Treasure(33) ―彼女―

〈〈なぁ・・・アユ・・・〉〉
〈〈あの日の大野くん、すごく幸せそうだったよ・・・〉〉
〈〈俺、そんな大野くんを見て、いつか、俺も、お前とあんな風になりたいなぁって思ったんだ・・・〉〉

ガチャ―――。
俺が相葉と一緒に、大野くんとニノが泊まっている部屋に行くと、みんなが、楽しそうに談笑していた。

「あっ!翔くん、遅いよ!(笑)」
俺が、周りを見渡していると、大野くんが、笑って声を掛けてきた。
「ゴメン!ゴメン!(笑)」
俺は、空いている所に腰を下ろしながら、大野くんを見て、笑って答えた。

「それで!(笑)。遥(ハルカ)とは、どうなったんだよ?(笑)」
ニノが、目を輝かせて、松潤を見ていた。
「イイ感じだよ!(笑)。・・・もういいだろ!(笑)。ニノの方こそ、柚(ユズ)とは、どうなんだよ?」
松潤が照れながら、ニノへと言い返していた。
「バカ!俺の話はいいんだよ!今、お前の話してんだから!早く、続き話せよ!」
ニノも負け時と松潤へ言葉を返した。

<えっ!松潤って、彼女いんの?>
<ニノに彼女がいんのは知ってるけど・・・>
俺は、ニノと松潤の会話を聞いて、驚いた。

<松潤に彼女が居るんなら、あいつは、アユの事は何とも想ってないって事だよな・・・>
<まぁ、とりあえず、俺が独りで考えてたって始まらないよな・・・>

「ニノこそ、話しなよ!」
「お前が話せよ!」
気づくと、松潤とニノは、相変わらず、言い合っていた。

「なぁ、松潤って、彼女できたの?」
「あっ!ううん!(笑)。友達以上恋人未満って感じかな(笑)」
俺の問い掛けに、松潤は、少し照れながら、そう答えた。
「へぇ〜・・・遥ちゃんって言うんだ(笑)」
「あっ!うん!(笑)。ニノに紹介してもらったの!(笑)。柚の友達なんだよ!(笑)」
俺の言葉に続けて、松潤は、嬉しそうに答えてくれた。
「へぇ〜・・・イイ感じなんだ(笑)」
「うん!(笑)。あと少しって感じかな?(笑)」
松潤が、俺を見て、嬉しそうに答えてくれた。

楽しそうに笑っている松潤を見ていて、俺の脳裏にある思いが芽を出した。

<もし、アユが言ってた"もう一人"の人っていうのが、松潤だとしたら、あいつ、また苦しむ事になるんじゃ・・・>
<他に好きなヤツがいる男を好きになったら、あいつ、また、傷つくんじゃ・・・>
<何とか、俺が、守ってやる事って出来ないのかな・・・?>
俺は、無意識のうちに、そんな考えに気を取られていた。

「・・・くん?・・・翔くん?」
気づくと、大野くんが、俺の名前を呼んでいた。
「あっ・・・何?」
「どうかしたの?何か、すごく難しい顔してるよ。眉間にシワ寄ってる。・・・大丈夫?」
大野くんが、心配気に、眉毛を下げて、俺を見ていた。

「あっ!ゴメン!ゴメン!(笑)。ちょっと考え事してた!(笑)」
「大丈夫?」
俺の言葉に、そう聞き返してくれた大野くん・・・まだ、俺を心配してくれてるみたいだった。
「あぁ!大丈夫だよ!(笑)」
俺は、大野くんの優しさに胸がいっぱいになった。

<あ〜・・・大野くん、やっぱ良い人だな〜・・・>
<あっ!そういや・・・大野くんと優ちゃんって、どうなってんだろ?>
<うん?・・・そう言えば、俺、優ちゃんに頼みたい事あったんだ・・・>
俺は、今朝、思い付いた大野くんへの仕返しを実行する事にした。
昨日、俺に、ヤキモチと不安をくれた大野くんへの仕返し。

