという観点から対策を急がなければならない重要な課題ということで認識をしておりまして、昨年の5月に有識者から構成される検討会を設けましてダイオキシン対策のあり方について検討を進めてきたところでございます。
せんだって取りまとめられました検討会報告におきましては、排出抑制方策といたしまして、ダイオキシン類を大気汚染防止法に基づく指定物質として指定をして、主要な発生源である廃棄物焼却炉について排出抑制対策を推進すべきことを提言しております。
具体的な排出抑制対策のあり方につきましては、現在、中央環境審議会の大気部会におきまして御審議をいただいているところでございまして、環境庁といたしましては、答申をいただいた後、速やかに所要の制度改正等を行ってまいりたいと考えておりますので、御理解を賜りたいと存じます。
○馳浩委員
本法案に関する私の質問の答えにはなっていないように思いますが、今おっしゃった答弁も効果的な一つの方法であると考えられますが、ダイオキシンの排出規制についていち早く、これは大気汚染防止法によるのか、早く規制の基準を決めて、数値目標を決めて総量規制なりしていただきたいんですけれども、その進捗状況といいますか、あしたにでも早くやっていただきたいんですけれども、そのめどというのをぜひ表明していただけないですか。
○野村瞭政府委員(環境庁大気保全局長)
先ほどお答え申し上げましたように、現在中央環境審議会の大気部会で御審議をいただいておりまして、特に急がなければならないということでこの審議会にもいろいろ私どもの立場でお話し申し上げているところでございます。なるべく早期に結論を出していただきたいということで、でき得れば夏ぐらいまでには結論を出していただくということでお願いをしているところでございます。
○馳浩委員
夏ぐらいに出していただければ秋の臨時国会に間に合うわけでありまして、私たちとしても厳しい目でその進捗状況を見詰めていきたいと思います。
最後の質問の方に移ります。
次に、規模要件の緩和による対象事業の拡大の問題でありますが、まず確認の意味で、規模要件については従来の閣議アセスを基本に定めていくと聞いておりますが、いかがでしょうか。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
必ずアセスメントを行うべき事業の第一種事業でございますが、この規模要件につきましては、法律の公布後6カ月以内に政令で決める、こういうことになっておりまして、政令の内容につきましてはこれから詰めていくというとでございますが、現行の閣議アセスの対象事業の規模要件等を踏まえながら適切に決めていきたいと、こういうふうに基本的に考えております。
○馳浩委員
この基本となります閣議アセスの規模要件にこそ問題があります。
例えば、今問題となっております長崎県の諫早湾のムツゴロウ問題。これは閣議アセスができる前の長崎県のアセスを受けて事業化されておりますが、これは埋め立て及び干拓に当てはまる事業であり、この規模要件が面積で50ヘクタール以上としております。問題はこの規模要件で、日本全体のどれくらいの埋め立て及び干拓事業を閣議アセスの対象としているのでしょうか。
資料によりますと、昭和61年から平成5年までで埋め立て、干拓の全体の事業件数のわずか0.4%、4310件中の15件、全体の事業量では14,955.2ヘクタールのうちの2,310.4ヘクタール、これは事業量でいいますと、面積比でありますが、15.5%でしかありません。他方、高速自動車国道はいずれも100%、新幹線や原子力発電所も100%であります。確かに事業の特殊性はあると申しますが、この差は余りに大き過ぎないかということであります。
埋め立て、干拓と同様の数値を出しているのが廃棄物最終処分場、これは先ほどの基準で30ヘクタール以上のものでありまして、昭和62年から平成4年までが0.3%、土地区画整理事業でこれは1.7%と。これ以上詳しくは述べませんが、こういった問題となる事業と比較的に類似している事業の数値に少なくとも近づけるべきと考えますが、いかがでしょうか。
政令事項でありますゆえ、法第二条二項によりまして今からでも対応可能であると考えますが、いかがでしょうか。
○田中健次政府委員(環境庁長官官房長)
本法案におきましては、国の立場から見てアセスメントを実施させることが必要なものといたしまして大規模な事業を対象とすることといたしております。このような観点から、規模要件を定めた場合、事業種に応じてカバー率に差が出ることはやむを得ないのではないかというふうに考えております。この場合、カバー率の高低が直ちに環境保全の確保の度合いを示すことにはならないのではないかというふうに考えております。
ちなみに、今お話がございました埋め立て、干拓につきまして、閣議アセスでは規模要件を50ヘクタール以上、これは廃乗物の最終処分場につきましては30ヘクタール以上でございますが、50ヘクタール以上としておりまして、このカバー率につきましては、規模要件よりもかなり小規模な事業が多数行われているということのために他の事業種に比べて低くなっておるところでございます。アセスにかかりました平均の事業規模は154ヘクタールということでございますけれども、全体の埋め立て、干拓の平均事業規模は3.5ヘクタール、こういう数字でございまして、非常に小さな事業が数多くある、こういう実態にあるわけでございます。
なお、公有水面の埋め立て、干拓につきましては、原則すべての事業につきまして公有水面埋立法に基づくアセスが行われているというところでございまして、こうした数字は先ほどの申された数字の中には入っておりません。
さらにまた、この法案におきましては、必ずアセスメントを行うべき第一種事業の規模を下回る事業でございましても、一定の規模以上の事業につきましては第二種事業ということで、個別の事業内容あるいは事業実施地域の環境の状況等によりましてアセスメントの実施義務の有無につきまして個別に判定を行うスタリーニングの制度を導入しているところでございます。ということで、第一種事業、さらにその第一種事業の規模を下回る第二種事業という制度もあるわけでございます。
いずれにいたしましても、規模要件に係ります政令の内容につきましては、閣議アセス等の運用状況等も勘案をいたしまして、関係省庁とも調整をして対応してまいりたいというふうに考えております。
○馳浩委員
最後になりますけれども、規模が小さいからかからないというのは、私は環境委員という立場からいえば非常に逃げの姿勢であると思いまして、こういうことを進めておってはいつまでも環境庁がその存在価値を発揮できないのではないかという懸念もあります。私は、最初から申し上げましたように環境省になっていただきたいのでありまして、むしろもっと強く出るべきではないかという意見を申し上げて、きょうの答弁をいただきまして、改めてまた質問させていただきますので、今後ともよろしくお願いいたします。
質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。