「あっ!そうだ!(笑)。優ちゃん、ちょっといい?(笑)」
「うん?何?」
突然の俺の呼び掛けに、優ちゃんは、少しビックリしていた。
「ちょっと、二人で話したいんだけど・・・いい?」
「あっ・・・うん・・・」
俺の言葉を聞いて、優ちゃんは、そう答えてくれたが、その視線は、大野くんを見ていた。
俺も大野くんへと視線を合わすと・・・大野くんの顔、見る見るうちに、青くなって赤くなってた。
俺の目に映った大野くん、驚きと不安で青くなり、次の瞬間、ムッとして赤くなってるって感じだった。

「あっ!すぐ終わるから!(笑)。ちょっとだけだから!(笑)」
俺は、そんな大野くんを尻目に、立ち上がり、優ちゃんへと視線を向けた。
「あっ・・・うん・・・」
優ちゃんは、そう頷いてから、立ち上がった。

俺と優ちゃんは、二人で、部屋を出て、俺が泊まっている部屋と向かって歩き出した。


ガチャ―――。
「入って!(笑)」
カギを使って、ドアを開け、俺は、優ちゃんに入るように促した。
「あっ・・・お邪魔します・・・」
優ちゃんは、消えそうな程、小さな声で、そう言ってから入って行った。

俺と優ちゃんは、窓際にあるイスに向かい合わせに座った。

「ゴメンネ!(笑)。ビックリしたでしょ?(笑)」
「あっ・・・うん・・・」
優ちゃんは、ゆっくりと俺を見て頷いた。
「俺ね、優ちゃんに、頼みたい事あるんだ(笑)」
「えっ?・・・頼み?」
俺の言葉に、優ちゃんが、不思議そうに聞き返してきた。
「あぁ!(笑)。・・・実はさぁ・・・アユの写真、持ってたら、俺に譲ってくれないかな?」
「あっ・・・うん、いいよ・・・。・・・えっ?・・・え〜!!翔くんって、アユの事、好きなの!?」
俺が話し終わった後、優ちゃんは、すぐに『うん』と答えてくれたが、その表情は、時間が経つにつれて、ドンドンと驚きへと変わっていった。

「うん・・・。実は、アユの事が好きだったりするんだよね・・・」
何だが、改めて、こういう話をするのって照れてしまう。
「そっか〜(笑)。知らなかったな〜(笑)。・・・写真だよね?(笑)。もう何枚でもあげちゃうよ!(笑)」
優ちゃんは、そう言って、俺に笑い掛けてくれた。
「ありがと!(笑)」
俺も、優ちゃんに笑顔でお礼を言った。
「後で、写真持って来るね!(笑)」
「あぁ!(笑)」
俺は、優ちゃんの言葉に、嬉しくて笑顔が溢れていた。
「何か、私に手伝える事があったら言ってね!(笑)」
優ちゃんは、優しさ溢れる笑顔で、俺にそう言ってくれた。
「ありがと!(笑)。頼りにしてるから!(笑)」
俺も、そんな優ちゃんに素直な気持ちを伝えた。
「ジャンジャン頼ってよ!(笑)」
優ちゃんは、笑って、そう返してくれた。

「ところでさぁ、優ちゃんと大野くんって、どうなの?」
「あっ!(笑)。・・・実はね・・・」
俺の問い掛けに、優ちゃんが、答えてくれようとした、そのとき―――。

ガチャ―――。
予想外にドアが開いたので、俺と優ちゃんは、顔を見合わせて驚いた。
もちろん、ドアは、勝手に開いたのではなく、そこには、すごく怒っている大野くんが立っていた。


「ちょっと!翔くん!俺の彼女返してよ!」
大野くんは、ズカズカと部屋へと入って来て、俺の前に、仁王立ちしていた。
「えっ!?・・・彼女!?」
俺は、思わず、優ちゃんの顔を見た。
優ちゃんは、ニッコリと笑って頷いた。

「いつから付き合ってんだよ!?」
俺は、大野くんの方へと問い掛けた。
「今朝から!(笑)」
「へぇ〜!そっか〜、良かったじゃん!(笑)。大野くんも、教えてくれたら良かったのに!(笑)」
「・・・言うの忘れてた」
「忘れんなよ!(笑)」
俺は、大野くんのビックリ発言に、思わず、笑って突っ込んでしまった。
「ウソウソ!(笑)。ちょっと、驚かそうと思って、黙ってたの!(笑)」
大野くんは、そう言って、嬉しそうに笑っていた。
「そっか〜、良かったな!(笑)」
「まぁねぇ〜、ありがと!(笑)。・・・あっ!思い出した!翔くん、優ちゃんとここで何やってたんだよ!」
俺の言葉に、笑って答えてくれていた大野くんが、再び、怒り出した。

「別に何もしてないよ!・・・アユの写真、頂戴ってお願いしてただけだよ!」
「それだったら、何で、こんなとこで、コソコソしてんだよ!」
「それは、昨日、アユをバスルームに連れ込んだ大野くんへの仕返し!(笑)」
「『連れ込んでない!』って言ってんだろ!」
「冗談だって!ホントは、ちょっと、大野くんにヤキモチ妬かしたかっただけ(笑)。昨日、俺に、ヤキモチ妬かしてくれたお返し!(笑)」
「もう・・・妬きすぎて、焦げちゃったよ!」
大野くんは、勢いの余り、そう言ってしまったみたいで、後で、すごく照れていた。

俺たちは、その後、少し話してから、みんなが待つ部屋へと戻った。

大野くんが、優ちゃんと付き合っている事を伝えると、みんなが、口々に「おめでとう!(笑)」と言って、喜んでいた。
その夜、大野くんは、ずっと、からかわれていた。

<俺も、頑張らないと!>
俺は、嬉しそうに、はしゃぐ大野くんを見ながら、そんな事を考えていた。


♪TRRRR・・・TRRRR・・・
考え事をしている俺の携帯が鳴った。
それは、メールの受信を知らせる着信音だった。
俺は、ゆっくりと視線をメールへと落とした。
メールは、アユからのモノだった。

"ハルさん、こんばんは!久しぶりですね?元気ですか?寝てました?私、ハルさんに、報告したい事があって、メールしました。・・・ハルさん、私、彼の事、ふっきれました。色々と心配掛けてゴメンネ!本当にありがとう!私、ハルさんと出会えて良かった。私は、これから、新しい恋をします!ハルさん、私、頑張るからね!・・・ハルさん、大好きな彼女とうまく行くといいね!応援してます!頑張ってね!では、お休みなさい! アユ"

<アユ・・・お前は、『ハル』の恋を応援してくてるんだな・・・>
<アユ・・・俺、もう誤魔化せねぇよ・・・>
俺は、アユからのメールを読んで、自分の中に、限界を感じた。

もう、俺は、『ハル』でいる事は出来ない・・・。
そろそろ、潮時なんじゃないかって・・・。
『ハル』として、アユに接するのは、もう終わりにした方がいいんじゃないかって・・・。

ふと、周りを見ると、みんなは、相変わらず、楽しそうに、はしゃぎ続けていた。

Treasure (34) ―密会―

〈〈なぁ・・・アユ・・・〉〉
〈〈あの日、俺、辛かったよ・・・〉〉
〈〈あのときから、俺たちの歯車は、急速に、動き始めたんだよな・・・〉〉

数日後―――。
俺たちは、大阪での仕事と名古屋でのコンサートを終え、東京に戻った。
今日は、久々のオフ。

俺は、どうやって、俺が『ハル』である事をアユに伝えるかを考えていた。
だけど、イマイチ、"これだ!"という答えには辿り着けないでいた。

今日は、夕方から、大学の友達と会う事になっていた。
俺は、アユの事を考えながらも、用意を済ませ、待ち合わせ場所の池袋へと向かった。


午後7時少し前に、待ち合わせ場所に着いた。
友達は、まだ来てない。

俺は、何気なく、辺りを見廻した。
すると、俺の目に、信じられないモノが飛び込んできた。
それは、ガラス張りのカフェで、楽しそうに話しているアユと松潤の姿だった。
深く帽子を被っているが、その姿は、松潤に間違いなかった。

<えっ・・・何で?>
<何で、二人っきりでいんだよ?>
<もしかして、二人は付き合ってんの?>
俺は、そんな事を考えながらも、無意識のうちに携帯を取り出していた。
そして、徐に、アユに電話を架けた。

♪Pi Pi TRRRR・・・TRRRR・・・
3度目の呼出音が鳴った後、アユが電話に出た。

『もしもし?』
「もしもし?アユ?・・・桜井です!」
『あっ!翔くん?(笑)』
少し弾んだ声が、携帯を通じて、俺の耳に届いた。
「あぁ・・・。今、何してんの?」
『今?・・・今ね・・・』
そう答えたアユの言葉が途切れた。

視線をアユと松潤の方へと向けると、何やら、二人で、顔を近づけ話している。
話し終わったのか、携帯から、アユの声が聞こえてきた。

『あっ!ゴメン!今ね、友達と会ってるの(笑)』
携帯から聞こえるアユの声・・・明るく楽しそうな声だった・・・。
「そっか・・・」
俺は、何て言ったらいいのかが解からずに、そう呟いた。

『翔くんは?(笑)。翔くんは、何してるの?(笑)』
「・・・・・」
俺は、アユの問い掛けに答えようにも、うまく言葉が出て来なかった。

『翔くん?・・・翔くん?どうかしたの?』
アユの心配そうな声が、携帯から響いた。
「あっ!ゴメン!・・・俺も今から、友達と会うんだ(笑)」
俺は、明るく楽しそうに、そう答えた。
けど・・・笑えない・・・。
ガラスの向こうに居るアユと松潤から、視線を離す事が出来ない・・・。

アユが何かを話し掛けてきた・・・。
だけど、アユの声は、俺の左耳から右耳へと抜けて行って、頭の中には何も残らなかった・・・。

「なぁ・・・今、松潤と一緒に居んの?」
『えっ!?』
俺の言葉に、アユが驚いていた。
アユは、携帯を耳から離し、また何やら松潤と話していた。
松潤は、アユの言葉に、小さく首を横に振っていた。
そして、アユから返ってきた答えは・・・。

『ううん(笑)。松潤と一緒じゃないよ(笑)。何で?(笑)』
携帯を通じて、俺の耳に届いたのは、ウソの言葉だった・・・。

「そうなんだ・・・。俺、池袋で、お前と松潤に似たヤツ見たんだ・・・。じゃぁ、あれって、他人の空似だったんだな・・・」
薄暗い店内の照明に浮かんでいるアユと松潤を見ながら、俺は、そう聞いた。
『そうなんだ(笑)。でも、それは、違うよ(笑)。私は、今、翔くんの知らない人と一緒に居るんだもん(笑)』
またしても、軽くかわされるウソの言葉が、俺を襲った。
「そっか〜・・・」
『うん!(笑)。・・・翔くん、ゴメン!友達、待たせているから、切っていいかな?』
申し訳なさそうなアユの声が俺の耳に残った。
「あぁ・・・」
『電話くれて、ありがとう!(笑)。・・・じゃぁね、バイバイ!(笑)』
「あぁ・・・」
俺が、そう言い終わるとすぐに、アユは、電話を切ってしまった。

<アユ・・・何でだよ・・・>
<何で、松潤と会ってる事、隠すんだよ・・・>
俺は、携帯から聞こえてくる"プープープー"という音を聞きながら、そんな思いに駆られていた。

<ここで、考えてても、仕方ないんだよ・・・>
俺は、そう思い、アユたちが居るカフェへと向かおうとした。
そして、足を踏み出した瞬間、友達である輝(アキラ)の声が聞こえてきた。

「翔!(笑)」
俺が振り返ると、笑って、立ち止まっている輝が居た。
俺は、輝の方を向きながらも、背の向こう側に居るアユたちが気になって仕方なかった。

「何?どうかしたのか?」
不思議そうに、輝がそう聞いてきた。
「いや・・・何でもない!(笑)」
俺は、輝の言葉に、笑って、答えた。
でも、笑えてたかどうか・・・。

「そう?・・・じゃぁ、行くか?(笑)」
「あぁ・・・」
俺が、そう答えたのを聞いて、輝は歩き出した。
俺は、歩き出す瞬間、後ろを振り返った。
すると、さっきまで居たはずのアユと松潤の姿は、もう、そこには無かった・・・。
俺は、空席になっているその場所から、目が離せなくなってしまった・・・。

「おい!翔!(笑)。早く、行くぞ!(笑)」
輝の声を受け、俺は、輝の方へと視線を戻した。
輝は、少し先で、待っていてくれていた。
「あぁ・・・悪い!」
俺は、そう答えて、輝の元へと急いだ。


数時間後、俺は、自分の家に帰っていた。
輝や他の仲間達と、どんな話をしたのかは、全く覚えていない・・・。
俺の記憶に、残っているのは、あのカフェでのアユと松潤の姿だけだった・・・。


次の日も、その次の日も、俺は、仕事場で松潤に会った。
松潤にも、さり気なく聞いてみたが、アユ同様に、ウソの言葉で返された。


そして、3日経ったある日―――。
俺は、アユと初めて会った場所に来ていた。
そこで、アユとの想い出を振り返っていた。
そんなとき、俺を呼ぶ声が聞こえた。

「あれ〜?翔くん?(笑)」
俺は、そう呼ばれて、声の方へと顔を向けた。
俺を呼んだのは、輝の彼女の紅美子だった。

「おぅ!(笑)。久しぶりだな!(笑)」
「そうだね〜!(笑)。久しぶり!(笑)。・・・何してんの?(笑)」
紅美子は、そう笑って、俺に話し掛けてくれた。
「いや・・・。別に何もしてないんだけどね(笑)」
俺も、そんな紅美子に、笑って答えた。

俺と紅美子は、しばらくの間、共通の友達の話をしていた。

「あっ!そういえば、今日、池袋で、嵐の松本くん、見たよ!(笑)」
「そうなんだ(笑)」
『松本』という名前を聞いて、俺の中に、思い出したくない記憶が蘇った。

「うん!(笑)。彼女と一緒だったよ(笑)」
「彼女?」
俺は、紅美子の言葉に、思わず、聞き返した。
「うん!(笑)。私、声こそ掛けなかったけど、カフェで隣の席だったんだ(笑)。・・・彼女、可愛らしい子だよね!(笑)」
紅美子は、そう言って、笑っていた。

俺の中に、あの日のアユと松潤の姿が過ぎった。
嫌な予感がする・・・。
紅美子が見た女の子って、アユの事のなんじゃないかって・・・。

「名前とか・・・聞いた?」
「名前?・・・彼女の名前?」
俺の言葉に、紅美子が不思議そうに、そう返してきた。
「あぁ・・・」
俺は、紅美子の方を見れずに、視線を下へと向けた。

「アユちゃんだったかな?(笑)。松本くん、『アユ』って呼んでた気がする(笑)」

<やっぱり、アユの事を言ってたんだ・・・>
冷静にそう思いながらも、俺の心は、何か力強いモノに鷲掴みされたみたいに、痛くて痛くて仕方なかった。

「あ〜(笑)。アユの事か(笑)」
俺は、もう、そう答えるのが、やっとだった。
「やっぱり、アユちゃんで、あってたんだ(笑)。彼女だよね?(笑)」
「違うよ!(笑)。アユと松潤は、恋人じゃないよ!(笑)」
「あっ!そうなんだ!(笑)。何か、仲良かったから、てっきり、付き合ってるのかと思った(笑)。何か、ラブラブって感じだったよ(笑)。・・・あっ!そろそろ、行くね!(笑)。・・・じゃぁね!(笑)」
紅美子は、そう言って、笑って手を振り、歩き出した。

俺が紅美子に伝えた言葉・・・『アユと松潤は、恋人じゃないよ』。
俺は、この言葉を、自分自身に向けて、言っていた。
アユと松潤は、恋人じゃない・・・そう思いたくて・・・。

だけど、紅美子の言葉は、俺の中で、アユと松潤の距離を、ドンドン近づけていった。

<アユと松潤が付き合っているかもしれない・・・>
池袋で感じた疑問は、アユと初めて会ったこの場所で、不安へと形を変えて、俺の心へと宿った。

俺は、家へと帰る道中、ずっと、この不安が大きくなるのを感じていた。


to be continued・・・。


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